第5話
「おい、宇宙。遅いぞ。」
「わりぃ、わりぃ。」
右手にパスポートとチケット、そして左手でごめんという動作をしてすでに手荷物検査場の前に集まっている3人の元へ走っていく。
ようやくチームハワイアンの4人がそろった。
無事に手荷物検査を終え、搭乗ゲートの前のベンチに座りながらゆっくりさっきの話をする。
「そういえばさっき、うちの学校の卒業生とか言う人と話をしたんだ。」
3人それぞれ違うことをしていたが手を休めて僕の周りに集まってきた。
「いつ?」
遥香が聞いてきた。
「さっき、搭乗手続きしてもらった係りの人がうちの学校の卒業生らしいんだ。そしてその人の話によると……」
僕は3人に普通のキャンプと思ってはいけないこと、内容をしゃべったことで学校を転校した人がいることを正確に伝えた。みんな話を聞いてる途中から真剣な表情で話を聞いていた。
「おい、それまじかよ……」
先に口を開いたのはやはり健斗だった。
「やっぱり、おかしいとは思ってましたけど……」
北山さんも難しい表情を浮かべている。
「ま、そういうことだから今のうちから覚悟をしていたほうがいいかもね。」
「そうだけどさ……なんで今このタイミングで言うかな?」
「着いてからのほうがよかったか?それじゃ遅くなっちゃうと思って。」
「ま、聞いてしまったことはしょうがない。気分を戻して張り切って行こうじゃないの!」
「遥香はいつもポジティブでいいよな……」
「ネガティブになるな兄よ!」
「あほ……」
キンコンカンコーーン♪
「ANLからハワイ行きの便にご搭乗されるお客様にご案内申し上げます。機内へのご搭乗の準備が出来ましたのでこれより順次、お客様を機内へご案内いたします。……」
アナウンスが一通り流れたので僕たちはすでに出来始めている列の後ろに並んだ。僕たちの後ろにも続々と人が並んでくる。よく見ると20人ぐらい後ろに治田先生が並んでいる。ほぼ、手ぶらに近い状態だ。
僕たちの番が来てチケットを機械に通す。
そしてボーディングブリッジを通って飛行機に乗った。
この飛行機は結構新しい感じのBOEING777-300ERだ。
座席番号を確認しながら奥へと進む。幸いなことに僕たち4人はエコノミーの1番前と2番目の位置だった。
「えっと僕たちの席は……あった。ここだ。えっと僕が窓側か。」
「お兄ちゃんまった!私が窓側がいい。」
「はぁ?遥香?急にどうしたの?」
「だから窓側がいいの。」
「なんで?」
「いっつもお兄ちゃんが窓側じゃん。そんなのずる~い。」
「別にずるくはないでしょ。」
「こんな可愛い妹の隣に知らないおじさんが来て変なことされたらどうすんのよ!」
「はぁ……遥香の我がままはいつまでたっても治らないね。分かった代わってやる。その代わり行きだけな。」
「うん。」
兄弟げんかが落ち着いたところで遥香が窓側にすわり、その隣に僕が座った。後ひとつ廊下側の座席が空いている。誰が来るんだろう。
そうソワソワしているとついに出発3分前になった。すると隣に「失礼します」といって男の人が座ってきた。僕は軽く会釈をして窓の外に目線を移した。
でもやっぱりどんな人なのか気になるのが人間だ。そっと隣の人を見てみた。
「治田先生っ!」
そう隣に座っていたのは担任の治田先生だった。
「どこのおじさんかと思いましたよ!」
冗談交じりで言った。
「馬鹿やろう!」
軽く頭を叩かれた。
そうしているとキャビンアテンダントの人が来て治田先生にシートベルトを締めろといった。
だっせぇ、といって笑ってやった。
すると飛行機は定刻どおりに成田国際空港を出発した。