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プロローグ

  


 「ハァ...ハァ...ハァ...」


   痛い、痛い、痛い、鈍い痛みが体中を走る。

 「あぁ、俺死ぬのかな」

 救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。誰かが呼んでくれたのかな?こんな俺のためにありがたいな。

 

 なぜ、俺が瀕死の状態でいるのかと言われれば時は遡る。

 

 俺こと黒羽拓海は決して裕福ではない家で生まれた。両親ともに共働きだったが両親は愛情を持って俺を育ててくれた。

 だから俺は、両親に恩返しをするために幼い頃から勉学に励んだ。同年代の子は「勉強が嫌いだ」とよく言うが俺は決して苦にはならなかった、自分の知らない知識が頭に入ってくる感じが好きなんだ。

 その結果、小、中、高と成績では一番を張っていたし、大学受験も有名大学に確実に受かると教師に太鼓判まで押してもらっていた。

 誰の目からでも俺は成功者として見られたのだろう。

 友達は結構いたんだ。勉強を教えたことも多くあるしカラオケや映画にゲーセンなど色々なとこで遊んだな。

 

 はは、いい人生だよな。




 だが、、、現実は残酷だ。


その日はいつものように朝日が昇った。

 俺は「早起きは三文の徳」という言葉が好きだ。今日もその言葉に負けぬ働きを見せた俺は起きてリビングに入る。

 「「おはよう」」

 

「おはよう」

 まったく、この両親は俺よりも早起きだったんだ。それと絶対に俺が起きてくるまで朝ごはんを食べないんだ。

 

「「「いただきます」」」

 

やっぱり朝ごはんは大事だよな! 朝にご飯を食べて糖分をチャージすることで頭がよく働くからな!

 ご飯を食べ終わって俺は家を出る準備をして玄関を出ようとすると、

 

「拓海ー!ハイこれ!今日午後から雨が降るみたいだから忘れちゃだめでしょ。それと今日は父さんと母さん遅くなるから冷蔵庫の中の物チンして食べてね!」

 

「ほーーい、いってきまーす!」

 ありがたいな、傘忘れるとこだったぜ。

 こんなに晴れてるのに、今日は雨降るんだな。

  

 俺が通う学校は少し坂の上の建てられている。まぁ運動不足な俺にはちょうどいいけどな。

 そんなことを考えてたら、もう学校に着いてた。俺はそのままクラスに入る。

 

「おはよーー」

 「おぅ、拓海ー」

 「おはよう。黒羽君」

 「拓海きいたか?時間割変更で一時間目から体育らしいぞ」

 「マジかよ、朝から体育はきついって」

 朝の挨拶を軽い感じで済ませると嫌な知らせが入ったな......

 あーぁ、学校来てすぐに憂鬱になっちまったぜ。朝から元気に体なんか動かせねーよ、、、


 キーーンコーーンカーーンコーーン

 

 ふぁーー、やっと終わったな。俺は体を伸ばしてから、机に突っ伏して窓をみると雨がポツポツと降り始めていた。

 おー、さすが母さん。ありがたや、ありがたや。

 すると、俺と同じく雨を見たやつらが。

 

「うわぁー、傘持ってきてねーよ!」

 「俺もだよ、本降りになる前に急いで帰ろーぜ!」

 「異議なーーし!!」

 ふっふっふ、俺の勝ちは確定しているのだよ。でも本降りになると面倒だから俺も早く帰るか、、

 するとクラスから出たところで、

 

「あぁ、黒羽いいタイミングだ。これ理科室まで持っていってくれ!」

 「了解でーす!」

 そう上手くはいかないよな。仕方ないな早く帰るのはあきらめて理科室に向かう。

 

 「よいしょっと、ここ置いといたんでいいよな」

 

ちゃんと用事も済ませたことだし。 それじゃぁ、帰るか!

 学校の外に出ると雨は凄い雨に進化していた。 今日はついてないな......

 

「すごいな! 傘なかったらこれは大変だな」

 雨粒が傘に当たる度に手に振動としてこの雨の重さを伝えてくる。まいったなこの悪天候の中下り坂を歩くのは至難の業だぜ。オマケに雷まで付いてきやがった、これは本当にヤバイな。さっさと帰るとしよう、そして家でゴロゴロしよう。うん、そうしよう!

 

それからの俺は、疾風の如く家に帰った。

 

「ただいまーっと今日は俺だけなんだよな。とりあえず風呂に入るとしよう、このままじゃ風邪ひいてしまう」

 傘をさしていたが途中から有っても無くても変わらなくなったので結局びしょ濡れになってしまった。俺は濡れた服をせっせと脱いで命の湯を沸かして入る。

 

 ふぅーー、生き返ったって感じだな。

 風呂から出た後はいつものように宿題と復習をして本を読みながらベッドに転がる。

  

