Gimmick Game
駆け引きの夜が明ける。
窓際、貴方に見えないように顔を伏せて溜め息をつく。
乱れない静かな寝息が部屋に響く。
私は遠いネオンを眺めた。
痛みのないレンアイなど無くて。
知ったかぶりして愛を説いた。
確かに私たちは好き合っていて、陳腐な愛の言葉を交わしていたんだ。
それの真偽なんて関係なかった。
傍にいるのが当たり前で、それ以上でも以下でもなく。
だからコイビトなんて立ち位置もあってないような物。
だから互いを蔑ろにしている。
私は彼なんて好きじゃなかった。
ずっとそう言い聞かせてきた。
本物の愛なんてのも要らなかった。
偽物でいい、本物なんて大きくて重すぎる。
愛してくれさえすればいい、それが夜の間だけでも。
私と彼のその関係を、純粋な少年が「可笑しい」と叫んだ。
大人の恋の一種だ、と言っても納得しなかった。
なら、と少年に笑いかけた。
彼から私を奪ってくれる?と。
彼はきっと私を捨てる。愛してたと言って。
だから私を連れ去って、本物の愛でも与えてみてよ。
少年は満面の笑みで頷いた。
触れられた手首がヒリヒリと痛んだ。
キスだけで満足出来たあの頃を、私は忘れてしまった。
気付かないうちに涙が零れる。
目尻を私の好きな指が拭った。
「泣かないで」そう言った彼の方が泣きそうだった。
何のために別れるの?そう瞳で問いかける。
そんなに優しくして、何がいけなかったのだろう。
私は声にならない声で何かを告げようとした。
でも彼が孤独の言葉を口で塞いだ。
最後の夜、駆け引きをする。
どちらが先に切り出すか、相手を見て。
微睡むことすら許されない。
ああ、私の負け。
「もう、終わりにしよう」
優しすぎた。この終わり方も。
彼の方が一枚も二枚も上手だった。
私のプライドが傷つかないように、フられてやるなんて。
夜明けの街に溶ける私。
涙は夜と一緒に置いてきた。
ふと顔を上げると少年が手を伸ばしていて。
「連れ去りにきた」なんてかっこつけて言ってくる。
馬鹿じゃないの、鼻で笑ったけど、私はその手をとる。
思ったより少年は大人で。
前を歩いていた大きな背中にしがみついた。
息を吸い込めば、幸せの匂いがした。