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残らず大切な人
少しだけ綺麗になったと感じる部屋で、
私は約束を思い出した。
青色の板の下、
拙い字で書いたあの頃の気持ち。
隠し場所にはうってつけなそこに
私は封印するかのように伏せた。
"一途"なんてそんなたいそうなものじゃない。
そう振り返るには時間が経ちすぎた。
だけど幼い私はその姿だけが切り取られて見えた。
暗い画用紙に貼られた写真が、周りが白く浮かび上がるように。
なくしかけた愛しさは、
思いがけず思い出した。
貴方と違う道を進んだ私の、
寂しさと恐怖が影を呼んだ。
待ってる貴方を先に置いていったのは私だった。
だから私はあの頃の場所に向かって、手を振るんだ。
「置いていってごめん!」
そう叫びながら。
楽しかった思い出だけは後に残したくなくて、
ずっと大事に持っていたよ。
昔から常に置いてかれていた私だけど、
追いついてその思い出を返すまで。
謝りたいことは沢山あるから。