パーカーって意味わかんねぇ
「パーカーほど意味わかんねえ服はねえって思うんだよな」
そんな意味のわからないことを妹は言った。ああ、いつものが始まった、と俺は悟った。
「『意味わかんない』を服に修飾させんな。お前の言語感覚の方が俺には意味わかんねえよ」
「だって服にフードつけてんだぜ。なんでそんなもの服につけんだよ。どうみたって邪魔だろこれ?邪魔どころか時と場合によっては危険だぜ。敵にこの部分掴まれたら抵抗できないし、さらには両端の紐を引っ張ることで首を絞めることもできる」
「なんでそんな物騒な世界観で生きてんだよ」
「合理性の欠片すらないことこの上なしって感じじゃねえか」
なんだその独特な言い回しは。まあ、我が妹のやばい言語感覚については置いといて、
「普通に考えて、寒い地域の人が頭を冷やさない為に作られたんだろ?」
「いやいや、それなら大して寒くない地域の人が着ているのは変だろ?冬でもフード被っている人なんてほとんど見かけねえし、その割にはパーカー着ている人は割とたくさんいる。これっていわゆる矛盾ってやつに他ならねえんじゃねえか?」
「まあ日本の場合だと、フード被っていると不審者に思われたりするからな。そういう社会的影響はあるんだろう。あと、耳当てとかマフラーすれば何とかしのげるぐらいの寒さってのもあるんだろうが」
「そしたら役にたたないフードは消えてるのが普通だろ?」
「形骸化したんだろ。機能を失っても何となく捨てきれず残った。その程度のことだろう。人間は合理的な生き物ではない、ただそれだけの話かもしれんが」
俺はテキトウに思いついたことを適当に言った。
「でもなんでもかんでも形骸化するわけじゃねえだろ?フードが形骸化したのにはそれなりの理由があるはずじゃねえか?」
「そんなこと俺に聞くな。俺はパーカーの専門家でなければ歴史の専門家でもない」
「兄貴、そう言って思考を止めるのは良くないことだぜ。もっと想像力を働かせねえと。偉大なる人類の進歩というのは、すべて想像力によってなされたといっても過言じゃねえんだぜ」
「ならその想像力とやらを少しでも働かせて、TPOわきまえることを覚えろ」
今更にはなるが、俺たちが今議論してるこの場所は試着室の前だったりする。店頭に飾られたパーカーをみて「なにこれ可愛い!!」とはしゃいだ妹に付き合っているわけだが、
「それで、今着てるそれは買うのか?」
「う〜ん、着てみたらやっぱ微妙って感じかな。兄貴が買ってくれるのなら買うけど」
「その程度の評価の物で兄をたかるな。せめてもっと気に入った物にしろ」
「つまり、今日は奢ってくれるということでござんすか?!」
「次の店で決めるなら考えてやってもいい」
「それは保証しかねる!!」
「少しは留意してくれ」
それにしても、たかがフードがついてるだけの服をなぜ可愛いと思ったりするのか。俺からしたらそのことが最も意味わからないことだ。釈ではあるが、初めに妹が言った『パーカーは意味わかんねえ服』というのが結論なのだろうか?
「よし兄貴!次はあっちの店いくぞー!」
「へいへい。おおせのままに」




