半年のお試し期間
「好きだ」と言われた。
「は?」と答えた。
君の表情を覗き見たら、あまりに悲しそうな顔をしていたから。
思わず肩を引き寄せた。
(何で私に慰めさせんだ、ばか)
気付いてないと思った。
今年の誕生日も誰からも祝われないと思った。
『おめでとう』って今日初めての人の声に、電話越しでも嬉しかった。
「ありがとう」って、素直に笑えた。
(お前如きに泣かされるとか、私ってばか)
調子乗ってふわふわ飛び回ってるから。
ちょっとだけ嫉妬の針が胸を刺した。
だから私は得意の嘘で落とす。
だけど目に見えてるよ、君が扉を開けてどんな顔をするか。
「おめでとう」って、私も君を祝ってあげる。
(主導権は渡すもんか)
「ありがとう!」
悲しみからの泣きそうな表情が一転、嬉しさからの涙が右目から零れた。
そっと親指で拭ってやる。
(私はお前の彼氏かっての)
でもその全身から伝わる喜びに、こんなレンアイもありかなって笑った。
「好き」って一言伝えれば、最高のプレゼントを貰ったように輝き笑う。
リードするようなキスに、前言撤回。
悔しいけど、心地よかった。
(好きになっちゃっただろ、ばーか)