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熱
隣同士。
背中合わせ。
微かに触れた背中、肩、指。
全てから伝わる熱と想い。
『分かってるよ、悔しいね』
そう言って眉を下げて笑えば、君も少し笑ってくれた。
だから僕はいつも君の一番近くで、君を見てきた。
小さな傷も痛みも、どれも半分こにするために。
知らんぷりしても空気で分かった。
君の好きな空間を作った。
『心地いい』
その一言が僕を優しくさせた。
同じ明日を迎える。
それがどれだけ大変か、僕らは知らなかった。
だって同じ明日を何度も見てきたから。
軽く肩を叩く。
同じ目線までしゃがんで。
『行こう?』
人知れず泣いていたんだね。
僕はその跡を見て見ぬふりをした。
手を差し伸べれば、君は笑って手をとった。
それが今は作り笑いでもよかった。
いつか、そう思った。
『ずっとついてきてね』
僕の方を振り返らずに進む。
ひたすらに歩く。
僕がここで立ち止まったら?
でも僕はそんなこと出来ない。
君もそれを分かって振り返らない。
一歩後ろを行く。
君が寂しい時は隣に行く。
立ち止まったときは背中合わせで、後ろを守る。
何も言わないで、ただ。
また同じ朝日を見る。
隣から伝わる熱を感じながら。