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Episode:15 戦端

>Tasha Side


「いよいよですか……」

 シルファとルーフェイアが出ていった部屋で、タシュアはつぶやいた。


 実を言えば昨日から、嫌な予感はしていたのだ。

 戦場で育ったが故なのだろうか? なにか大きなこと――それも悪いことばかり――がある場合は、事前に奇妙な感覚を覚える。


 激戦になる。そんな気がした。

 相手は分からないが、おそらく正規兵だろう。


(――有利とは言えませんね)


 この学院が誇る(?)上級傭兵隊は、そのほとんどが派遣されて不在だった。タシュアたちも、とある契約をたてに拒否していなければ、今ここにいなかったはずだ。


 僅か十数名の上級傭兵隊。

 いくら従属精霊の力を借りているとはいえ、絶対的な数が少なすぎる。

 しかも残る生徒の八割は、実戦経験が無い。所詮は「訓練生」なのだ。


 さすがに厳しい表情のまま、タシュアは自室を出た。

 騒然としている中、女子寮へと向かう。


「――タシュア!」

「準備は終わったのですか?」

 向こうから急ぎ足で来たパートナーにそう尋ねる。


「ああ。といっても、いつもの装備だけなんだが……」

 タシュアやルーフェイアの構え方を見たせいだろう。シルファは多少自信がなさそうだった。


「それだけ整えてあれば問題ないでしょう。

――行きますよ」


 そのまま歩き出す。後ろからサイズ(大鎌)を手にしたパートナーが、ついてくる気配がした。


「タシュア、待ってくれ。いったい……どこへ行くんだ?」

 本来向かうべき海岸へ行こうとしないタシュアに、シルファが尋ねる。

「教室へ行きます。低学年を守る人間が殆どいませんからね」


 攻撃理由は定かではないが、この学院の兵力は基本的に金で買える。

 いっぽうで迫る船団はどうみても、どこかそれなりの所属――小国かそれ以上――だろう。

 それほどのところが金を出さずに包囲攻撃するということは、この学院を邪魔に思っているということだ。


 兵力を見ても同じことが言える。

 本土への交通手段さえ封じてしまえば、学院は折れざるを得ない。だがそれにしては、持ち込んでいる兵力が大げさだった。


 もちろん、脅しのためにわざと、という可能性もあるが……だがタシュアにはどうしても、そうは思えなかった。

 何かが違うのだ。

 こういう状況を考え合わせると、低学年でも危険は免れないだろう。


 しかも学院のその辺りの運用は、どうにも下手だ。子供たちをシェルターにでも入れるなら分かるが、出入り自由な教室にクラスごとに分散させて、気休め程度の上級生を引率につけた程度で、守れるわけがない。


「それなら私も行く」

 命令違反を承知でシルファも同行する。

 その時、裏庭の方で悲鳴が上がった。


「始まりましたか」


 まだ船団は上陸していない。それなのに裏庭で戦闘が始まったというのなら、もはや校舎も安全とは言えないだろう。


「シルファ、急ぎますよ」


 惨劇の幕が上がろうとしている学園の中を、二人は走り出した。





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