兄貴と私。
「影山氏、ブラコンやん」
そうか、私はブラコンだったのか。
「いっつもお兄さんの話しかしないやんけ。」
だって、兄貴は面白いから。
「ま、面白いからいいんだけどさ。」
せやろ。
「ってかお兄さんってイケメンなんやろ?」
それはもう。松潤似と言われた男だ。
「紹介してよ!」
「彼女いるから。」
「まじかよぉおお!きっつ!マジファックだな!」
「あの人に彼女いないってこと、無いから。」
「きっつぅううう!!」
影山 陽子、私はブラコンです。
自分でも認めてはいる。
兄貴が好きだ。
いや、たぶんみんなが思ってるそういう好きじゃない。
兄貴とセックスしたいとか、キスしたいとかそういうことを考えたことは無い。
小さい頃から、親の背中よりも兄貴の背中を見て育ってきた気がする。
父さんは公務員、単身赴任であまり家に帰ってこない。
母さんは専業主婦、夜遊びが大好きで夜はいつもいない。
兄貴に私のめんどうをまかせ、いつも父さんがいない日は、遊びに行っていた。
「ヨウコ、ゲームすっか?」
「する。」
「なにする?AIRする?」
「泣きゲー?」
「まぁな。面白かったぞ。」
「ときメモ2より面白い?」
「あれはまた別物だろ。まぁやればわかるさ。」
「ふむ。」
兄貴がオススメするゲームで面白くないものなんてなかった。
いつも新鮮なものを与えてくれる。
7歳も年が離れていることもあって、兄貴のほうが私より十分に知識があった。
同い年がポケモンをしている中、私はときメモ2の寿ちゃんに萌え、
同い年がちゃおを読んでいる時、私はママレード・ボーイを読んで、
同い年がオレンジレンジを聴いてる中、私はレディオヘッドを聴いていた。
それはもう、同い年とは感性が似ないものだ。
小学、中学と友達は少なかった。
同い年と遊ぶより、兄貴と遊んでいるほうが楽しかったのだ。
「どうした、またお前1人か。」
「だって兄ちゃんと遊んでるほうが楽しいんだもん。」
「かくれんぼとか、ほかの友達としても一緒だろ?」
「いや、兄ちゃんとかくれんぼするほうが楽しい。」
「そうか。」
「テーブルの上に乗って考える人のポーズをしながら
『俺は像だ。兄じゃない。他をあたれ』
なんて言う馬鹿は、同い年にはいない。」
「それは男と女の違いだと思うけどな。」
「男子怖い。無理絶対。」
「俺も健全な男子なんだが。」
「兄ちゃんは兄ちゃんでしょ。兄ちゃんっていう性別。」
「なんだそれ。」
私は、妹って言う性別。
これが交わることは、無いに等しい。