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 その後、私たちはお菓子を買いにレアおすすめの店へと向かった。


 レアの地図通り、店から目と鼻の先にあるその菓子店は賑わっていた。

 焼き菓子やケーキなどがずらりとならんでおり、甘い香りに笑みが溢れる。


「どれも美味しそうで迷ってしまいますね」

「どれでも好きな物を選ぶといい。せっかくだから使用人達にも買っていこう」

「そんな、ここは私のお給料で買わせてください!」

「それは何があったときにとっておくといい」

「ですが……」

「また今度ミラに買ってもらおう」

「……何からなにまですみません。ありがとうございます」


 デューク様が買ってくださるという。お言葉に甘えて、日持ちしそうな焼き菓子を何点か選び購入することにした。この後も行きたい場所があるというので、ケーキはまたの機会にする。


 メニュー表を見ていて気付いたのだが、店内限定でパフェも食べられるという。フルーツがふんだんに使われたものや、生クリームやアイスがメインのものもあり、美味しそうだ。


「私が行きたいところはまだ時間が早い。せっかくだから休憩して行こうか」

「本当ですか?デューク様がよければ……」


 店員に店内での飲食を希望していることを伝えると、タイミングよく席が空いていたようで、すんなりと案内される。


「ミラはどれがいいんだ」

「ええと、このフルーツのパフェとアイスので迷っていて、少し悩みますね」

「それならば、二つ頼んで一緒に分けよう」

「いいのですか?デューク様も食べたいものがあるのではないでしょうか」

「今日はミラに楽しんでもらうために王都を案内すると決めている。だから遠慮せずに好きな物を頼むといい。ケーキも食べるか?」

「とても魅力的ですが、流石に食べきれません」


 そう伝えるとデューク様は楽しそうに笑った。デューク様はその後店員にすぐに注文内容を伝え、飲み物がすぐに運ばれてくる。

 パフェは注文が入ってからフルーツをカットしたり盛り付けたりするため、提供まで時間がかかるということだった。


 私はほとんどの時間を監視されて過ごしていた。こうして街で食べるのも初めてのこと。デューク様は王族だというのに、随分慣れているようだ。


「どうかしたか」


 じっと見ていたことが伝わってしまったようで、慌てて今考えていたことを伝える。


「私は今までの暮らしでほとんど自由がなかったので、こうして街で何かを食べることも買い物をすることもすごく新鮮なのです。デューク様は手慣れていて、よく街に来られるのだなと思っていたところでした」

「そういうことか。まあ私も子供の頃はもっと監視の目があったが、それを掻い潜って街に来たりしていたよ。あの串焼きの肉もそうだ。そういう時にグレイグと食べた」

「そうなのですね。デューク様もさぼって街へ行ったりすることがあったのですね、なんだか意外です」


 デューク様の幼い頃はどんな感じだったのだろうかと興味が湧いた。


「この店もいい雰囲気の店だな。元々知っていたのか?」

「いえ、先ほどレアから教えていただいたのです。子供たちにお菓子を買っていきたいと思っていたので、この辺のおすすめの店はないかと。そしたらここを紹介してくださったのです」

「そうだったか。レアはかなりの甘党だ。今度礼に何か菓子でも差し入れをしよう」


 レアが尻尾をぶんぶん振りながらお菓子を食べる姿を想像してきっと可愛いのだろうなと考えていると、目の前にパフェが運ばれてきた。


「お待たせいたしました。こちらが、季節のフルーツパフェと、アイスと生クリームのパフェです」


「見た目もとても綺麗ですね」

「そうだな」


 目の前に置かれた2つのパフェは、それぞれ異なる魅力を放っていた。フルーツのパフェは華やかな盛り付けになっており、イチゴ、ブルーベリー、オレンジが鮮やかに散りばめられている。

一方、アイスと生クリームのパフェは滑らかな色調で統一され、雪のような白いクリームとアイスの層が見事に重なっている。


「ミラ、好きな方から食べていいぞ」

「ありがとうございます、それでは、このフルーツのパフェから」


 甘酸っぱいフルーツの酸味と、生クリームがあわさり口の中で溶けていく。


「美味しいか?」

「はい、とても」


 私がケーキを食べていると、デューク様が優しく微笑みながら私の顔を覗き込んできた。デューク様ももう一つのパフェを食べたようで、美味しいなという声が聞こえてきた。


「ほら、ここについている」

「え……?」


 そっと手が伸びてきて、私の口元についていた生クリームをとってくれた。その生クリームを、デューク様はペロリと舐めた。


 何も言わないデューク様からしたら、これが普通だというのだろうか。思わず固まってしまう。


「食べないのか?」

「食べ、食べます!」


 デューク様からしたらなんでもないことなのかもしれない。けれど、私からしたら、私の口元についていた生クリームを自分で食べるだなんて……恥ずかしい。

 もたもたとしていると、デューク様が掬ってスプーンをこちらへ差し出してくる。


「ほら、こっちも食べたいって言ってただろう」

「えっ!?」

「ほら、早く食べないと溶けるぞ」

「うぅ……ありがとうございます」


 少し躊躇うもデューク様の厚意に甘えることにした。口を開けるとゆっくりとパフェのアイスと生クリームが口の中に入ってくる。


「こっちも美味しいだろう?」

「はい、美味しいです」


 緊張と照れで、正直どんな味かよく分からなかった。デューク様は私の気持ちを知ってか知らずか楽しそうに微笑まれる。本当にデートしているみたいだと思ってしまった。


 帰る前に寄りたい場所があると、デューク様に連れられて向かったのは、この王都全体を一望できる塔だった。ここは防衛のためにつくられたもので、王家の管轄の元騎士が常駐で見張りをしている。


 塔の一部には、限られた者が立ち入りを許された部屋がある。そこからは街を見渡すことができると人気があるそうだ。そこへデューク様が連れてきてくれた。


「ここから街を一望できるんだ。あそこに城があって、あっちが私の屋敷のあたりだな。今いたカフェがあそこに見える」

「本当ですね、全部小さくてなんだか不思議な感じです」


 さっきまでいた場所もこうして高いところから見下ろすことでまた違った見え方をする。行き交う人の流れを目で追う。誰かがここで暮らしているということが実感させられた。


「ちょうど夕日が沈む頃だ」


 夕日に照らされた街並みはとても綺麗で、言葉も忘れて見入ってしまった。


「とても綺麗です」

「それならよかった、私の暮らす守るべき国だ。それをミラにも見せたいと思ったからここに連れてきた」


 デューク様はこの国の王子としての役目がある。そんな大切なものを、私と共有したいと思ってくれたことが純粋に嬉しかった。


「今日は本当にありがとうございました、とても楽しい時間を過ごせました」

「それならよかった。またこうしてデートしよう」


「いえ、その……デートって」

「ああ、そのつもりだったが、ミラは違ったか?」

「いえ、光栄です。ただそう直接言われると驚いてしまって」

「ちゃんと伝えていない私が悪かった。次もまたデートしよう。近いうちに誘うから」

「はい、楽しみにしています」


 デューク様にどんどん惹かれていく自分がいる。欲張ってはいけないのに。デューク様にはいつか番がみつかるかもしれない。それでも、まだここにいてもいいのだと次の約束が嬉しかった。彼の隣にはに居られる時間を大切にしようと思った。

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