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異世界に転生して35年。追放令嬢を支えた伝説の鍛冶師~寂れた街を再生するスローライフ~  作者: わんた


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夫婦の共同作業

「人間のクセに……」


 押されているのが気に入らないようで、悪魔は俺を睨みつけている。


 空を飛ぼうにも片方の羽に大きな切り傷ができてるので難しいようだ。


 逃げられないよう、慎重に間合いを詰めながら近づくと、悪魔の体内にある魔力が爆発的に増大した。


「我を舐めるなよ!!」


 一瞬にして肌が漆黒のように黒くなり、目が金色に光る。何らかの異常状態を発生する効果があったようだが、俺が身につけているレジストリングによって弾いたようだ。


 状態異常などの小細工は通用しない。


 俺を倒したいなら真っ正面から叩き潰すしかないぞ!


 悪魔が手を前に出す。魔法を使うつもりらしい。


「これで死ね! 『ファイヤーストーム!』」


 魔法名を言ったことで威力が増大したみたいだ。火炎の竜巻が俺に向かってくるが、わかっていれば対処のしようはある。横に飛んで回避する。


「まだだ!」


 腕を横に動かして炎の竜巻が追随してきた。


 絶対に逃がさないという意志を感じるが、アーティファクトで強化された肉体にとっては動きが遅すぎる。


 跳躍すると建物に乗って回避して、追ってきたのでまた移動をして避ける。周囲に被害が出そうな動きをしているが、クラリッサがカイトシールドに魔力を送って、いくつもの盾を周囲に浮かべて衛兵や冒険者を守っているので、人的被害は出ていない。


 建物については……後で直すしかない。クラリッサが補償をしてくれると期待して、こればっかりは諦めてもらうしかないだろう。


 敵の動きはよくわかったので、左右に動きながら悪魔に近づく。


 懐に入ってしまえば炎の竜巻も怖くはない。


 グレートソードを振るって残っていた腕も斬り落とした。それと同時に炎の竜巻も消える。


 体ごと斬り落とすつもりだったんだが避けられてしまったようだ。斬ったときの感触も硬かったので、肌色が変わったことでパワーアップしているみたいである。それでも俺の能力を凌駕するほどではない。


 悪魔はバックステップで俺から距離を取った。


「どうして……人間ごときに押されるんだ……」


 能力からして、街を一つ滅ぼすぐらいの力は持っているのは間違いない。


 俺がいなければヴァルモントは全滅していただろう。そのぐらい驚異的な力を持っているのだが、運が悪かったな。


「お前が弱いだけだろ。気にするな」

「ぐっ…………」


 事実なだけに反論はなかった。


 さてこのまま殺してもいいんだが、少しばかり気がかりが残るな。


 グレートソードに回していた魔力量を減らして理性を強くさせる。これで少しは会話する時間を作れるだろう。


「悪魔の書は誰に使えと言われたんだ?」

「さぁ、誰だと思う」


 話ながら悪魔は体内の魔力を練っているようだ。デカい魔法を使う準備をしていて、発動には時間がかかるから会話に乗っているんだろう。


 カイトシールドを持ったクラリッサが俺の隣に立った。アリシアは後方で衛兵の避難を進めている。指揮権を渡したみたいだ。


「わたくしも戦いますわ」

「それは心強いです」


 実際、魔法を使われたとき頼りになるからな。


 俺は再び悪魔を見る。


「デシアン子爵だろ?」

「当たりだ。この女の主人は別だったようだが、デシアン子爵という男に読めと言われて我と契約したのだ」


 悪魔にとって人間界の事情はどうでもいいのだろう。あっさりと白状をしてくれた。


「であれば、責任を取ってもらわないといけませんわね」


 本人からの証言を得られたんだ。


 街の復興に必要な金は出してもらおう。


「同感です。たっぷりと金を出してもらいましょう」


 俺とクラリッサは悪魔を前にして笑顔だ。


 敵はそれが気に入らないらしい。


 魔力も十分に高まったようで、そろそろ魔法を発動させるつもりなんだろう。


「我を追い詰めたのは褒めてやるが、慢心しすぎだ。この攻撃に耐えられるものなら耐えてみろ!」


 口を大きく開いた。悪魔の喉の奥が光る。ドラゴンのようなブレスをするつもりらしい。


 グレートソードを地面に突き立てて、クラリッサが持っているカイトシールドに手を添える。


「ガルド?」

「念のためです。俺の魔力も使いましょう」

「共同作業って訳ね! 夫婦らしくなってきたわ!」


 まだ俺と結婚するアイデアを諦めてなかったのか!?


 何度も言われると本当に結婚しちゃうんじゃないかって恐怖を覚える。俺にはリリィがいるので、誰かと添い遂げるつもりはないんだけどな。


 話している間に魔力の収束が終わったようで、悪魔の口から光線のようなブレスが吐かれた。


 高熱のようで地面が溶けて空気が歪んでいる。


 カイトシールドで受け止めるべきではないと判断し、少し傾けるようにする。


 光線は受け流されて上空へ進み雲を突き破った。


 一分以上にわたる光線がついに止まると、周囲は高温によって湯気が出ていた。


 魔力を使い切ったようで悪魔は膝を突いて、息が荒い。力尽きた様子だ。


「強力な攻撃だったけど……無事のようね。この盾すごいわ」


 悪魔の光線を受けきったカイトシールドは無傷のままだった。魔力による保護があったので傷一つもない。


 周囲が熱で溶けているのに俺たちの周りだけは元通りなので、クラリッサは驚いていた。

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