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秋風
カーテンが揺らめく。
目を閉じた私の目蓋に、影が横切る。
肌が感じる切ない季節。
慣れきった匂いはすぐそこにあるのに、
今私を取り巻くのは慣れない日々。
涼しい風が少しずつ紐解く昔の情景が、
苦しいくらいに遠い。
もう一度その季節に触れたくて願った。
目を閉じれば黄昏の君が居た頃。
二度と訪れない、晴れの日。
白い天井は孤独を倍にして、
それを見ないように目を逸らす。
背伸びしてた過去も楽しかった。
今の私は抜け殻かな。
手を伸ばして、指先を見る。
届かない場所の儚い夢を掴んだフリをして。
机の上に放置した、書きかけの日記は、永久に。