隣に居る君へ
同じ舞台の上。
君は輝いていて、私はふっと笑った。
目配せだけで伝わる暗号。
口角を上げれば、君も柔らかく笑う。
同じ歌を刻んで、違うリズムを刻んで。
なんども冬も氷河期も乗り越えた。
だからいけると確信していた。
そんな無条件で信頼出来る関係を捨てられなくて。
私も君もこの場所、この立ち位置が大事になってしまって。
一歩踏み出すのってこんなに大変だっただろうか。
君の隣にいるのが当たり前。
ただ、それ以上でもそれ以下でもない。
もどかしい距離感は時々、私たちを苦しめた。
心なしか重く感じたマイクを下ろす。
キーンと鳴るのには、いくら時が経っても慣れないものだ。
大きな箱を運んで、自分の気持ちを拡張するのには慣れたのに。
大きな月日は、大事なものを慣らして、大事なことを初々しくした。
季節はずれの雪を思う。
白い雪の中で子供のようにはしゃいだ。
そんな些細な、記憶の端っこにこびり付いた染み程度すら、
私にとっては宝箱にしまうほど。
君がどうかは知らないけれど、綺麗なユニゾンはこれ以上ない。
あんな心地よい音楽は他じゃ生まれないって。
私はずっと思っている。
君の小さな反抗期も、優しい言葉も、突き放した冗談も。
下らない癖も、被った返事も、君との軌跡だと思えば愛しい。
色褪せた音を奏でた、隣にいる君へ。
ずっと大切なシンメトリー。