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Big Sky High  作者: kanoon
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鉄箱と猫髭

走るように空を自由に動く雲。

切れ間からこの天気に相応しくないくらいの青空が覗いている。

黒、灰色、白、青。

まるでたれかの心みたい。私には解らぬ心。

一秒どれだけの速さで旅をしているのだろうか。今見た雲は、すぐ見えなくなる。


幼かった頃、親に「あれはコレに似ているよ」と言うのが楽しみだった。

……お父さん、あれ何に見える?

……お母さん、あれは何の後ろ姿だね。

ああだこうだ、と笑い合う。空には不思議な魔力があると信じていた。

いつの間にか形の崩れた雲に、無常というものは微かに感じていた。

幼き心にも、情緒を解する心を持ち合わせていたはずだと今も思う。


不自然な天気と空気に、見えない猫のヒゲがピリピリしたものだ。

手を翳して風を感じれば、すぐ雨はそこ。だから傘を忘れないようにしなきゃ。

外に立って、今ドキのような短いスカートが風に靡いて捲れるのを手で抑えながら思った。


一瞬晴れて光が差す。私は眩しさに耐えきれず目をそらした。

人の心のようにすぐ変わり行く空模様に、嫌いとも好きとも一概には言えない感情が過ぎった。

そしてまた陰る、晴れる、陰るを繰り返す。


動く鉄箱の中でもまだ、私は空を見上げていた。鉄の中なら雷は襲って来れないと安心しながら。


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