are you sleeping?
紫煙の向こう、
見慣れた姿。
乱暴に散らかった服をかき集めてから、
無意味なくらい薄く羽織る。
そして硝子越しの貴方の元に行く。
くすぶらせた煙草の匂いがつんと鼻につくし、
煙が気管に入って咽せた。
身体に悪いしやめればと言えば、
分かってると言うかのように笑う。
だけどやめたことなんてない。
終わった後の恒例行事化している。
別に私自身煙草が嫌いな訳ではない。
散々吸う人を傍に置けば慣れもする。
何が嫌と言えばあれだ、
つまりは終わりの合図を示すそれが気に食わなかった。
無気力な身体を無理矢理動かす。
いつもより近い距離に貴方は笑った。
まだ少し長めな煙草を簡易灰皿に入れ、
私の方を向いた。
月が照らした横顔、
素直に綺麗だと思った。
私が何も言わないでいれば、
貴方は腰を抱いて引き寄せる。
そのぽってりした唇が近づいて、
マシュマロに口づけたようなライトな感覚。
小鳥が餌を啄むような、
遊び半分の馴れ合いのキス。
甘い匂いが限りなくゼロに近い場所にあって、
痺れるくらいに酔ってしまった。
マイナスの距離になれなくていいから、
その瞬間だけは私を見てくれればいいのに。
抱きすくめられて首筋に赤い印を残されながら、
私は真夜中の月に願った。
「もう寝ちゃった?」
声に浮上する。
「愛してるよ」
眠気に逆らえずにそのままでいる。
体温が唇に触れる、
微かなそれだけで熱が生まれる。
だけど私を溶かすその唇は、
偽りの愛しか吐かないのでしょう?
「本当に愛してるのに」
この言葉を知っているのは、
貴方自身と温かい月だけ。
すれ違いの恋。
女性は、自分が愛されていないと思ってる。
でも本当は男性が不器用なだけで、ちゃんと愛されているのに。