その仕事は
数瞬後。
「ひとつ聞いていいか」
「もちろんだ」
「俺がおこなう仕事は、もうすぐ死ぬ者のそれを伝えるというもの。それでいいか?」
「まあ、凡そ間違いない」
「それをおこなう意味があるのか?」
たとえば、それを知ることによって死を免れるということであれば、それをおこなう理由はある。
だが、免れない死を伝えられてどうなるというのだ。
聡の言葉は言外にそう言っていた。
「それを知り、恐怖に慄きながら死を迎える。それを空の上から眺めているとは天使とやらは随分と趣味が悪いな」
「まあ、それは否定しない」
「だが、すべてがそうとは言えないだろう」
「試みに問うが、おまえの回りで死の直前、告死天使がやってきたという話を聞いたことがあるか?」
「いや。ないな」
「まあ、そうだ。それが一般的であれば、おまえだってもう少し真剣に私の話を聞いただろうし、医者を脅してでも心臓の精密検査をおこなわせただろうからな」
「つまり、そういうことだ」
「俺が選ばれたということか?」
「いや。選ばれたわけではない。ただ……」
「引っ掛かっただけだな」
「引っ掛かった?」
「そうだ。これでも我々は天使。平等に仕事をしている」
「つまり、死が近くなった者、その全員のもとに告死天使は訪れ、その死を告げる」
「だが、その大部分の者は聞いた瞬間、記憶から消える」
「いわゆる夢の中の出来事」
「おまえだって夢のすべてを覚えているわけではないはずだ。そのようにして、告死は忘れられ、その者はやがて死を迎える。だから、先ほどおまえが言ったようにこれからやってくる死の恐怖に震えることはないし、天使に死を告げられたなどと口にすることがないわけだ」
「だが、たまにそうでない者がいる」
「おまえのように」
「我々はそのような者に対して特典を与えている」
「それが、これからおまえがおこなう仕事。そして、その報酬というわけだ」




