表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波と炎は恋に落ちる-継承者ネライアの異世界予言録-  作者: NOVENG MUSiQ
第1章 波は名を、炎は心を――覚醒前夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/48

第2話 ネライアという名前

 王都アクア=リギアは、運河が巨木の根のように絡む海上都市だった。水面に浮かぶ大理石の回廊、雲を映す尖塔、潮風に揺れる色とりどりの帆布。そこに立つと、かつての“私”はとうに遠い。


「ネライア」

――新しい名は舌の上で波のように転がる。そこには“不確かな自分”を塩で洗い流す感触があった。


 女王の私室で差し出されたミルク色の飲み物は、舌に乗せた瞬間ふわりと潮の香りを弾けさせた。

「次代の女王候補として、礼儀と統治学を学んでいただきます」

 エルフィラの言葉は柔らかくも逃げ場を与えない。

“普通でいたい”と“何者かになりたい”――相反する欲望が胸で泡立つ。


 講義室では老魔導士たちが古代語の詠唱を教え、武芸場では騎士が木剣を振るう。私はそれらを“初めてなのに懐かしい”と感じた。筋肉が動きを思い出す前に、心が動きを知っていた。まるで以前――いや、前世としか呼べぬどこかで、同じ波形を辿っていたかのように。


 夜。専用塔室のバルコニーから見下ろす星の海。私は手すりを握り、囁く。

「私は誰になるためにここへ来たの?」

 潮騒は答えず、月だけが銀のトライデントを描くように光を屈折させていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