ショートメール
何て話しかけていいか分からなくて。
真っ暗な中、私は佇んでいた。
人と人とを簡単に繋げるはずの機器も、
私にとってはもどかしい壁で。
きっと目の前に居て、顔を合わせていたら。
私は貴方に微笑みかけるくらいできるのに。
貴方に好きと思われる自信があるのに。
声を出そうとしても出ない。
貴方との話し方を知らない。
人との関わり方を忘れてしまった。
震える声を隠そうとして、
親指だけで気持ちを伝えようとする。
でもそれも最後のボタン一つ押せない。
たった少しの力だけで届くのに、
押すちっぽけな勇気すら私にはない。
そしてまた私は内容を消した。
『ねえ、届いてる?』
正解か不正解か分からない切り口。
貴方は煩いと手を払うかな。
その払われた手が宙を彷徨うのが怖くて、
私は遠く貴方を想うだけで良いと思ってしまう。
一歩踏み出さなきゃ状況は打開出来ない。
けど嫌われたくないよ、大好きな貴方には。
11文字の鍵は貴方から貰ったものじゃないから。
預けられた鍵を使うには、私は小心者すぎた。
このままでいいよ。
また押し殺して笑う。
大好きだけど、大好きだから。
そう言い聞かせて、我慢するの。
貴方の思い出もない曲で洗い流して、
少しだけ自我修復して。
貴方を忘れることは出来なくても、
それ以上の気持ちは忘れるから。
だけどきっとまた、
貴方への想いが溢れて苦しくなる。