Episode:14
「行かねーってお前、んじゃどこなんだ?」
「校舎の玄関前」
「――は?」
イマドが呆れ顔で聞き返してきた。
「ちょと待て、なんでお前がそこなんだよ!」
「だってあたしまだ、物理攻撃三級の検定、受けてないし……。
それに魔法も、従属精霊持ってるの……知られちゃうと困るから、ぜんぜん……」
「そういやそうだったな」
あたしはいろいろ事情があって、これなしにはやっていけない。
でも本来学院内で従属精霊の使用が許可されるのは、傭兵隊に所属する上級生だけ。あたしはまだその年齢じゃないから、資格がなかった。
だからこのことは、出来る限り内緒にしてある。
そんな理由で、バレてしまうような検定は、なかなか受けられない状態だった。
「まぁいいや。ともかく気をつけろよ――って、お前にゃ言うだけムダかもな」
「ううん、ありがと。
――そうだ、これ使って」
思いついて、イマドに予備の従属精霊を渡す。これがあるとないとでは、雲泥の差だ。開放して自分と同化させることで、いろんなことが出来る。
「いいのか?」
「うん。あたしはいつもの二体、ちゃんと使ってるから」
「そか。んじゃ借りるぜ」
なぜだろう、イマドが受け取ってくれてほっとする。
「ま、ともかく頑張ろうぜ」
「イマドも」
そう言って彼は海岸へ行くために左へ、あたしは右へと別れた。
大急ぎで廊下を駆けていく。
こんなふうに館内を走ったら普段は教官に怒られるけど、さすがに今日はそんなことを言う人はいなかった。教官たちまで走ってる。
「あら、ルーフェイア。あなた海岸じゃないの?」
「はい」
途中で先輩につかまった。
「いいじゃない、助かるよ。なにせこの子強いから」
一緒にいたんだろう、ロア先輩が後ろからぽんぽんとあたしの頭を叩く。
「そうね。たしかにこの子、上級傭兵隊並だものね。
さ、急いで行くわよ。そうそう、悪いけれど最前列に入ってもらうわね」
「了解です」
先輩たちと一緒に走って、着いたところで最前列の隊に入った。
船団がかなり迫って来ている。
――地獄が、始まる。
あたしはひとつだけ、深呼吸した。