第4話 戦闘開始
「魔物との実戦ですか!?」
「ああ、そろそろいい時期だと思ってな!」
確かに師匠との剣術では最近師匠にも攻撃を入れる回数が増えてきたからな。
それに、俺もゴブリンとしか戦ったことが無いもんな......
「はい!よろしくお願いします!」
「おう!じゃぁ用意を済ませたら出かけるとしよう!」
こうして師匠と俺との魔物退治が始まったのであった......
今回、俺の修行の場所は師匠の家が滝の下に造られているので、まずは滝の上に行くことから始まった。
「タクミ、腕の力だけで上ってみろ足を使うなよ!」
「わかりました!!」
普通なら何言ってんだこのおっさん!?となるレベルのぶっ飛び発言だろう。
だが俺の適応能力はどうやら高いらしく間もおかず返事を返せることが出来る。
それにまぁ、今の俺なら難なくこなせるレベルだしな。
師匠が先に崖を腕の力だけで登り始める、俺も遅れないように窪みが出来たところに指を入れ付いて行く。
何度か危ない目にも遭ったが、
「......よいしょっと!フゥー、疲れた~!」
「お!来たか少し休んだら早速魔物を探しに行くぞ!」
崖を登りあがり滝の上に着いたのだが、先に師匠が着いており横になりながら話しかけてきた。
(この人元気すぎるだろ!まったく自信なくすぜ......)
休憩を済ませた俺と師匠は辺りの魔物を探すために歩き出す。
すると、師匠が急に止まり。
「タクミ、あれを見ろ!」
師匠が指を向けたほうを見ると、
「グギャギャ!」
「グギャグギャ!」
「グギャギャギャギャギャ!!」
3匹のゴブリンがいた。俺が唯一戦ったことがある奴だ。
師匠は、
「タクミ、今日の修行は魔法禁止だ!その代わりにアイテムボックスから剣を出していいぞ!」
そういわれた俺は、闇魔法を使いアイテムボックスから今日のために師匠から貰った刃のついた剣を取り出す。
いつもは木刀まがいのもので師匠に稽古をつけてもらっているから、どこか新鮮な気持ちだ。
剣を取り出した俺は両手で持ち、師匠を見ると、
「行って来い!」
「はい!」
俺は勢いをつけたまま3匹のゴブリンに向け走り出す、勢いをつけすぎて茂みの音がうるさく鳴り響きゴブリンたちに気が付かれる。
「グギャギャギャ!!!!」
「グギャグギャ!!!!」
「グギャーーーー!!!!」
ゴブリンたちは手に持った棍棒を構えなおすが、
「遅いな...! ッフッ!」
今の俺にはあくびが出るほど遅いゴブリンの構えを律儀に守る意味も無いので、1匹の近くまで寄り下から上に剣を振り上げた。
「グ、グギャー......!!」
そのまま俺はもう2匹の方に振り返る。
「......グギャ!!」
「......グギャグギャ!!」
どうやら2匹とも呆気に取られていたみたいだが俺は気にせず、剣を横に一閃する。
その一撃で全てのゴブリンたちが絶えたみたいだ。
感傷に浸っていたのだが後頭部に激痛を伴うことで現在に向かってきた俺は後ろを振り返る。
すると師匠が腕をグーの形にしていた、
「バカ者がッ!!出て行くときに音を立てすぎだ!!」
「......す、すいません!」
師匠曰く俺が音を立てすぎたせいで3匹全てに気づかれたことにご立腹のようだ。
でも、師匠は次はしっかりとやれと笑いながら言ってきた。
ツンデレってやつなのか?おっさんなのに!?
倒したゴブリンはこのままにするのかと師匠に聞いたら、
「いや、魔物を倒したら燃やすかそれとも埋めるかするのがマナーだな。放っておくと腐敗が広がり病気の元にもなるといわれているからな。」
「そうなんですか。 じゃぁ、このゴブリンはどうしたらいいですか!?」
「ああ、それなら朝に渡した物の中にスコップがあっただろうあれを使え!」
「えっ!? 掘るってことですか!?」
二カッと歯を見せてくる師匠、これで話は終わりという態度を取る。
「広がれ、アイテムボックス!」
仕方なくアイテムボックスからスコップをとりだした俺はゴブリン用の墓穴を作ってやる。
武の加護のお陰で疲れがほとんど無いのが救いだな!
