死神アプリ
高校生の皐月は、クラスの友人たちと他愛もない日常を過ごしていた。ある日、噂好きのクラスメイト、吉田がSNSで話題の「死神アプリ」について語り始めた。「そのアプリを入れて『死ね』とメッセージを送ると、相手の死体が届くらしいぜ」と笑いながら話す吉田に、女子たちは半信半疑で反応する。友人の結衣は、怖いもの知らずの皐月に「試してみなよ!」とからかう。皐月は「どうせネットのネタでしょ」と軽く流したが、オカルトの種明かしが好きな彼女は内心興味をそそられていた。
帰宅後、皐月はX(旧Twitter)で「#死神アプリ」を検索。関連ツイートは「やばい」「本当に死んだ」「消し方」「助けて」といった不穏な内容ばかりだったが、どれもアカウントが凍結されており、詳細は不明だった。好奇心に駆られた皐月はアプリストアで「死神アプリ」をインストール。だが、アプリは開かず、ただの不良品かウイルスかと苛立つ。試行錯誤しても削除できず、画面が赤く染まる異常な挙動に不安を覚えつつ、皐月は「機種変更すればいいか」と放置し、その日は眠りについた。
最初の犠牲者
休日の翌朝、気分が重いままの皐月は、学校のLINEグループで愚痴をこぼす。「あの噂試したらウイルスかかったんだけど、最悪」と送信すると、吉田が「マジか、ヤバいな」と返し、結衣が軽く笑う。苛立ちを抑えきれず、皐月は思わず「まじだりぃ…死ねよ」とグループに送信。直後、背後で「バツン」という異音が響き、インターホンが鳴り響く。恐る恐る確認すると、そこには吉田が立っていた。
「脅かさないでよ」と笑いつつ玄関を開けた瞬間、吉田の身体がバラバラに崩れ落ち、血と肉が床に散乱。皐月は絶叫し、警察を呼ぶが、駆けつけた警察官が玄関を確認すると、血も死体も消えていた。「大人をからかうなよ」と笑われ、皐月は混乱と恐怖に震える。「夢? 幻覚? 私がおかしくなったの?」と自問する中、グループLINEを確認すると、吉田の存在が跡形もなく消え、誰も彼を覚えていない。皐月は「死神アプリ」の噂が本当だと確信し、アプリの削除を試みるが、どうやっても消えない。
親友の死
動揺しつつ学校へ向かった皐月は、目の下にクマを作りながら授業を受けるが、頭は昨日の出来事で一杯だった。放課後、隣のクラスの親友、まどかに相談。まどかは皐月の話を真剣に聞き、「吉田って人は知らないけど、もし本当なら怖いね」と答える。まどかも吉田の存在を覚えていないことに皐月は絶望するが、まどかの優しさに慰められる。まどかは「私がグループに入れば、噂が本当か確かめられるよ。怖がらなくていいから」と提案。皐月は断りきれず、まどかをグループに招待する。
『ほらね、これで大丈夫だからね』
まどかが声をかけグループに参加した直後、彼女の首が突然吹き飛び、血が噴き出す。皐月は絶叫し、学校から逃げ出した。河川敷の橋の下で、血に染まったスマホを手に「全部コイツのせいだ!」と叫び、憎しみを込めてスマホをコンクリートに叩きつける。
すると画面のヒビから血が溢れ、鴉が不気味に鳴く。皐月はスマホを川に投げ捨て、家に逃げ帰る。「これで終わるはず」と自分を励ますが、胸騒ぎが消えない。
終わらない悪夢
家に帰ると、違和感に襲われる。自分の家なのに、どこか異様な雰囲気が漂う。自室から鳥の羽音が聞こえ、恐る恐るドアを開けると、ベッドの上で鴉がまどかの頭部をついばんでいた。皐月は泣き叫びながら鴉を追い払い、頭部を抱きしめる。ベッドには、川に捨てたはずのスマホが濡れたまま転がっていた。突然、スマホが鳴り響き、まどかからの不在着信が連続で表示される。電源を切っても着信音は止まらず、恐怖に耐えられず皐月は気を失った。
目を覚ました皐月は、変わり果てた日常の中で生き続ける。死神アプリは削除できず、彼女の周囲では不可解な出来事が続く。吉田やまどかの死は現実だったのか、幻覚だったのか、誰も覚えていない。警察も、友人たちも、異常を認めない。皐月はアプリの正体や仕組みを突き止めようと試みるが、手がかりはなく、ネット上の情報も凍結や削除で途絶えている。彼女の心は恐怖と後悔に苛まれ、孤立していく。
死神アプリは今なお謎のまま。皐月のスマホには赤い画面が点滅し続け、鴉の鳴き声が遠くで響く。彼女はただ、終わらない悪夢の中で彷徨い続けるしかなかった。