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第1話 猫耳のおっさん


濃く深い霧に包まれ人が寄り付かないと思われる森に俺は立っていた。


 「まいったな......場所に関しては特に何も言わなかったけどこれは酷いだろ」

 

まぁ、リルカのお陰で新しい世界で生きれる機会をもらったんだから恨むのはお門違いか??


 「とりあえず恨むのは後にして状況の確認だな」


俺は体全体を見回す、服装はパジャマだったのが昔の西洋の服みたいに変わっている、おそらくこれがこちらの世界の一般的であり、リルカが合わせてくれたのだろう。

持ち物は何もないな......


「仕方ないか、まずは人を探すのを第一目標としよう!!」


 



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


  ~拓海が去った後~


 「無事に坊やを送り出せたのはよかったけど、何でエラーになるのよ!!」

 

リルカは一人で怒りの声を上げていた。


 「坊やを送る場所間違えちゃったわ...それに色々といじってしまったから変なことになってなかったらいいけど......」 

 

空中にキーボードらしきものを出したリルカはおぼつかない手つきでゆっくりと打ち込んでいたが早々に諦め、キーボードを消した。


「悪いことをしてしまったけどきっと坊やなら大丈夫! そう信じることにしましょう!!」


リルカは開き直っていた......



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うーーん、空は霧で隠れて見えないけど地上は綺麗に見えるな!」

 

あれから少し辺りを見回ったが似たような景色が続くので木に石で傷を付けてもう一度同じ所にこないようにしていた。


「それにしても木以外何もないな......」

そう呟いた時だった。

 

 ガサッッ ガサガサッッ

前の茂みから音が聞こえてきた。俺は慌てて近くの木の後ろに隠れ様子を見ることにした。


 「グギャギャギャ グギャッ」


 「グギャッグギャッ」


出てきたのは緑色の体をした1m程の背丈がある2匹のモンスターだった。

 「あれってゲームとかで見るゴブリンってやつじゃないのか?」


涎をたらし憎たらしい顔をしたゴブリン達が茂みから出てくる。

持っている物は片手に棍棒さらに血が付いており、もう片方の手にはウサギと見られる物を引きずっていた。


「狩りをしてたって所か、ちょうどいいな俺って魔法ができるはずだよな? 自分の力を知るいい機会だ!!」


俺は今までの記憶で自分が思う魔法を頭に思い浮かべ、2匹のゴブリンの前に姿を晒した。


「グギャッッ!!」

「グギャギャギャ!!」

どうやらゴブリン達も一瞬驚いたがすぐに戦闘態勢に入ったようでウサギを近くに放り捨て両手で棍棒を持ち直す。



俺は片手をゴブリン達に向け大声で叫んだ、、、

「よし行くぞ!! ファイヤーーーー!!!!!」


「「......グギャ??」」


 あれ~、おかしいなぁー......火が出ないぞ??

そう、何も起こらなかったのである。 


「おぉぉぉぉぉぉぉいいいいい! どういうことだーー!!」


ヤバイ恥ずかしい、ゴブリン達も不思議な顔で俺を見ているしさ俺って魔法使えないの??

そう思っていたら、、、


「グギャーーー!!」

一匹のゴブリンが俺に突っ込んできているのである。


「クソッッ、こうなったら武術だ!!」


俺は突っ込んでくるゴブリンをヒラリとかわし、そのお礼に相手の腹に拳を与えた。

その一撃でどうやらゴブリンは意識を失ったらしい。


「よっしゃ!! 体は動くな凄く軽い感じだ!」


俺はそのまま驚いたまま体を動かしてないもう一匹のゴブリンに近づき渾身の蹴りを顎にくれてやり、そのゴブリンの意識も刈り取ることに成功する。


「ふーーっ、疲れた~!」

人生初の戦闘は俺の羞恥心に大きなダメージを加えただけだった。

それから少し休憩をすると倒したゴブリンの棍棒と一応ウサギを奪い、その場を後にする。


「さっきのファイヤーで喉が渇いたな、早く水場を見つけよう!」


あの後も何度か自分が思う魔法の詠唱を一通りやったが何も起こらなかった。

あの恥ずかしい詠唱達は俺の黒歴史にしまうとして、水が飲みたい!

そう思いながら俺の体内時計で2時間近く歩いていたら小さくだが水の音が聞こえてくる。


「......ッッ水だ、水の音だ!!!!」


俺は急いで水の音がする方へ駆けていった。


そこは少し森を抜けたところで確かに水が流れている川だった。

俺は近づき手で水をすくい、口の中に入れていく。

「...ゴクッ、はぁ~死ぬところだった!!」


オアシスを見つけた俺は喉を潤した、落ち着いた俺はもう一度水を飲もうと水面に顔を近づけると、


「なッッ! これは俺か!?」


そこに写っていたのは間違いなく俺であり死ぬ前は十八歳だったのだが、明らかに幼くなっている。

「これってどういうことだ!? リルカの仕業なのか? 5年ぐらい若返ってるぞ!!」

そう、この顔は12、3歳ごろの俺じゃないか!

