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心音/救い
【心音】
心臓を宥めるように 胸に手を当てる。
今にも壊れそうなこの身体で 果たして何が出来るだろうか。
肺は空気を取り込めず、 喉は声帯を可笑しくし、
胃は食物を拒否しだし、 心臓は全てを狂わせる。
頭は感覚を失わせ、 眼は視界を歪ませる。
この身体は既にもうダメらしい。
崩れた足に力はなく、 右手は強く心臓を鷲掴む。
いっそ止まってしまえばいいのに。
このまま苦しみに沈むくらいなら。
【救い】
花が枯れてまた咲くように。
二人の仲がまた戻ればいい。
美しい花のように、
輝いた日々になればいい。
君が優しく笑って花の世話をする姿が
どうしても頭から離れない。染みのようにこびりつく。
ちゃんと世話してよね。 暫く居ないんだから。
悲しげな顔、寂しげな表情が零れた。
あの花は君に幸せをもたらした?
明るい未来が見えていた?
聞きたいことだらけで、逆に言葉が出なくなる。
温もりも匂いも失せた家で、どうすればいい?
花が重ねた記憶と、
未だ返らずの鍵だけが、
僕の救いだった。