分岐点
パラレルワールド。
知っているようで、知らない世界。
そこの私はただ幸せで。
笑顔溢れる家族が居て。
可愛らしい妹たちも勿論居て。
ごく当たり前の自分の家に住んで。
お洒落に家具が置かれていて。
私の部屋には教科書山積みじゃなく、すっかり綺麗で。
お金持ちじゃなくて、でも貧乏ではなくて。
中の上くらい、地道に稼いだお金はそれなりに。
そして私はお嬢様のように育てられて。
だけど男勝りな強い性格も少し人見知りな性格もそのままで。
趣味を仕事にしていて。
自分の携帯には知らない人のアドレスが沢山あって。
大好きな音楽を聴いて。
大好きな人と共に笑って。
休日には家族と出掛けて。
憧れた都会を歩いて、懐かしい公園で犬と遊んで。
洋服を買って、お母さんと着飾って。
私には無い、知らない世界。
じゃああの家は?
あの出来事は?
学校は?
文化祭は来てたの?
何を知っていて、何を知らないの?
分岐点、私が見なかった道の先。
その先の世界は信じられないほど煌びやか。
居るはずのない姿。
知るはずのない笑顔。
欲しくてたまらない居場所があった。
羨んだ生活はもう私のもの。
異世界の果実を口にしたら最後。
私はもう戻れない。
……じゃあ元の世界は、私は、家族は、どうなったの?