夜の街へ
夕食を済ませるとクレドは真っ先に向かった団長の部屋で買ってきたお土産を渡した。
団長の土産もさんざん悩んで、迷って選んだ物だ。団長の好みはわかっているとはいえ、どれならより喜んでもらえるのか、随分考えた。もしかしたら何が好みを知らない人に贈るより難しいかもしれない。
「全部自分の物を買ってよかったんだよ?」
「自分の物も買ったよ。でもそれは団長のおかげだから。団長甘いの好きでしょ。色々あって迷ったから詰め合わせっていうのを買ってきたんだ。」
「そうか。じゃあ、ありがたく頂くよ。」
「今日一日いろんなところを見て回ったよ。すごく面白かった。明日また行ってくる。あ、でもあさっては小道具の準備ぐらいは手伝うよ。」
「ああ頼む。それから、あんたの部屋に次の公演の台本を置いといたからね。目を通しておきなさい。」
「うん。それじゃ、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
ぱたん、と団長の部屋の扉を閉めると自分の部屋には戻らず再び住宅街への道に出た。
もう一度あの離塔へ行くためだ。さっきは門前払いをくらったが、それなら別の方法を使うまでだ。
クレドは夜の闇に包まれた街に走りだした。