第4話
ジジジジジジジジジジ……
午前6時。本日は7月1日金曜日。いよいよキャンプ出発の日となった。
いつもより1時間早く鳴り響いている目覚まし時計を止める。
一瞬、なぜこんなにはやくなるのかと考えたのだが、すぐに恭賀出発日だということを思い出したのだった。
机の上にパスポートとドル札があるのを確認して私服に着替える。
機内に持ち込むバッグの中にパスポートと50ドルほどを入れて急いで新宿駅前のバスターミナルに向かった。
成田空港に着いたのは11時だった。
国際線チェックインカウンターの前に健斗と北山さんが待っていた。
「遅かったですね。」
白のワンピースを着た北山さんが言った。
「道が混んでたからね。」
遥香が事情を説明していると担任の治田先生がこちらに歩いてきた。
「アロ~~ハ~~。チームハワイアンのみなさん」
「こんにちわ。」
僕たちの班名は遥香と健斗が決めた。もっとましなのはなかったのはわいだろうか。
「はい、これチケットね。各自で搭乗手続き尾を済ませてくださいね。ちなみに私もハワイですので。それじゃ、アロ~~ハ~!」
「ア、アロ~ハ~……。」
この5人の中で一番テンションが高いのは治田先生だろう。
チームハワイアンの4人はチケットとパスポート、荷物を持ってチェックインカウンターへ向かった。
「本日はご利用ありがとうございます。」
「あ、お願いします。」
手に持っていたパスポートとチケットを渡す。僕の担当は20代後半の中村という人らしい。
「ハワイにはどのようなご用件で?」
「あ、学校のキャンプで1ヶ月程度。」
「ん、もしかして馬渡学園の生徒さん?」
「はい、そうですが……」
「あら~、こんなこともあるんですね。私も実はそこの卒業生なんです。」
パソコンとにらめっこし、キーボードを打ちながら話し始めた。
「確かSUMMER CAMPって言う名前だったわよね?今でも詳しく覚えているの。とても辛かったわ。」
「あの、具体的にどういうことをしたんですか?」
「それがね……誰にも言っちゃいけないことになってるの。実際に同級生で1人転校になっちゃった子がいるの。あ、荷物預けるのは1つでいい?」
「あ、はい。でもそのこはなぜ?」
「キャンプの内容をほかの人に言い出したかららしいよ。」
「なぜ、そんなに厳しいのだ……
その言葉を聞いて僕が考え事に集中しようとしたら中村さんがパスポートとチケットを返しているところだった。
「手続きは以上で終了ですよ。よいご旅行を。」
「あ、ありがとうございます。」
数歩言ったところで
「仲西君?」呼び止められた。
「最後に一つ先輩からアドバイスをするわ。これをただの旅行と思ったらだめだよ。修行だと思わないと1ヶ月持たないよ。これが私から出来る唯一のアドバイスです。」
そういうと笑顔で手を振ってくれた。僕はお辞儀をしてその場を後にした。