第3話 魔法が使えました!
___カァーン___カァーン____
冬の雪が降る中手に剣を持った二人の人影が素早く交差する。
時に激しくまた荒々しくそして時に動かず静寂の時間を過ごす永遠と続くと思われた二人の踊りにも終わりが近づいていた。
__ッシュっと風を切る音が鳴る
「......カラァーン」
一人の剣が手から落ちて膝から崩れ落ちる。
「...ま、まいりました」
「...フッ、中々強くなったな。今日はこの辺りで終わりにして帰るとするか?」
「はい!ありがとうございました!!」
そう会話を交わしたのは、タクミと師匠ことギルさんだ。
師匠と一緒に暮らしだしてからもうすぐ一年が経とうとしている。
師匠と出会ったのが季節でいうところの春だったらしい、そしてこの世界にも四季は存在するらしい。
今は冬になったがこちらの世界の冬は地球と同じ冬で物凄く寒い。
現在俺は師匠に剣術を習っているところだ。
なぜ、習っているのかというと毎日師匠に死ぬほど走らされた俺だがどうやらリルカに貰った武の加護のお陰か、体力が日に日に付いていくのが分かったのである。
今では地獄のジョギングも普通のジョギングになってしまった、おれ頑張ったよ!
そして、日課の文字の勉強も俺が文字を不自由なく使えることになったので終わり。
その空いた時間で俺はこの世界の知らないことについて師匠に色々と聞くと共に剣術の稽古をつけてもらっているのだ。
~~~~少し昔~~~~
「師匠! 僕はここがどこなのか知りたいです!」
「ん!? 言ってなかったけ?」
まじ!? と師匠が聞いてくる。こう思えば本当に最初と比べて師匠との距離が縮まったよな。
「そうだな~...簡単にいうとここは魔の森と呼ばれるところの入り口みたいな所だな!」
「魔の森ですか!? それってなんで魔の森ってよばれているのですか?」
「タクミはゴブリンに会ったことがあるんだよな?」
「はい、あります! 緑色の体をした奴ですよね!?」
「そうだ! 魔の森っていうのはそういうモンスターと呼ばれる魔物が多く生息しているってことと空が見えないぐらいに霧がかかっていることから呼ばれているんだ!」
だから、子供のお前がいた時はビックリしたんだぞと言ってくる。
(おいおい、まじかよそんな危ない場所に俺飛ばされたのかよ!! リルカの奴何考えてんだ!? まぁ美人だから許すけど......)
「でも、なんでそんなに危ない所に師匠はいるんですか!?」
「うーーん......色々と理由はあるが一番の理由はな、この森はな中心に行けば行くほどその魔物の凶暴さが増すんだよ。そいつらをこの森から出さないためにワシがいるんだ!!」
何かやばいことを聞いたぞ今、しかも師匠さらっと流したぞ。
「じゃぁ師匠はやっぱり強いんですね!!」
「ふっ、この森はなワシでも一番奥の中心には行けないんだよ」
「えっ!? 本当ですか!?」
「あぁ、昔ワシが力も技術も絶頂期だった頃にこの森に腕試しに行ったんだが......」
「だが...どうしたんだすか!?」
もったいぶらないで教えてくれよー!!
「まぁいいか...この森に入ったときはあまりの手応えの無さに魔の森が名前だけのものだと思っていたよ。」
だがなと、続ける。
「この世界には絶対に戦いをしてはいけない奴がいるんだって思い知らされたのさ......」
「何が、現れたんですか!?」
「よく分からん、今までに見たこともない魔物だった。目に見えない速さで駆け回り全てを切り裂くような爪をもった狼だった。」
「おおかみ...ですか!?」
「ああ、金色に輝く毛並みはどこか神々的でな、今でも忘れることはないな!まぁ、一瞬で記憶を飛ばされたんだがな!」
師匠は興奮気味にまた嬉しそうに語っている。師匠にそこまで言わせるって強いんだろうな......
「そうだったんですね!この場所のことは分かりましたけどこの近くに国ってあるんですか!?」
「ああちゃんとあるぞ!ちょうどこの魔の森を境にして西にミリシー帝国が西にはガルバス王国があるぞ!」
(おお、帝国に王国かぁ!!人が沢山いるのだろうか!?)
「やっぱり、帝国や王国には人が沢山いるのですか!?」
「もちろんだ、両国とも首都に行けば人が沢山いるぞ!」
(あ、まてよ。師匠は人間の部類には入らないよな!?そこら辺はどうなんだろう??)
「師匠!!その...師匠は人間なのでしょうか??」
師匠は目を大きく見開いていたが、
「ハッハッハ!そんなことかそうだな確かに言ってなかったな!!」
師匠が大笑いしている、俺としては聞きにくいことを聞いたつもりだったんだけどな...