少し進むとまた師匠が立ち止まり指である方向を指しているのでそちらを見ると、
4匹のゴブリンの後ろに赤い体をした普通のゴブリンより一回り大きい奴がいた。
「あの赤いゴブリンはジェネラルゴブリンと呼ばれる魔物だ」
「......やっぱり強いんですよね!?」
「当たり前だ! あいつは動きが素早く、力が強い厄介な相手だ。次はあいつ等を倒してこい!」
確かに将軍と呼ばれるだけの体格と錆びているが剣を持っていやがる。
だがやれないことはない!!
そう思い俺は先程の失敗を起こさないために、静かにだが決して遅くない速度で近づいてく。
(さてと、まずは周りのゴブリンを倒すとするか......)
そう考えた俺は、気配を消したまま近づいていき剣を振りかぶると2匹のゴブリンの命を瞬時に刈り取る。
すると、
「...グギャ!?」
「...グギャギャ!?」
残りのゴブリンが今更仲間が亡くなったことに気づいたみたいだが...遅い!
俺は足を更に踏み込み残り2匹のゴブリンを倒そうとした刹那。
キィーンと剣と剣がぶつかり合う音が鳴り響いた。
「ギガァァァ!!」
ジェネラルゴブリンがいつの間にか仲間を守るように俺の前に立ち塞がった。
一度剣を引き後ろに下がる。
「強いな! だが......フッ!!」
確かに普通のゴブリンと比べるとかなり強いがそれまでだ。
でもなこちらはもっと強い猫耳のおっさんと毎日稽古してるんだからな!!
ジェネラルゴブリンに肉迫するとジェネラルゴブリンが剣を横に振ってきたので、俺はその場でしゃがみ込んでやり過ごして剣が通り過ぎた後タイミングを狙い首の付け根に剣を入れ振り切る。
するとジェネラルゴブリンの首に剣が少し食い込んだ状態で勢いが止まってしまった。
ジェネラルゴブリンは腕を振り俺を弾き飛ばす。
地面に何度かバウンドしながらも俺は立ち上がり、ジェネラルゴブリンの顔を覗き上げるとニタァ~と笑いながら首に入り込んだ剣を抜く。
「ハハッ、ここまで強いとはな完全になめてたぜ」
ジェネラルゴブリンは抜いた剣を俺に投げ飛ばす。剣は俺の足元で止まり俺はその剣をゆっくりと拾う。
「俺と、力比べがしたいってことか......上等だ!!」
「ギガァァァァーーーー!!!!」
(だが、さっきのでこいつの皮膚の硬さは思い知らされたからな......どこを狙うべきか)
悩む俺に時間は取らさないと思わせるほどの勢いでジェネラルゴブリンが近づいてくる。
右上から剣を振り下ろしてくるのが目に入ったので俺は半歩後ろに下がりそれをやり過ごす。
だが、攻撃はまだ終わっていなかった。
ジェネラルゴブリンは振り下ろした剣はダミーだといわんばかりに持っていた剣をその場に捨てて拳を固め殴りかかってくる。
「なっ!? くそっ!!」
俺は両腕を咄嗟にクロスさせ防御の構えを取るがその上からジェネラルゴブリンのパンチが直に降りかかる。
木の幹に勢いがついたまま激突することになった。
「......ぐはッッ!!」
口の中が血の味しかしない、おそらく切ったのだろう。
俺は口の中の血をペッ! っと吐き捨てる。
こいつは強い、間違いなくそういえる相手だろう。
今まで俺の中になかったような気持ちまで沸きあがってくる。
こいつと戦いたい、もっと斬りたい......
