番いのドラゴン
開いて頂きありがとうございました。
「召喚が成功した、嬉しくて」
洋平はヤマトノヒメと名乗る美女に引っ張られ、犬小屋ほどのお城の模型が置かれている箱庭から出る。
「あそこ!あそこが敵国!」
ヤマトノヒメという美女が指差す先を見る。
「……敵国?……って、うがぁぁぁぁ!?」
何万匹、いや何十万匹というGが大量に居る事に洋平は悲鳴をあげる。
「な、何だよあれ!?」
「あれが敵国。潰して」
ヤマトノヒメは、さあ、さあと洋平を後ろから押す。
「潰す!?無理無理無理!!素手で触れない、せめてスリッパ、スリッパを!」
「その雄大なドラゴンの身体は飾り?この大きさに差があるから負けない」
「いやいや、あんなん潰すとか無理だってば……。あんな大量のGに勝てるわけが……」
そう言って、寝る前に抱いていたコンビニの袋がそのままある事に気付く洋平。
「いや、勝てたわ……」
洋平はそっと近づき、敵国?らしい箱庭に、詰め替え用中性洗剤のパックを開き、液を流しこんだ。
Gの呼吸口は水をはじく性質を持った毛で覆われている。
中性洗剤がかかる事で、水をはじく性質を失う。つまり、中性洗剤の水分が呼吸口に入り込み、
……窒息するのだ。
「すごい!伝説通りの窒息させる毒液!」
「……うん、まあ」
Gが死んでいく様にテンションをあげるヤマトノヒメと、Gが暴れるグロテスクな光景に目を背ける洋平。
「大丈夫?」
柔らかい微笑みを浮かべ、無事そうな茶褐色のGを素手で最初の箱庭へと運ぶヤマトノヒメ。
「よく素手で触れるよな……」
そして、箱庭の中の半数のGが死んだ後、洗剤から逃れるようにGの死骸の上や、城の模型に捕まるG達
「ドラゴン様、どうする?」
「スプレー使うか」
ガス圧が強すぎるため、この手のスプレーは直接Gに吹きつけては倒せない。
斜め四十五度の角度で、城の模型の中に充満するように吹き付けるのがベストだ。
そして、その効果的なスプレーの使い方で、洋平は殺虫剤の霧を模型へと充満させる。
ボロボロと城から落ちていくG。
やがて、スプレーを食らってフラフラしているひときわ巨大なGが洋平とヤマトノヒメの前に現れた。
ヤマトノヒメは、その大きなGを指でつまみ、ボソボソと話しかけた後、地面に強く叩きつけて踏みつけた。
「悲しい、戦争は何も生まない」
「何を壮大な事を言ってるんだ……」
洋平は、Gを踏みつけながら、戦争を語り出すヤマトノヒメにドン引きしていた。
……ワモン国
「た、大変です!伝説にある巨大なドラゴンが二体、我が国にやってきました!」
ワモン国王が城から顔を出すと、二体のドラゴンが争っていた。
そして、一体のドラゴンがしぶしぶ、という感じでワモン国に液を巻き始めた。
「ゲフッ……」
「く、苦しい……」
液を浴びて窒息していく兵士達。
ワモン王は、すぐに城を開放し、無事な兵士を集めるように指示を出す。
「あれが、伝説にあったローチ国の最終兵器か。なんて残酷な……」
憎しみを込みて、ドラゴンに呪詛を吐くワモン王。窒息する液体が城まで入って来ない事を確認して、安堵の息を吐き出す。
「城でやり過ごした後は、ローチ国に残った勢力を差し向けて、ドラゴンの制御方法を吐かせないといかんな」
ワモン王が安心した直後、毒霧がきた。
城の中は毒霧で充満し、吸い込んだ兵士達が次々と死んでいく。
たまらず、城の外へと飛び出すワモン王だが、すぐに一体のドラゴンに掴まれる。
ワモン王は死を覚悟して、目を閉じた。
「……な!?」
ワモン王は信じられない言葉をドラゴンから聞き、驚愕した。
ドラゴンはワモン王を強く地面に叩きつけ、その巨大な足で踏み潰した。
わずか数十分という短い時間。
たった二体のドラゴンにワモン王国は滅ぼされたのだった。
「ヤマトノヒメ、俺は大学があるんだけど、どうやって帰ればいいんだ?」
「ここ、ヨーヘイの家」
「茶色いGがいっぱいいるこの犬小屋に住めと!?」
「私、ヨーヘイのお嫁さん。家、ここ。あと、ヨーヘイは召喚したから帰れない」
「……Gは俺に近づけないでくれよ」
ローチ王国。
二体の番いのドラゴンを制御し、世界最大戦力を誇る大国である。
雌のドラゴンは茶褐色で人に慣れているが雄のドラゴンは、民を見ると毒霧で殺害しようとする危険なドラゴンだ。
観光する際は注意した方がいいだろう。
読んで頂きありがとうございました。
ネタバレ
ローチ国=コックローチ(Gの英語読み)
ワモン王国=ワモンG
ヤマトノヒメ=ヤマトG
誰得なGの物語はこれでおしまいです。
美女を想像している所を裏切るような短い話ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
苦情はへこむので許してください。
ありがとうございました。