「確かにワシは獣人と呼ばれとる!人間とは少し違うかもな?」
「ッ!すいません変なこと聞いてしまって!」
「気にするな!獣人にも獣人大国ケルダニアと呼ばれる国があるからな! 差別みたいなものはあまり存在しないんだよ!」
「獣人大国ですか!?この世界って人間と獣人どっちが多いんですか!?」
「ああ、そうだな~!人間が一番多いなその次にワシ達獣人その後に亜人だなエルフやドワーフはあまりいないがな」
「ということは、それが全ての人種なのですか!?」
そうきくと、師匠は顔を急に顰めながら、
「......いや、何度かしかあったことは無いが魔人と呼ばれる奴らもいる! あいつらは現れただけで災害レベルだ! あのときだって......」
師匠がブツブツと独り言を言い出した、過去に何かあったのかな!?
(ふふっ、でもこうなったら魔王もいるんだろな!)
「師匠!その魔人はどこからやってくるのですか!?」
「ん?魔人どもは魔界と呼ばれているところからやってきているんだ!」
「ありがとうございます!勉強になりました!!」
「うむ、勉強はいいことだ!!」
「それにしても、タクミは文字も覚えたし、この空いた時間で明日からは剣術の練習を始めるぞ!!」
「剣術ですか!? わかりました!!」
(うーん、せっかく文字も覚えたから本とか読みたかったんだけどな......)
~~~~現在~~~~
こうして、新しく師匠に剣術を教えてもらうことになったのだがこの人すごく強いんだよ!!
勝てる気が全くしないからな。
(ま、まあ最近は少し攻撃を入れれるようになったんだけどな!)
師匠は家に入り俺は水浴びをするために外に残って水を浴びる。
悲しいが風呂の無い人生に馴れつつある俺が嫌だ......
「タクミ!飯が出来たぞー!!」
「はーい!わかりましたー!!」
水浴びを終えると丁度の時間に晩ご飯が出来たようで師匠が俺を呼ぶ。
家に入り師匠と共にご飯を食べる、こんな顔してるけど実は家庭的だし。師匠は万能型だな!!
「ウォォォォ!!」
「お、今日はボルが来ているみたいだな!タクミこれをボルにあげてきてくれ!!」
「わかりました!!」
俺は師匠からボルへの大きめの魚を受け取りボルのところに向かう。
「おーい!ボル飯だぞー!!」
「ウォン!ウォン!」
魚をボルに放り投げる。それをボルが口でキャッチして魚を食べだす。
今思えば、初めてボルを見たときはビックリしたよな!!
あの後聞いた話によると師匠とボルは昔からの関係らしく、師匠がこの森に住みだしてからまだ小熊だったボルに魚をあげていたら懐いてしまい、いつの間にかここの警備をすることになったみたいだ。
「ウォォォォ!!」
魚を食べ終え、一度吠えてからボルは森に帰っていく。
俺は家に入り、師匠に貰った部屋で最近の日課である読書を始める。
題名はコレ『全初級魔法!あなたはどの魔法!?』
そう!魔法である!
一度師匠に魔法について聞いたのだが、
「魔法か......確かに調べてもいいな!」
そういいながら、師匠が色々と準備をし始める。
「よし!あった!!タクミこっちに来るんだ!」
師匠の所に行くと水晶が用意されていた。
「魔法を使うには、まずは自分の魔法の適正を調べなくてはならない!」
「適正ですか!?この水晶で調べるんですか!?」
「ああ、その通りだ!このナイフで水晶の上から自分の血を流してみろ!!」
そういわれるまま、俺はナイフで指に傷をつけ水晶の上に血を流す。
すると、水晶は光りだす。
光が小さくなってからよく見ると、水晶の中に赤、青、茶、緑、黄、黒色の煙が漂っていた。
それを見た師匠が、唸りながら
「う~む、何個属性を持っているんだ!」
「属性ってどういうことですか!?」
「属性というのは自分がどの魔法を使えるか分かるものだ、こんなに属性を持った奴は見たことが無いぞ!! タクミには魔法の素質があるのかもな!?」
(おーー!!なんかチートみたいな感じだな、それに魔法の素質については心当たりがものすごくあるしな)
「師匠! 僕に魔法を教えてください!」
「待ってくれ、ワシには魔法のことはよく分からん!いや、待てよあれがあったはず......」
そういい残しまた師匠が物を探し始める、、、
「あった!すまんがこれでどうにかしてくれ!」
そういわれ手渡されたのがこの本である。
この本にも、『まずは自分の適性を調べてみましょう!』
と、さっき水晶にやったことのやり方が書かれている。
・赤色のあなたには火属性の適正があります!これからはメラメラに生きていくあなたに祝福あれ!
・青色のあなたには水属性の適正があります!これからはクールに生きていくあなたに祝福あれ!
・茶色のあなたには土属性の適正があります!これからはロックに生きていくあなたに祝福あれ!
