その始まり
一之瀬聡。
南北高校二年。
十六歳。
いわゆる普通の男子高校生である。
いや。
言動すべてが軽薄な男子高校生である。
だが、ここに頭脳明晰、運動神経抜群、更にルックスも優れているという要素が加わる。
そうなれば、当然のように女子には人気がある。
そして、同性も、所謂堅物には嫌われるものの、それ以外には相応に好かれ、彼の周りは常に友人が集まるという楽しい高校生ライフを送っていた。
そして、その日。
帰宅した聡はポストを眺めた瞬間、顔を顰める。
聡を不機嫌にしたのは消印のない彼宛ての一通の封筒。
むろん差出人の名もない。
「……天使などと呼ばれ崇められているが、奴らは怠け者で、しかも、性格が最高に悪い。これを見る度にそう思う」
「本来であれば、こんなものはすぐに破り捨てたいところだが……」
聡は開封しないうちからその相手、それからその内容がわかっていた。
生者に対して、寿命が尽きることを伝える。
いわゆる告死。
その手紙はそれをおこなうよう指示するもの。
そして、その手紙を彼のもとに届けたのは天使と呼ばれるこの世にあらざる者。
「その兆候など全くない時にもうすぐ寿命が尽きるなどと言っても、信じる奴など余程の変わり者でもないかぎりいないだろうが。そもそもそれをおこなう必要などあるのか?」
「だいたいそれは自分たちがやればいいことだろうが。それを……」
そこまで言ったところで、聡の言葉が止まる。
そう。
聡はその仕事を自分に押しつける天使を嫌っていた。
むろん、その仕事も。
だが、聡にはその嫌いな者からに命じられるまま、嫌いな仕事をおこなっていた。
なぜ?
聡にはそれを断ることができない事情があった。
その仕事をおこなうこと。
それが生者として聡がこの世界に留まれる条件だったのだ。
「苦労して俺をここまで育ててくれたおふくろのためにこんなところで死ぬわけにはいかないのだ」




