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好きになってはいけない
手を伸ばした。
好きになってはいけない人がいるとは思わない。
だけど、好きになったら辛い人は沢山いる。
私はその一人に恋してしまったのだと、
ふと目を閉じたときに気づいた。
「ばかみたい、分かってたのに」
白い天井を見上げる。
横になったセミダブルのベッドは、
慣れすぎて今や狭く感じてしまうくらいで。
誰も居ないから、溜め息をついた。
寂しいと思った。
だけど隣には絶対にその姿はなかった。
「ばかみたい」
もう一度呟くと、私は布団を被った。
寝返りをうって横を向いたときに、
ピローに染みを作った何かは無視して。
いつものように夢に出てきますように、
でも明日になったら笑えていますようにと、
心の中で祈りながら丸まった。
「……好きだなあ」
あの横顔を思い浮かべて、
私は目をギュッと瞑ってそれを消した。
「好きになっちゃ、いけない」
何度も言い聞かせて。
私は眠った。