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癖の強いチームメイト

「ここが今回のゲームの会場です。チームメイトの皆様と、ゲーム開始までしばらくお待ちください」


 そう案内されたのは、地下深くのとある部屋の前だった。

 少年――山田和樹は、丁寧なスタッフに付き添われ、ようやくその場所にたどり着いた。


 ここまでの道のりは、やたらと長かった。

 指定された待ち合わせ場所で何時間も待たされ、そのあと乗せられたのは、外の景色が一切見えないバス。窓は黒く塗られ、ただただ時間だけが過ぎていく。

 やっと着いたと思ったら、建物の地下十階までエレベーターで降ろされ、そこからさらに階段で五階分。長旅にもほどがある。


「……よし、頑張るか」


 すでに疲労感はかなりきていたが、気合を入れ直す。

 今日は大事な日だ。

 ――絶対に負けられない。妹のために、何としてでも勝たなければならない。


 気持ちを奮い立たせ、重いドアを開ける。

 すると、室内にいた四人の視線が一斉にこちらへ向いた。


    ***


 部屋の中は、質素な会議室のような空間だった。

 中央に置かれた長机を囲むように、五脚の椅子。座っているのは、すでに和樹以外の四人だ。


「これで全員揃ったみたいだね。親交もかねて、自己紹介でもしよっか」


 和樹が入室するや否や、最初に口を開いたのは、机の正面に座っていた男だった。


 ――前歯、でか。

 第一印象がそれだった。三十代後半くらいの男で、あまりに出ている前歯のせいか、言葉がもごもごとこもっている。しゃべるたびに聞き取りづらい。


「じゃあ、言い出しっぺの俺から。俺の名前は鈴丸権蔵。大企業の社長で、このゲームにはまあ、遊びで参加したって感じかな? いつものノリで、今日はリーダーシップを発揮しようと思うからよろしく」


 出っ歯がやたら誇らしげに自己紹介を済ませる。

 ……大企業の社長? こんなゲームに、遊びで?

 頭にいくつかの疑問符を浮かべつつ、和樹は無言で空いていた席に腰を下ろした。


 机の上には、一枚の紙が置かれている。

 タイトルは――『今回のゲームについて』


 そこに書かれていた情報は簡潔だった。

 五対五のチーム戦。十ラウンド制。そして三、六、九ターン目には「ミニゲーム」なるイベントがあるらしい。

 ……以上。詳しいルールや説明は、試合会場でされるとのことだった。


 紙を読み終え、ふと顔を上げると、自己紹介の空気がすでにグダグダになっていた。

 大企業の社長のリーダーシップとやらは、すでに感じ取れないのだが。


「次いないなら、梨乃ちゃん。言っちゃって!」


 そう思った矢先、出っ歯の権蔵が隣の少女を指名する。

 少女は少し慌てて立ち上がった。肩までのきれいな髪に、整った顔立ち。背は百六十センチ前後だろうか。

 かわいい。でも、どこか頼りなさそうな雰囲気もある。


「佐山……梨乃っていいます。ちょっと、トラブルに巻き込まれて、このゲームに参加することになりました。頼りないと思うんですけど、よろしくお願いします」


「うんうん。よかったよ」


 声が震えていた。

 緊張のせいか、それともこのゲームへの恐怖か――とにかく弱々しい印象を見る者に与える少女だ。

 それは彼女が席に戻り、権蔵に絡まれているのを嫌そうにしている様子からも、なんとなく伝わってくる。


 ただ、少し気になることがあった。

 目が合っているのに、合っていないような……視線がどこか虚ろで、まるでこちらを「人」として見ていないような、そんな違和感。


 気のせいかもしれない。

 そう思い直して、和樹は次の自己紹介に意識を向けた。


「ああ。僕ですか。僕は……国丸鉄平って言います。無職で、何に使ったかもよくわからないお金の使い方を繰り返してたら、借金ができたので、このゲームに参加しました。よろしくお願いします」


 国丸鉄平。

 彼はなぜか、椅子に座らず、部屋の隅で体育座りをしていた。

 年齢はわからない。三十代にも、五十代にも見える。

 ただひとつ言えるのは――どこか老けていて、ひたすらに無気力な雰囲気を漂わせていること。

 目に光がなくて、まるで抜け殻みたいだった。


「次、私? ああ、籠山幸子って言います。パパとママのクレカで欲しいもの買いまくって、推しにスパチャしまくってたら、借金すごくなっちゃってさー。そしたら親にこのゲーム出ろって言われて。マジ毒親。自分で出ろって言ったのに聞かないしー」


 そしてに自己紹介したのは、椅子にふんぞり返った女だった。

 潰れた唐揚げみたいな顔、唐揚げを詰め込みまくったような体型。百キロはありそうだ。

 三十代前半だろうか。態度も話し方も、とにかくワガママで自己中なのが伝わってくる。


 なんだか、どうにも癖のあるメンバーがそろっているようなのだが――。

 最後、一応立ち上がると、和樹は自分の自己紹介を始めた。

よかったらブックマークと評価をくれると嬉しいです。

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