Episode:13
>Rufeir
『攻撃隊は船着場と海岸へ即時展開せよ。それ以外は編成に従い、それぞれの場所で待機するように。
なお、これは演習ではない。全生徒そのつもりで当たるように。繰り返す、これは演習ではなく実戦である』
そう結んで通話石からの連絡は終わった。
この編成だと、資格保持者のほとんどが船着場と海岸への配置になる。船で上陸可能な場所はその二つしかないから、そこに重点をおく作戦なんだろう。
「作戦としては、少々安直な気もしますがね」
タシュア先輩が酷評した。
もっとも相手の戦力が未知数だから、編成のバランスをとるのはけして簡単じゃない。
なによりこの状況だと、上陸阻止以外の選択肢は選びづらいだろう。
「装備を整えてくる!」
シルファ先輩が部屋を飛び出す。
「あたしも……もう、行きます」
「そうですか」
さっきの放送だと、あたしの所属は建物の入り口付近になる。ただその前に部屋へ戻って、ありったけもう少しいろいろ出すつもりだった。
――死闘になりそうな気がする。
認めたくないけど、朝からのあの感覚は本物だったらしい。
寮はどこも騒然としていた。
それはそうだろう。一斉に生徒が戻ってきて、各自装備を整えているのだから。
あたしも自室へと急ぐ。
「あ、ルーフェ。放送聞いた?」
「うん」
部屋にはもう、ナティエスが戻ってきていた。
「なんかさ、すごいことになっちゃったね」
「そうだね……」
なぜだろう、一段と嫌な予感に襲われる。
けど何気ないふうを装って、棚からとっておきのものいろんな物を取り出した。両親とも傭兵稼業をやってると、こういうものがイヤでも揃う。
太刀の方も、もう一度鞘から出して点検する。とある経緯でタシュア先輩からもらったもので、いつ見ても吸い込まれそうな刀身がなにより気に入っていた。
柄を握りなおして具合をたしかめる。
――いける。
胸のうちに確信が生まれた。
「ルーフェ、あたし低学年の担当だから、先いくね!」
小太刀の方も確かめていたあたしに、ナティエスが声をかける。
「うん、気を付けてね」
「だいじょぶ。
あ、そうそう。冷蔵庫のケーキ、勝手に食べちゃダメだからね?」
そう言って彼女は出ていった。
そのあとあたしもすぐ、普段のもの以外に予備の従属精霊――何らかの方法で従えた精霊を、魔力石に閉じ込めたもの――も持って部屋を出る。
「ルーフェイア!」
「イマド?」
渡り廊下のところで、今度はイマドと鉢合わせした。
「もう、装備はいいのか?」
やっぱりどこか、緊張感がただよっている。
「うん。
それよりイマド……間に合うの? 海岸でしょ?」
「まぁだいじょぶだろ。つか、お前もだろ?」
「え? あたし、行かないけど……」
イマドが怪訝な表情になる。