時計を見ると、そろそろ晩ご飯の時間だった。母さん何入れてるのかな?俺は冷蔵庫を楽しげに開ける、んーーっ、炒飯と唐揚げがあった。

 「さすが分かってらっしゃる! お母様!」

 早速チンして食べる。うまいうまいこういう料理って年頃の男にはご馳走だよな。ご飯を食べた後に食後のお茶を飲んで一息つく。

 それにしても遅いな、父さんと母さん......外を見ると更に雨足が強まっていた。

 でも、その内帰ってくるだろうと思い、俺はテレビの電源を付けた、、、

 

 俺はゆっくりとテレビの電源を消す、あまりにも両親の帰りが遅すぎるのだ。俺は父さんに電話をかける。

 

「プルルルルルル、プルルルルルル、おかけになった電話番号は____」

 ガチャっと受話器を置く運転してるのかな? そう思いながら母さんにも電話をかける。

 

「プルルルルルル、プルルルルルル、おかけになった電話番号は____」

 もう一度ガチャっとゆっくり受話器を置く、よく分からないが急にモヤモヤしてきた。俺はもう一回ずつ二人に電話をかける......だが結果は同じだった。

 


何かあったのか、俺は急激に独りが怖くなってきた。もう帰ってくるよな? すると、

 「プルルルルルル、プルルルルルル」

 俺は急いで受話器を取った、両親からだ!

 「もしもし、何でこんなに遅いんだよ!?」

 相手の確認もせずに唐突に俺は答えた。

 

「あぁ、くろばねたくみ君かな??私は警察の久保という者です」

 

「警察!? それって何かあったんですか両親に何かあったんですか!?」

 

「今日の夜たくみ君のご両親は事故に遭いました。落ち着いて聞いてください。対向車線のトラックが悪天候による視界不良でご両親の車に衝突し、ご両親は___即死だったそうです」

 

「え、は?どういう事ですか?両親がしんだ? なにいってるんですかっっ!?」

 

警察からの唐突な言葉に俺は冷静さを失い頭が回らなかった。

 それにより俺が返した言葉には驚きと怒りが占めていた。それはそうだろう親が死んだと聞かされても『あぁ、そうですか』と、納得できる人などいるはずが無い。

 

「もう一度落ち着いてくれるかい?そして今から中央病院に来てもらえるかな?」

 

「......あ、はい。今すぐ行きます!」

 そこで話は終わり俺は頭を悩ませた。意味が分からないどういうことだよ、父さんと母さんが死んだ?冗談だろ? それよりも行かないとな!俺は手早く用意をしタクシーを呼んで中央病院に向かった。

 

 中央病院についてすぐに受付の所に向かう。

 「すいません、黒羽といいます!その事故が_」

 言い終わる前に後ろから肩をつかまれた俺は後ろを振り向く。そこには髭を生やし眼鏡をかけた優しそうな顔をした中年の男がいた。

 「くろばねたくみ君だね?私はさっき電話をかけた久保といいます。ご両親はこちらです、付いて来てください。」

 そういい終えると久保さんは振り返り歩を進める。俺は戸惑ったまま付いて行く。

 

 信じたくなかった、そんなはずは無いと強く思っていた俺だが目の前に映されたのは

 絶望だった、嘘だと思い込みたかったがそれを打ち崩すほどの絶望だった。 俺の心のダムは大きな音を立て崩れ落ちた。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 声にならなくても俺は叫んだ!叫びまくったんだ。

 

 


 それからの事はよく覚えていない、叫び終えた後意識を失ったらしい。

 色々な作業は親戚の方たちが仕切ってくれたみたいだ。

 俺は何も覚えていなかった。いや、認めたくなかったのだろう。

 淡々と終わる両親の葬式もボーっと眺めていただけだった。

 


だが、嫌な事というのは覚えているものなんだな。遺産のことなどこれからの俺の生活など本人がいない所で話は進んでいた。

 

「うちの家は無理よ! もう子供が3人もいるんだから」 「そんなの俺のところだって娘が今年大学受験なんだ!お金に余裕なんかあるわけ無いだろ!」

 「あの子一人にあんな大金持たしちゃダメよ!」

 

ふふっ、まるで腫れ物みたいな扱いだな。

 それは学校でも同じだった。『かわいそう』と友達、教師達は俺に向けて同情の目を向けてきた。

 

「黒羽! 辛いことも多いだろうが一人で悩まずいつでも先生に相談しなさい」 「たくみ大丈夫か!?俺達になにか出来ることがあるなら遠慮なく言ってくれよ!」

 

なんだよそれ、笑わせんなよ! 良い人気取りか? お前らなんかに同情されたくねえよ!

 ふざけんなよっっ!! そんな目で俺を見るな!! 『かわいそう』の一言で俺を理解したつもりになるなっ!

 俺はすべてが嫌になっていた。ここで生きていく自信がなくなっていた。

 

 


 太陽が真上に来るような時間に起きた俺はカーテンを開ける。そこに入ってきたのは日差しではなく俺からすべてを奪った雨だ。

 「今日も雨か」雨は......大嫌いだ。俺はあれから毎日通っている両親が死んだとされる場所に向かいヨロヨロと家を出る。

 

 傘もささずに歩いていたからだろうか何も考えていなかったからなのか、また両方だろうか?

