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パーカーって意味わかんねぇ

作者: あかいの
掲載日:2025/11/09

「パーカーほど意味わかんねえ服はねえって思うんだよな」

 そんな意味のわからないことを妹は言った。ああ、いつものが始まった、と俺は悟った。

「『意味わかんない』を服に修飾させんな。お前の言語感覚の方が俺には意味わかんねえよ」

「だって服にフードつけてんだぜ。なんでそんなもの服につけんだよ。どうみたって邪魔だろこれ?邪魔どころか時と場合によっては危険だぜ。敵にこの部分掴まれたら抵抗できないし、さらには両端の紐を引っ張ることで首を絞めることもできる」

「なんでそんな物騒な世界観で生きてんだよ」

「合理性の欠片すらないことこの上なしって感じじゃねえか」

 なんだその独特な言い回しは。まあ、我が妹のやばい言語感覚については置いといて、

「普通に考えて、寒い地域の人が頭を冷やさない為に作られたんだろ?」

「いやいや、それなら大して寒くない地域の人が着ているのは変だろ?冬でもフード被っている人なんてほとんど見かけねえし、その割にはパーカー着ている人は割とたくさんいる。これっていわゆる矛盾ってやつに他ならねえんじゃねえか?」

「まあ日本の場合だと、フード被っていると不審者に思われたりするからな。そういう社会的影響はあるんだろう。あと、耳当てとかマフラーすれば何とかしのげるぐらいの寒さってのもあるんだろうが」

「そしたら役にたたないフードは消えてるのが普通だろ?」

「形骸化したんだろ。機能を失っても何となく捨てきれず残った。その程度のことだろう。人間は合理的な生き物ではない、ただそれだけの話かもしれんが」

 俺はテキトウに思いついたことを適当に言った。

「でもなんでもかんでも形骸化するわけじゃねえだろ?フードが形骸化したのにはそれなりの理由があるはずじゃねえか?」

「そんなこと俺に聞くな。俺はパーカーの専門家でなければ歴史の専門家でもない」

「兄貴、そう言って思考を止めるのは良くないことだぜ。もっと想像力を働かせねえと。偉大なる人類の進歩というのは、すべて想像力によってなされたといっても過言じゃねえんだぜ」

「ならその想像力とやらを少しでも働かせて、TPOわきまえることを覚えろ」

 今更にはなるが、俺たちが今議論してるこの場所は試着室の前だったりする。店頭に飾られたパーカーをみて「なにこれ可愛い!!」とはしゃいだ妹に付き合っているわけだが、

「それで、今着てるそれは買うのか?」

「う〜ん、着てみたらやっぱ微妙って感じかな。兄貴が買ってくれるのなら買うけど」

「その程度の評価の物で兄をたかるな。せめてもっと気に入った物にしろ」

「つまり、今日は奢ってくれるということでござんすか?!」

「次の店で決めるなら考えてやってもいい」

「それは保証しかねる!!」

「少しは留意してくれ」

 それにしても、たかがフードがついてるだけの服をなぜ可愛いと思ったりするのか。俺からしたらそのことが最も意味わからないことだ。釈ではあるが、初めに妹が言った『パーカーは意味わかんねえ服』というのが結論なのだろうか?

「よし兄貴!次はあっちの店いくぞー!」

「へいへい。おおせのままに」

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