Episode:01 日常
◇まえがき◇
初連載時よりずっと変わらず支えてくれ、協力を頂いた、某サイトの所長・ヴァルに感謝します。
◇◇◇◇
>Rufeir
「もうヤだ! この光景、見飽きちゃった!」
「そんなこと言ったって、しょうがないだろ?」
「そうよ。勝手に出るわけにいかないもん」
「あの日」の前日、あたしはクラスの三人と校庭のベンチを陣取って、日向ぼっこしていた。
ここはシエラ学院本校。数あるMeS――Mercenary Schoolの略――の中では、いちばん有名なところだ。あとその成り立ちの関係で、親に見離されたり死別した子を数多く受け入れてることでも有名だった。
この学院へ来てから、そろそろ四年になる。
その前はあたしは、戦場でひたすら戦って育った。当然学校へ行くこともなければ友達もなくて、だからこの親友と言える三人はとても大切だった。
不満げに騒いでいたのがミル。ちゃんとした名前はミルドレッドだけど、そう呼ぶ人はまずいない。きれいな水色の瞳をしていて、ちょっとオレンジがかったふわふわの髪が、雰囲気によく合っていた。
なだめていたのがシーモアとナティエス。なんでもこの二人は、学院へ来る前から親友どうしだったのだそう。
シーモアはあたしたち四人のリーダー格だ。鋭い翠の瞳に、炎のような色の髪。姐御肌だし言葉遣いもぞんざい、行動も豪快だ。
一方でナティエスの方は、ぱっと見た感じは大人しそうだ。おだやかな鳶色の瞳に、ほんの少しウェーブがかかったダークブラウンの髪。それをいつも髪留めで留めている。
でもナティエス、シーモアと親友なだけあって、じつはけっこうやることが過激だ。外見に騙されようものなら、大変なことになる。
隣ではまだ、ミルが騒ぎつづけていた。
「だからだからだから、シゲキテキってのないのかな!」
「あんただけだよ、ンなこと思うのは」
けどミルの言うとおり、このところは穏やかだ。
いろんな理由が重なって学院の外へ出られなくなったことを除けば、ただただ海をながめながら、平穏な毎日だった。
「あーもう、ホントつまんなぁい!」
耳鳴りがしそうな声がイヤだったのか、シーモアがミルの頭を軽くはたいた。
「黙りなって。 ったく三才児じゃないんだから」
「けど、つまんないのはたしかだよね。ここのとこ、町とかにも行かせてもらえないんだもん」
ナティエスも不満そうだ。
――仕方ない、とは思うけど。
最近はどうも情勢が不穏だ。このユリアス国の首都イグニールはテロ情報で大騒ぎになったし、第二の都市で学院からいちばん近いケンディクも、どこかの勢力が潜入したとかで戒厳令が敷かれてる。
こんな状態だから、あたしたち学院の生徒が敷地外へ出るのも、けっこう前から禁止されていた。
よそのMeSならそれでも脱走とかがあるだろうけど、この学院は小さな群島を丸ごと使って作られてるから、町への連絡船が止められるとどうしようもない。
さらにここ数日は、校舎と寮のある本島以外への出入りも禁止されて、ほとんど缶詰だった。