俺は自分がケガを負ったのにもかかわらず笑みがこぼれるのを我慢できない。
「やってくれたな! おい!!」
「ギガァー!!」
俺はジェネラルゴブリンに近づく、あいつも俺に向かい走ってくる。
お互い自分の剣を振るように腕に力を込める。
もう一度剣が衝突すると思われたが、俺はジェネラルゴブリンの股にスライディングを行う。
見事ジェネラルゴブリンの背後を取れた俺は両足の足首を切る。
その一撃でジェネラルゴブリンは膝から崩れ落ちる。俺はそれを見逃さず最初に斬りかかった首に力を込め剣を振る。
ジェネラルゴブリンの首は僅かな引っ掛かりを見せながらも取れ血が噴水のように真上に上がった。
「......倒しやがったか、まだ剣を教えて一年ってところなのにな。この先どうなるか俺でも想像もできねぇ......」
師匠がタクミのことを褒めていたのだが当の本人はジェネラルゴブリンとの闘いが予想以上だったこともあり息を切らし言葉が耳に入っていなかった。
「ハァ...ハァ...師匠!どうでしたか!?」
「ん~まぁまぁだな。でも、戦い方はよかったぞ!」
「ありがとうございます!!」
それからは、何度かゴブリンと戦ったりまたオークと呼ばれる豚が2足歩行になった奴をを倒したりした。
窮めつけはもう一度であったジェネラルゴブリンやオークの強化版ジャイアントオークが出てきたりととても濃い一日をすごしたのであった。
「よし、今日も魔物との実戦を行うぞ。今日は剣を使うのは禁止だ、使えるのは魔法のみだ。いいな!?」
「もちろんです!頑張ります!!」
(おおー、やっと魔法での実戦か~結構楽しみだな!!)
今日の修行は魔法だけを使うというものだ。昨日は剣だけだったから交互に修行の計画を練っているのが分かるな。
最初に出会ったのはゴブリンだけで出来た5匹のチーム。
「魔法であのゴブリンたちを倒してくるんだ!」
「わかりました!いってきます!」
そう意気込み右手に魔力を込めながら飛び出す。
「グギャギャ!!!!」
「グギャッグギャッ!!!!」
「グギャ!?」
「......グギャーーー!!!!」
「グギャギャーー!!!!」
全員こっちを向いているが関係ない。いってやる!!
「出でよ、ファイヤーボール!」
そのまま火の玉を飛ばすと2匹のゴブリンに火が移った。
「グギャーーーグギャーーーー!!!!」
「グギャグギャ!!グギャグギャ!!」
それが断末魔となり2匹のゴブリンの息が絶えた。
毎日、自主練習の魔法の練習を行っているお陰か火の威力が高まっている。
発射速度も上がっているみたいだな。
「よし! もう一発いくぜ!!」
今度は両手に魔力を込めながら、ファイヤーボールを放つ。
先程以上に威力は高まり火柱ができるほどの火力をみせた。
残りのゴブリンたちは跡形も無く消え去った。
「......すごいな!これが魔法か!」
初めての魔法の実戦ということもありかなり浮かれたまま俺は師匠の方に振り返った。
「確かにすごい威力だ、だがそれゆえに危険度も増す。魔法は教えてやることは出来ないが練習を怠るな! 絶対にだ!」
難しい顔をしながら師匠は語りかけてきた。
「わかりました、絶対に疎かにしません!」
昨日と比べると、かなりスムーズに敵を倒せることが分かり魔法の有用性に磨きがかかった。
苦労して倒したジェネラルゴブリンも楽とまではいかないが倒せることができ、気が付けば昨日一日中のの成果を半分の時間で追いつくことができた。
春になる頃まで行われたこの修行は俺を更に強くさせた。
今では純粋な剣だけの戦いなら師匠からの攻撃もかわせることが多くなり攻撃を当てる回数も跳ね上がった。
そして、たまに行う魔法ありの戦いなら師匠にケガを負わせることが出来たのも自慢の一つになった。
魔の森に入り魔物と戦う修行ではジェネラルゴブリンを瞬殺できるようにもなり、今では奥に住む魔物と戦うのが日課になっている。
師匠はというと最近街に出て行くのがかなり増えてきている。
理由を聞こうにも「あ~、色々とな......」とはぐらかす始末である。
まぁ、別にいいけどな。俺だって街に行ってみたいとか思ってないからな全然。そろそろ師匠以外の人と話したいとか思ったことも全くないし......
女の子をみたいとか思ってないし。
言っていると悲しくなってきた、やっぱりそろそろ師匠以外の人と話したい。 女の子とか女の子とか女の......
だが、思ったよりもここの神は有能であった。
願いは叶うという奴だろうか!?
