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異世界に転生して35年。追放令嬢を支えた伝説の鍛冶師~寂れた街を再生するスローライフ~  作者: わんた


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急な来訪

 急ぎであっても、普通は数日前に来訪の連絡をする。


 数時間前というのは明らかにおかしい。異常事態と言っても過言ではないだろう。


 嫌な予感がする。


 裏にいるマティルダ王妃、表で動くデシアン子爵。


 シナリオを抜け出そうとする俺たちを絡め取ろうとする手が迫っているんじゃないか。


「それで、ガルドさんの考えを教えてもらえませんか?」


 同席は許可されたが狙いを聞かれてしまった。


 信頼されているが無条件ではないってことなんだろう。


 当然の判断だ。このぐらいの慎重さはあるべきだ。


「冒険者を使って治安を悪化させていたのはデシアン子爵の配下だと思われます。そいつらは排除したので、次の一手を打ってきたのかもしれません。貴族の汚い手は何度も見てきたので、何かあればアドバイスはできるかと思います」


 アーティファクトを作っていたとき、策略に巻き込まれたこともあった。


 あいつらは自分の利益のためなら、人をゴミ以下の扱いをする。村一つ潰すなんて当然のようにやるし、平民への裏切りだって日常茶飯事だ。特に今は次期国王争いをしているので、過激になりやすい次期である。


 何をしてきたって驚くことはない。


「執事として部屋の隅に配置するのが限界です。それ以上はデシアン子爵に怪しまれます。いいですか?」


 さすがに同じ席には座れないか。ギリギリ妥協してくれたラインなんだろう。


 拒否すれば話を聞く機会はなくなるので同意するしかなかった。


「それでお願いします」

「では、急いで準備をしましょう」


 クラリッサがアリシアに視線を送ると、すぐに動き出した。


 俺は長く使われることなくしまわれていた燕尾服に着替えさせられて、髪の毛をオールバックにされる。さらに歳を取ったようなメイクをして、付けひげまで装着した。


 相手は貴族なので、アーティファクトを作っていたガルドだとバレないよう、年齢を変えた変装をしたのだ。


 子爵程度と関わり合った記憶はないのだが、念には念を入れての対応である。


 鏡に映った自分は、リリィが見ても俺だとは思わないだろう。ただメイクは取れやすいので注意しなければならない。クラリッサに言われたとおり近づくのは厳禁だな。


「すごい技術ですね」

「このぐらい誰でもできますよ」


 謙遜しすぎだ。家事全般をする普通のメイドができることじゃない。王侯貴族の元で働く侍女だって、できる人はすくないんじゃないかな。


 そのぐらいの素晴らしい技術だと感じている。


「デシアン子爵の接待は私がやりますので、ガルドさんはドアの開け閉めだけをお願いできますか?」

「わかりました。注意することはありますか?」

「できるだけ音を立てないのと、早く開けすぎないことぐらいですかね」


 これだけなら俺でも何とかできそうな気がする。


 アリシアは他の準備があると出て行ってしまったので、俺は会合に使うと教えられた部屋の前に立った。


 手を後ろに回して背筋を伸ばして待つ。


 しばらく暇をしていると、外が騒がしくなった。デシアン子爵が来たのだろう。


 旅の汚れを落とし、疲れを癒やしてから会談とはならない。すぐに来るはずだ。


 立ったままでいると俺が予想したとおりにデシアン子爵とクラリッサが来た。


 ドアの前で立ち止まってくれたので、静かにドアを開ける。


 通り過ぎるときにデシアン子爵が俺を見た気がするが、目新しい使用人だからだろう。


 部屋に入ったのを確認して俺も中に入りドアを閉める。


 これで話を聴ける準備は整った。


 タイミング良く銀のカートを押してきたアリシアと見知らぬメイドも来て、紅茶と軽食を用意すると会談が始まった。


「新しく使用人を増やしたのかい?」

 

 アリシアや他のメイドもいるのだが、俺だけを警戒している様に見える。


「以前ご注意いただいたとおり最近は少し手が回らなくなりまして、新しくお人をお迎えいたしましたの。とても信頼できる方ですので、ご心配には及びませんわ」

「ふむ。クラリッサ嬢がそこまで言うなら気にせず話を進めよう」

 

 領主であっても、問題を起こしてないのに使用人の雇用までは口を出さないか。


 どのような話をするのか気になって耳を傾ける。


「ダンジョン運営は順調なようだが、治安も大丈夫かね」

「衛兵の採用も進めておりますし、もうすぐ問題は解決する見込みですわ」

「魔石の産出もかね?」

「はい。冒険者の質がよくなったので、当初の予定より多く手に入っております」

「順調でなによりだ」


 言葉とは違ってデシアン子爵は不満そうだ。


 背もたれに寄りかかり軽食として用意された、バターが乗ったパンを口に入れた。


 味には満足しているようで文句は出ない。紅茶を一口飲むと、デシアン子爵は話を続ける。


「マティルダ王妃から代官に君を推薦されたときは不安だったが、よくやってくれている。助かるよ」

「過分な評価痛み入りますわ」


 座りながらクラリッサは軽く頭を下げた。


 褒めているのであれば、俺が懸念していた悪魔の契約とは関係ない用件で来たのか?


 挨拶代わりの話題だけじゃ真意が見えてこない。


 油断してはいけない。慎重に推移を見守ろう。

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