これは喜べばいいのか?分からんな。


「まぁ、考えるだけ無駄か!」

そう思い、この考えを捨てることにした。


「それよりもまずは、どうするかだな!」

この水が上から流れてきているのを確認して、水の側を歩きながら上流を目指すことにした俺は重たい足を動かしていく。


またどれほど歩いただろうか、上流を目指す途中でゴブリンやウサギなどもここの水場を飲むことが分かり、また途中でトラみたいな奴に出くわしたのでウサギを遠くに放り投げ上手いことやり過ごしたりしていた。


そうすると上流に行くほど布が一定感覚で多くの木の枝に結ばれていた。

「あの印は人が結んだはずだ、そうするとやっぱり上流には人がいるはずだ! そこで色々と聞くことにするか」


まもなくすると奥に大きな音を立てる滝が見えてきた、そしてその下には小屋もあった。


「やっと見つけた!!」


俺は残りの力で歩くスピードを進め小屋を目指す。


小屋の全貌が目にくっきりと見えたときだった、


「ウォォォォォォォォォォ!!」


そいつは俺の3倍はあると思われる大きな熊だった、ゆっくりと木の枝を折りつつ姿を現した熊は俺に向け威嚇してくる。


「......マジかよ、ここまで来てそれはないだろ」

俺が持っている武器はゴブリンから奪った棍棒のみ、どう考えても勝てない。

足はなれていない獣道のお陰でパンパンに腫れていた。走って逃げることすら不可能だろう。


「ウォォォォォォォォォォォォ!!」

もう一度大きく叫んだ熊は俺に向け襲い掛かるような素振りを見せてくる。


「ここで終わりってそれはないだろう......」


熊が走ろうとしたその刹那


「コラッッ!! ボルやめろッッ!!」

 小屋の扉から低い男の声が聞こえ、厳つそうな顔をしたおっさんが出てきた。

 だが、一番驚いたのはその顔に似合わないかわいらしい猫耳と尻尾が見えたことだった。


「なにそれッッ!!」

俺はその言葉と同時に意識を失った。




「...ん、んーここはどこだ? ベッドの上??」

いつの間にか建物の中に入れられていたみたいだ。

「あの猫耳のおっさんが運んでくれたんだよな?とりあえず起きておっさんを探すか!」


俺はこの部屋を出る、するとご飯のいい匂いが鼻を刺激する。

「__こっちだな!!」

匂いに操られるまま歩いていると猫耳のおっさんが料理を作っている所だった。


「ん、おお!! 起きたのか! 急に気絶するから焦ったぞ!」


「あ!その時は助けてくれてありがとうございます!それと運んでくれたみたいで本当にありがとうございます!」

俺はしっかりとお礼を言う。


「よせって、元はといえばこっちが悪いんだからよ。ボルが悪いことしたな。ここらは人が滅多に来ないから興奮したみたいだ、許してくれ!」

なるほど、そういうことか! あの熊はボルこの人が面倒を見ているみたいだな。


「いえ、お気になさらないでください!」

そうかっこよく告げると、グルルルルルルッと腹が減ったとまた告げる。

ふっ、気にしないさ!俺はもっと恥ずかしい魔法の詠唱を何回も叫んだんだからな!

だけど、やっぱり恥ずかしい!!!!


「ハハッッ!!腹も空いているみたいだなまずは飯にしよう。そこに座ってくれ!」


「...はい、ワカリマシタ」


おっさんが出してくれたのは豆や野菜が入った暖かいスープとパンだった。


「食べ物までありがとうございます!」


「子供が気にすることはねえよ! しっかりと食っておけ!!」

このおっさん本当にかっこいいな、女なら惚れてたぜ。


「いただきます!!」

おお、美味いな! 失礼だけど味は薄いと思っていたがそんなこと無かったな。

そう思っていると、おっさんも席についてご飯を食べ始める。


「どうだ!? 味は美味いか??」


「はい! とても美味しいです!」


「そうかそれはよかった! そういえば聞いてなかったな坊主の名はなんていうんだ?」

満足げに頷いて猫耳もピクピクさせながらおっさんは今思い出したかのように聞いてくる。


「僕の名前は拓海です。黒羽拓海といいます!」


「ふむ、タクミかここらじゃ聞かない名だな。まぁいいかワシの名前は...ギルだ!」

なるほどな!ここらじゃ日本の名前は珍しいみたいだな、それにしてもおっさん名前を言うときに微妙に沈黙があったな。


「タクミ!それよりどうやって子供のお前がここに来たんだ!?」

名前を呼ばれた俺はすぐに言い返せなかった、そういえばそうだよな俺っていま小さくなってるからな...

どうしよう、、、とりあえず誤魔化すしかないよな。


『地球というところにいたんですがいつの間にかここにいました』じゃ、話にならないしな。

(よし、嘘をつこう!!)


「どうしたんだ? 言いにくいことなのか!?」

ギルさんが優しく聞いてきてくれるから心が痛いけど仕方ない、、


「実は記憶が無いんです。目が覚めたらこの森にいたみたいで今まで自分が何をしてきたのかも親の名前すら思い出せません、覚えているのは自分の名前だけでして...歩いていたらここにたどり着いたみたいで...」


俺は出来るだけ悲しそな顔をしながら言う。

するとギルさんは、


「そうか...それは、辛いことを聞いたな。それにしても記憶が無いということは記憶喪失ということか...」

ギルさんまで険しい顔をして俯いている。


あれ?信じちゃったよこの人!! どんだけ子供に優しいんだよ!! 心が痛むよ!!


確かに今の俺は子供だが信じ過ぎだって! 本当は心の中は大人なんだからな。






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