「あ~、タクミ街に行かないか!?」
「はい、もちろん!!」
俺は即答で答えた。
ついに、街にいけるのだ。行かずしてどうするというのだ。楽しみで仕方ない。
そんなこんなで森を抜け近くの街≪リーサン≫を目指す。
師匠曰く、人口は5000人ほどの街だそうで王国に属しているそうだ。
なんでも、今さら俺の身分証明が無いことに気づいたみたいで一番近い街である≪リーサン≫で作りにいくらしい。
街道に出ることには成功した俺たちは街道を通りながら≪リーサン≫を目指す。
すると、
「キャァァァーーーーー!!」
女の子の声が鳴り響いたのであった。
「師匠今の声って...」
「急ぐぞタクミ!」
師匠はそう残し走り去っていく、俺も急がないと。
少し進むと草むらに隠れた師匠がいたので俺も横に隠れることにする。
前を見ると、馬車がありその下には男性が倒れており。妻と娘とみられる二人が倒れた男性の前で泣き崩れている。
「ヒュ~、安心していいぜ。俺たちは女には優しいからな!」
「「ガハハハハハ」」
と下品な笑い声を上げているのは盗賊らしき6人の男達、おそらく倒れている男性は娘と妻を守るために立ち塞がったのだが返り討ちにされたのだろう。
酷い話だ、許しておけないな。
「師匠行きましょう、あの人たちも危険です」
俺はそう横にいる師匠に提案する。
「ああ、だが相手は盗賊だ。絶対に気を抜くなあいつらはお前の命を狙ってくるぞ。人間だからって手を抜くなよ」
そういい終えると師匠は草むらから飛び出し盗賊と親子を分けるように位置を取った。
「誰だ、お前は! 俺たちの邪魔をするつもりなのか!?」
「誰でもいいだろうお前らなどに名乗る名など持ち合わせておらんわ!」
な、なんかかっこいいな。いいところを取られた気分だ。
「グヘヘヘへ、おっさん今謝るなら持っているもの全部だせば許してやるぞ」
「下衆が、御託はいいからさっさとかかってこい!」
「チッ! おいお前らこのおっさんを早く殺して女で楽しむとしようぜ!」
身なりも汚ければ使う言葉も汚いんだな。とりあえず俺は倒れている男の人を助けるとしよう。
師匠が盗賊たちと対峙している隙に俺はコソコソと親子に近づいていく。
「キャッ! 誰ですかあなたは!?」
母とおもわしき女性が娘を後ろに隠しながら俺を睨み付けてくる。
「安心してください、僕はあそこで盗賊と戦っている男と仲間です。僕はこの男性を助けにきました。」
「本当ですかッ!? 父を助けてくれるのですか!?」
そう聞いてきたのは若い女で歳は12歳ぐらいとみられ顔のパーツは整っており、胸も歳の割には中々に大きい。
女性と話すのなんて久しぶりな俺は俯きながら、
「はっはい! がんばります......」
だめだなこれは、目を合わせて話すなんてそんなのできないッッ!
俺は気持ちを切り替え男を仰向けにして両手を突き出し『ヒール』を唱える。
男の傷は腹にある切り傷であったが、かなり鍛えられた腹筋ににより重傷は免れているみたいだ。
体の中からかなりの魔力を吸い取られていくのが感じる。
だが、それに答えるように男の傷が塞がっていくのが目でも分かる。
「あ、あと少し......」
俺は気合を入れ直し込める魔力を増やす。
「......う、うぅ」
呻きながらもどうやら意識を取り戻したみたいだ。
「ッお父さん!!お父さん」
娘が意識を取り戻したばかりの父親に抱きつく。
母親も涙ぐみながら見守っている。
うん、いい光景だ。なら、俺も後片付けをしようかな。
「おっさん、死ねやぁぁぁぁぁーーーーー!」
小汚い男がギルに向かって懐にしまっていた小さいナイフを右手に持ちながら迫ってくる。
だが、それも一瞬の内にナイフを持っていた男が地面に叩きつけられ、泡を吹いて倒れてしまった。
そこから先は、束の間の出来事であり盗賊を全員倒し、縄にくくりつけるのであった。
そして、座り込む三人の前に佇むのであった。