資源になりそう?
「ガァァァ!!」
前に出た俺に向けて巨人がグレートソードを振り下ろした。
俺は剣を横にするとまともに受け止める。激しい衝撃を受けたが、刀身は曲がることもなく欠けてもいない。また俺も力負けはしなかったので、余裕で耐えている。
一度でダメなら何度でもと考えたんだろう。巨人はグレートソードを振り上げ、また振り下ろす。
金属のぶつかり合う音が数度聞こえると、刀身にヒビが入ってくだけた。
もちろん、壊れたのは巨人の方だ。俺が持っているグレートソードは新品と変わらないほど傷は付いていない。
「武器がなくなったなら素手でかかってこい」
戦意向上の効果があるため、俺はいつにもなく好戦的だ。
いつでも殺せるのに動かず、相手の出方を待つ。
「グガァァッッ!!」
舐められたのがわかったようで、巨人は顔を真っ赤にさせながら蹴りを放ってきた。
回避するまでもない。グレートソードを振るって足を切断し、軸足の膝を蹴ってへし折る。仰向けに倒れたので上に乗ると顔に突き刺した。
一瞬の痙攣をして巨人は絶命すると、魔石だけを残して消える。
完勝だが物足りない。もう少し歯ごたえのある獲物が欲しいところだ。
「パパすごい!!」
血なまぐさい光景を見せてしまったんだが、リリィは感動している。
義娘の前でカッコイイ姿を見せられて俺は満足だ。
戦闘中に発生していた高揚感は薄まって正気に戻る。
グレートソードをしまい、魔石を拾い上げるとアリシアに渡す。
「街を運営する足しにしてください」
「ありがとうございます」
素直に受け取ってくれたので、俺たちは移動を再開した。
広いエリアの奥まで着くと細い通路があった。先頭をクラリッサのまま一列で進む。
ゴブリンが出てきたが囲まれる心配のない場所であるため、俺たちは手伝わずクラリッサが倒してしまった。後ろにいるアリシアが魔石を拾うから、何もすることがない。
数時間進んでダンジョンになれてきたので、先頭をルカスやシア、そしてリリィにまで変えてから戦闘経験を積ませて順調に探索を進めると、小部屋を見つけたので俺たちは休憩を取ることにした。
ランタンを中心に置いて円を描くように座り、持ってきた保存食をみんなで食べている。
「巨人には驚きましたが、それ以外の魔物は弱いですわね」
初めての干し肉を悪戦苦闘しながら食べているクラリッサは、どこか楽しそうにしながら言った。
窮屈な書類仕事よりも体を動かす方が好きなのだろうか。
「浅い階層では弱い魔物が出てくるのが普通です。巨人はイレギュラーだと考えれば、通常のダンジョンと変わりないですね」
「それはいいことなのかしら?」
「入り口から強い魔物が出るダンジョンは冒険者に嫌われます。よいことだと思いますよ」
俺がお墨付きを出すとクラリッサは、ほっとした顔になった。
「資源として活用できそう、ってことよね」
「冒険者が来るのに多少の時間は必要だと思いますが、間違いなく集まってきますね」
ダンジョン発見の情報は冒険者ギルドが持つ馬車に手紙を載せて、各地に広がっていく。
移動時間を考えれば最短で10日、遅くても30日ほどで最初の冒険者が来るんじゃないだろうか。そうすれば魔石が産出できるようになり、他の領地へ輸出も可能だ。
資金難は解消されて人は集まるのだから、ヴァルモントが復活すると表現しても過言じゃない。
「そうするとシアちゃんのライバルが増えるの?」
「冒険者が増えれば、そうなるな」
「それは困ったね……」
為政者レベルではいいことでも末端の冒険者だと歓迎できないこともある。
ルカスやシアは駆け出しなので、余所から流れてきた冒険者に食い扶持を取られてしまう。
弱肉強食がこの世界の常だ。こればっかりは仕方がない。
慰めるように愛らしいリリィの頭を撫でながら、二人に向かってアドバイスを送る。
「ライバルが増えたからと言って無理だけはするな。装備が整うまでは堅実に稼ぐんだぞ」
「わかりました」
しっかりと俺の言葉を受け止めてくれたみたいだ。ルカスとシアなら無謀なことはしないと思える。大丈夫だろう。
「は~~。こういう師弟愛みたいなのいいわ~」
このお嬢様は何を言っているんだ。
「そうですね。和みます」
違った。メイドも同じだった。
「別にルカスたちは弟子ではありませんよ」
「それなのにアドバイスをしているの?」
「常連客なので長生きしてほしいんです」
「そう言って心配しているのね。素直じゃないの」
うっ……。それを言われると反論できない。
リリィが仲良くしていることもあって、客以上の感情を抱いているのは間違いないからな。
これ以上からかわれても困るので、話題を変えよう。
「一階に出現する魔物もわかったので、仮眠を取ってから戻りましょうか」
「わたくしは元気ですわよ?」
「他のメンバーは、そうでもありません」
リリィに視線を向けると、うつらうつらと眠そうにしていた。
種族的に竜人は体力があるが子供だからな。数時間の探索で限界が来てしまったのだ。
またルカスやシアも普段とは違う環境での探索で緊張していたはずだ。いつも以上に疲労が溜まっていると思うので、二人も休めさせたかった。
「あら、そのようですわね」
足手まといだと機嫌を悪くすることはなく、素直に俺の提案を受け入れてくれたようだ。
大人が三交代制で警戒をしつつ休憩をすると、誰も怪我をすることなくダンジョンから出ることにした。




