表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Big Sky High  作者: kanoon
10/100

稚拙な空



レンズを向けても

僕はそのシャッターを切れなかった。





青く澄み渡っている空が、

心を鷲掴みにするなんて

昔から分かっていたけれど。

僕はその空に貴方を重ねていたなんて

貴方は思うはずもないでしょう。


そしてただ、

僕がシャッターを切る瞬間を

優しい顔で見つめているんですね。


僕がどんな思いで

レンズ越しの歪み無い空を

自分のものにしようだなんて。


稚拙なデジカメじゃ

貴方の空は映せない。

でも稚拙なレンズで撮し続けた。


けれど貴方と同じなんて無かった。

貴方の空は貴方だけのものだった。

それを否定するかのように、

僕は写真を撮り続けた。


その笑顔が徐々に哀しげに歪んでも、

僕はそれを止めさせる術なんてなく、

代わりに変わり行く空の表情を留めさせる。



景色のどこをとっても綺麗だと思う。

貴方もそうだと笑っていましたね。

その一つ一つから貴方が浮かび上がってくるのです。

でも、僕はシャッターを切れなかった。


綺麗だと思うほど、

貴方を重ねるほど、

写真のような小さい面には収められそうに無かった。


映せば、貴方の見た景色と分からなくなってしまうから。



淡い太陽を僕は隠してしまう。

今日は雲の無い日だった。

やはり雲の僕は傍に居られない

そう実感したから。


一度だけでいい、

貴方の見た世界を僕に見させて下さい。

その夢を、

その空を。



カメラを持つ右手を下ろして、

貴方に向けた。


一度たりとも無い被写体。

冬晴れの空の下

眉を潜めて見上げる姿に、

気付かれないように

シャッターを切った。



景色は撮れない。

人の心も撮れない。

思い出になり得る朧気な姿だけれど

僕は稚拙な空と貴方を

閉じ込めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