 俺は赤信号に気づかずそのまま足を進めていた。気づいた時にはもう遅かった、車が目の前にあったんだ。

 

 

 


 時は戻り現在、、、

  俺、やっぱ死ぬのかな?あの車の運転手には悪いことしたな、ごめん許してくれ。

 目が開かねーわ。あーぁ......「辛いな」その言葉と同時に涙が溢れすべてが暗くなった......


 


 暖かい体の先から先までがお風呂の中に入っているみたいだ。気持ちいいなもしかしてここが天国なのかな......?

 そう感じた俺は体の力を抜いてこの気持ちよさに浸っていた。すると耳が音を拾う。

 


「起きて起きるのよ坊や、しっかりしなさい目を開けるのよ」

 俺は音のする方へ顔を向け目をゆっくりと開いてゆく、そこに現れたのは見たこともないくらいの美女だった。きれいな金髪で肩の辺りまで伸ばした髪は輝いているようにも見え、抜群のプロポーションを持つその美女は俺に向けて笑顔を咲かせていた。

 

「やっと起きたわね気分はどう?大丈夫?」

 なんとこんな美女が俺を気遣ってくれているのだ! 

 

「ああ、大丈夫だ、それよりここはどこなんだ?」

 俺は焦りそうになったが冷静さを装いぶっきらぼうに答える。あああぁぁぁぁぁぁっっなにやってんだ俺ーーー!!

 だが美女はクスッと笑い俺を見つめてきた。 美人は心も美人なんだな、そう確信した俺だった。

 

 「ここは魂の憩いの場というのよ。ここを訪れた魂は大きな安心感と快楽、希望などを抱くことが出来るのよ」

 美女は俺に向け少々得意げに言う。くそーかわいいなぁー。よく分からなかったがそんなことどうでもいいほどにかわいい。

 

「それより坊や、あなたは選ばなくてはならないわ!」

 今までの態度が一変するような雰囲気を出した美女は俺に選択しろと言ってきた、

 「どういうことだ?何を選ぶんだ??」

 

「あなたの魂は今は肉体と離れているの、けど私の力でこのまま坊やを助けることが可能だわ。これが1つ目の選択肢ね。それとこのまま死に逆らわないというのが2つ目よ。けど私はこの二つを坊やに選んで欲しくないのどちらを選んでもきっと辛い思いをすると思うから」

 


辛いか......なんで忘れてたんだろそういえば俺にはもう父さんも母さんもいないんだった、こんな中あっちに戻っても生きていく自信が無いな。なら二つ目を選ぶか? いやまだ選択肢があるような言い方をしていたな。

 


「......そうだな、まだその選択肢はあるのか?」

 するとまた美女は笑顔になり聞いて欲しかったといわんばかりの勢いで

 「そうよ!最後の一つはあなたの知らない世界に行くという選択肢よ!!」

 どう?と聞いてくる。だが俺は考える確かに知らない世界というのは興味があるな、どんな世界なんだろう?

 

「それは、どんな世界なんだ? 教えてくれ」

「そうね、強さがものを言う魔法と剣の世界よ。行ってみたくなった?」

 魔法か確かに面白そうだ、だが先程からやけに必至に見えるな。どうしても行って欲しいみたいな......まぁいいか美女だし。

 


「ああ、興味があるな。その世界に俺を行かしてくれ!」

 「ええ! もちろんよ少し待っててね準備するから」

 

そういうと俺の顔に両手を向けてくる。あっ、聞いてないことがあった。

 「ちょっと待ってくれその世界に行くのは賛成だが聞きたいことがある。言葉とかはそこで通じるのか?」

 「もちろんよ!そこは安心して私の力が働くから心配しなくていいわ。それとなにか望みがあるなら今聞かせて欲しいわ!」

 やけに太っ腹だな、さすが美女だ。なら新しく生きるために俺も覚悟を決めないとな。

 


「俺は強くなりたい! 誰にも負けず俺が何も失わないために!!」

 俺は決意を込めて言葉を発した。

 「よく言ったわ!坊やには武の加護と魔の加護を与えるわ。これで魔法と武を極めれる素質を持つことになるわ。でもこの力を引き出すためには努力を惜しまないことよ。そうすればあなたは強くなれるわきっとね!」

 

「ありがとう!これ以上は望まないよ。俺を新しい世界に連れて行ってくれ!」

 

「わかったわ、坊やこれからあなたは苦しい思いをするかも知れないけれど負けないでそしてあきらめないで!」

 本心から俺を応援しているのだと思った。そういえば俺大事なことを聞いてないな、行く前にしっかり聞かないと。

 「最後に一つあなたの名前を教えて欲しい!」

 そういうと、美女が豆鉄砲くらったかのように驚いていた。

 

「ふふっ! いいわ教えてあげる。私の名はリルカよ! ちゃんと覚えていてね!!」

 「もちろん絶対に忘れないよ! リルカありがとう。これからは強く生きていくよ!!」

 そういうと俺の周りを光が包んでいく、多くの光が覆う中リルカを見るとこれまでに無いぐらい満面の笑顔を見せてくれた。

 「それじゃぁな」

 そう短く別れの言葉を伝えた。

 





 

 

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