・緑色のあなたには風属性の適正があります!これからはフワッと生きていくあなたに祝福あれ!
・黄色のあなたには光属性の適正があります!これからはピカッと生きていくあなたに祝福あれ!
・黒色のあなたには闇属性の適正があります!これからはダークに生きていくあなたに祝福あれ!
・無色のあなたには......まぁ祝福あれ!!
(うわぁ、うぜぇー! それに無色の人かわいそうだな......)
どうやらこの本によると魔法を使える人は全体的にあまり多くないようだ。
100人いるとしたらその中に魔法を使える人が1人いるか2人いるかだそうだ。
でも、こうなると俺には全部の属性の適正があるっていうことか!コレがリルカに貰った魔の加護ってやつなのかな!?
じゃぁ、俺って魔法使えるんだな。これは嬉しいぜ!!
そう思いながらもう一ページ進める
『次に魔力についてです。これはあなたの魔法への素質により個人差が生まれます。魔力を使えるようになることで魔法を使えるようになります。まずは目を瞑り自分の中で鼓動する心臓に耳を傾けてください!』
俺は、目を瞑り心臓の音に耳を傾ける。
「ドクッ__ドクッ__ドクッ」
心臓の音に耳を傾けていると、自分の内から沸き起こる暖かいものが気になり始めた。
俺は目を開き、本を読むと、
『自分の中から暖かいものが流れているのを感じましたか!? それが魔力です! 感じられた人はその魔力を体中に広がるように、感じてない人はもう一度やり直してください!』
「なるほどな!これが魔力か......」
俺は魔力を体中に広げていく、そしてまた一ページ本を進める。
『やってみよう!火属性! このページは火属性の人のみ読んでください。』
俺は火属性を持っているからこのまま読むことにする。
『それでは手のひらに魔力を集めてください。そして自分が熱いと思うものを思い浮かべ詠唱を唱えてみましょう!』
まずは、手のひらに魔力を集める。そしてライターの火を思い浮かべながら、
『~~初級の詠唱~~』
・出でよ、ファイヤーボール
・出でよ、ファイヤーランス
とりあえず、
「出でよ、ファイヤーボール!」
すると、手のひらに小さいが火の玉が出てきた!!
「おお!!魔法が使えたーー!!」
俺は嬉しさのあまりに、火の玉をベッドに放ってしまった。燃え上がるベッドを前に俺は、
「うおぉー! ベッドが燃えたー! そうだ!水魔法で」
そう思い、水魔法のページを開くとやり方は火魔法と同じで違うのは水のことを思い浮かべるということだった。
「出でよ、ウォーターボール!」
水の玉を出した俺はそれをベッドに放ち、火を消すことに成功する。
「あー、危なかったー!!」
それからは色々な魔法を見たが、どれも基本は同じで
後は様々なイメージで出すだけだと分かった。
魔法が使えることがこんなに嬉しいとは思わなかった!
だが、光魔法と闇魔法は特別で使える人が中々いないといわれている。
おそらくこの辺りが魔の加護の力だろう。
光魔法はまた聖魔法とも呼ばれることがあるらしい、なぜかというと光魔法が特別なのは回復魔法が使えるからだ!
それを知った俺は、早速使ってみる。
「傷を癒したまえ、ヒール!」
そう唱えることで腕などに付いている小さなかすり傷が治っていく。
これは、便利な魔法だな。
この光魔法が使える人は聖職者の人たちに多いらしい、なんか納得だよな!
そして闇魔法だがこれもまた特別で主に使えるのが多いのが魔人と呼ばれる魔族に多いらしい。
だが以外に闇魔法は有能で、
「広がれ、アイテムボックス!」
これは名前の通りで物を収納できて簡単に取り出せる魔法だ。
俺的には物凄く便利だと思っている。
また、余談だが師匠は火属性の適正があるみたいだが、性に合わないらしくほとんど使ったことがないらしい。
俺は、この本をまた一ページ進める。
『魔力を増やそう!徹底的に!!』
そのタイトルと同様に内容もそのままだ。
どうやら魔法は使えば使うほど強くなっていくみたいだ、だが魔力も魔法を使えば使うほど増えていくらしい!
だけど、最後に行き着く自分の魔力は個人によって総魔力の限界が違うみたいだ、こればかりは多いのか少ないのか自分で使っていくごとに確かめるしかないらしい。
魔力は使えば使うほど体に負荷がかかるらしく、最悪は気絶することもあるらしい。
俺は毎日頭が痛くなるぐらいまで魔法を使い魔力を増やすのが日課になっている。
だから、俺は師匠との剣術を終えると魔法の鍛錬と魔力の底上げという日々を過ごしている。
そんな中、師匠から提案されたことがある。
「タクミ! そろそろ魔物との実戦を行うぞ!」
今回は大まかな説明回にしました。
ご意見ご感想お待ちしております。