僕と東京と好きな場所
町へ繰り出す。
目的も、目的地すらないまま。
iPodに入っている洋楽が似合いそう
ただそれだけの条件にあてはまる街。
東京の中心部、だけどちょっと外れの小道。
ぽつんと佇む"隠れ家"的お店に引き寄せられた。
店内のBGMは聴いたことのある曲。
懐かしさで溢れる曲は、確かに862曲のうちの1曲で。
木の良い雰囲気な家具、小物。
まるで小洒落たカフェみたいで。
人のあまりいない空間は心地よかった。
苦手なしつこい店員もここには居ないようだ。
銀の皿や木目のスプーン、
目移りしながら次のコーナーへ。
コーヒーメーカーや白い陶器のカップとか。
こんなキッチンの小物だけれど
値札を見たらいっちょまえの値段。
「こんなんじゃ買えないな」って苦笑したのは、
元々買うつもりで来てないのを隠すためで。
見るだけでお腹いっぱいだからいいんだ、と。
白いベッド、茶や黒のシーツ。
可愛いクッションや葉の柄のピロー。
インテリア好きにとって全部欲しくなるようなものが
視界いっぱいに広がる。
やっぱりそれらも東京の値段だったけれど、
「いつか買えればなあ」そう思う。
かかっていた洋楽が、さて何曲めだろう
変わったときに店内を一周し終えた。
「また来るね」
誰が聞くわけでも、誰に言うわけでもなく、
去り際にそう呟いた。
きっと来年ちょっと余裕ができたときに来ても
その店は待っていてくれる。
買おうが買うまいが魅力するモノたちは
待ち続けてくれる。
それが大きくて騒がしい東京の、ある小さな静かなお店。