クレメンティアの夜
夜になると、クレメンティアではあちこちで祭りの名物のひとつである華やかな花火が上がる。今夜も綺麗な花火が次々と空に咲いては消えていき、人々の目を楽しませていることだろう。だが、ここはそんな陽気な雰囲気とは全くと言っていいほど無縁だ。
「はぁ。」
キーラは今日何度目か分からないため息をついた。
下された処分の結果から考えて、庭に出られるのもまだ先になるだろう。
賑やかな街の様子を遠いここから感じつつキーラは一日中座っていた出窓部分から降りるとカーテンを閉めた。
部屋のテーブルには世話係のワズリーが持ってきた夕食が置かれていたが手をつけることなくベッドにもぐりこんだ。
きっと朝、なんで夕食を召し上がらなかったんですか?とか聞かれるだろうな。面倒だな。こんな状況で生きていること自体に疑問が湧いてくる。目的も、希望もなくただ毎日を過ごしている。これじゃ、死んでるのと大して変わらないかもしれない。
眠気に襲われることもなく床についたので中々寝つくことも出来ない。
眠ることがこんなに大変だったなんて…。
いつまでこんな生活をしなくてはいけないのだろう?
本当に死ぬまで?
嫌だなぁ。
そんな想いを巡らせながらキーラは目を閉じた。遠くから花火が上がり、咲き乱れている音がベッドに潜りこんでいても聞こえてくる。
きっと出窓から身を乗り出して見れば空に広がる花火を確認することが出来るだろう。
分かっていたがそんな気は起きなかった。
先の見えない日々、自分に希望なんてものはあるんだろうか。
自分の目の前には不確かなことばかりが山積している。だが、まだしばらく眠ることはできないだろう、それだけは確かだった。