第八話 初めての高校①
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
(・・・・結局、ほとんど寝られなかった……。)
ぼんやりとまどろんでいた意識の中、俺はいきなり携帯のアラームに叩き起こされた。
華さんと霞さんのおっぱいサンドイッチのお陰で全く安眠できなかったが……それはもう仕方がない。
あたりを見回してみると……2人とももういない。 ……途中から腕が軽くなったのはそのせいか。
俺は重い頭を無理やり働かせつつ、朝の支度を行うために一階のリビングへと足を運んだ。
◆◆
「おはよー奈緒くん!! 昨日はごめんねー寝苦しかったでしょー!!!
朝ごはん急いで作ってるから、ちょっと待っててね!!!」
「ちょっ……綾香っ!!! 花蓮が先なんだから、ちゃんと順番待ちなさいよ!!!」
「うち今日早いんだけど。 どうせ姉さんまだ余裕あるんだから、うち先に洗面台使わせてよ。」
「琴葉ねえさん………早くしてよぉ………!!!
もう時間ないっ………………トイレ………ずっと我慢してるの………っ!!!」
「静どのっ!!!! もう少しお待ちくだされーっ!!! あと1分!!! あと1分で出ますからぁーーーー!!!!」
「・・・うわーーーーー!!! あしがすべったー!!!!(ガラガラガッシャーン!!!)」
「大丈夫ひなち!!!? ケガないっ!?!?」
「………………あわ……………あわわ…………!!!(きょろきょろ…!!)」
階段を降りると、そこには混沌が広がっていた。
まるで千手観音のように恐ろしく早い手つきでみんなの朝ご飯を作る華さんに、洗面所の順番をめぐって喧嘩をしている花蓮と綾香。
コンコンと激しくトイレのドアをノックしている静さんに、急かされてトイレの中で心底焦っている様子の琴葉さん。
率先してお手伝いをしていたであろう日向が派手にすっこけて食器をぶちまけ、様子を見ていたひよりさんが慌てて駆け寄る。
そして、その一部始終を見ていた鈴音ちゃんが、あたふたおろおろしながらそれを見つめている。
・・・・完全に、地獄絵図だ。
「ひなたちゃん!? 大丈夫っ…!?!?」
「・・ぐすっ……ごめん、華ねーちゃん………食器、こわしちゃったぁ……!!!」
「いいのよぉ。 お手伝いしてくれたその気持ちだけで、私はうれしいわぁ。」
「あーし、掃除機取ってくるーっ!!! あぶないからそこで待っててねー!!」
「ほいっ!!! 静どのっ!!! おまたせしました!!!!!」
「うぅー………トイレ……!!!!(ガチャンっ!!! ばたばた……)」
「いいからどきなさいよ! アンタ、どうせ学校行かないでしょ!?」
「今日はネ友とオフ会あんの。 9時発の電車乗らないと間に合わないから。」
「はー!? ただの遊びじゃない!! 学校とか仕事する人優先よ!!」
「・・あわ…………あわわ…………!!!(あたふたきょろきょろ)」
俺はどこからどう手をつけていいのかわからず、呆然と立ちつくしながらその様子を見ていたのだが…
さすがに俺も何か手伝わないとと思い、慌てて袋を持って日向のところへ駆けつけた。
◆◆
「「「・・・いただきまーす!!!!」」」
朝の澄んだ空気の中に、姉妹たちの元気な声がこだまする。
先程の地獄絵図もようやく収まり、なんとか全員が席について朝ご飯を食べ始めることが出来たのだった。(早朝の新聞配達のバイトをしている輝良さんと、もうすでに会社に出勤した霞さんを除いて)
「んー!!! おいひー!!!
やっぱ、華ねーちゃんのフレンチトーストはカクベツだねー!!!」
「………………っ………!!!(こくこく!)」
「うふふ……ありがと!
さ! 今日は結構ギリギリになっちゃったし、みんな急いで食べて学校行ってねー!!」
みんなの嬉しそうな態度に、華さんが嬉しそうにほほえみながらそう答えた。
俺も一切れ口に入れてみると……うまい。 口に入れた瞬間に、じゅわっと甘みがとろけるようだ!
破滅級に忙しいであろう平日の朝に、そこそこ手間がかかっていそうなフレンチトーストを作るなんて…
華さん、やはりただ者ではない。
「ごちそうさまでした……! って、もうこんな時間っ…!!
わ、私…もう学校行くねっ……!!!」
朝ご飯を食べ終えた途端、静さんが急いで食器を片付けて、カバンを片手に玄関へと小走りで駆け抜ける。
ふとテレビを見ると、朝のニュース番組のマスコットが繰り返し現在の時刻を視聴者に告げていた。
「しずちゃん、もう学校行くのー? じゃ、あーしも行くー!!!!」
「じゃあ、花蓮もそろそろ出発するわ。
・・・・・ほら。アンタも一緒に行くわよ!」
そんな静さんの様子を見ていたひよりさんと花蓮も、急いで食器を片付けてカバンを手に取る。
花蓮に一緒に行くよう催促されたが……これは、俺も一緒に登校して良いってことだろうか…?
「なにぼさっとしてんのよ。 置いてくわよ?
どうせアンタ学校までの道わかんないんだから、おとなしく花蓮たちに着いてきなさいよ。」
「お、おう。 ありがとな。」
「ふんっ。 わかればいいのよ。 …ほら、さっさと行くわよ!!」
なんだかんだ、花蓮も優しい一面があるのかもしれない………。
俺は少し心が暖かくなりながら、急いで食器を片付けてカバンを手に取った。
◆◆
「いい? アンタが今から行く『橋広高校』までの道のり教えるから、ちゃんと覚えなさいよー!!」
「・・・お、おう。……頼む。」
花蓮が、少し不機嫌そうながらも少しやさしめな声色で、俺達の通う高校までの道のりを案内してくれる。
俺と花蓮…そしてひよりさんと静さんが通う『橋広高校』 通称:橋広高は、県内でも平均くらいの学力の公立高校だ。
校訓に文武両道を謳っている自称進学校だが、スポーツ推薦が盛んなので偏差値の幅がかなり大きいらしい。
『しずちゃんはちょー頭いいけど、あーしはおバカだからいっつも赤点なんだよねー』って、ひよりさんが笑いながらそう言っていた。
「あ! ひよりんおはよー!!! それに、花蓮ちゃんと生徒会長も!!」
「えりしゃー!! かなぴー!! おはおはー!!」
俺達が雑談しながら歩いていると、背後からいきなり快活で明るそうな女の子の声が響き渡った。
このテンションからして、おそらくひよりさんの友達だろう。
「愛理さん、佳奈さん。 おはようございます!」
「お、おはよう………ございます!」
その挨拶に応じて、花蓮と静さんも笑顔で挨拶をしている。
あのひよりさんの友達なら、きっとものすごくフランクな方なんだろう。
「・・・お? なんか今日は見ないカオがいるなーーーーー……………」
「あ! ホントだー!!! ひよりん、ついに男ができたのかっ!? ひゅー!! やるぅーー!!!」
・・・どうやら、友達のギャル2人の矛先が俺に向いたようだ。
2人とも俺のことを物珍しそうな目でみているなか、ひよりさんが笑いながら説明した。
「あはは!! ちがうよー……
このコは奈緒っち!! 昨日、あーしたちの家族になったんだー!! かわいーでしょー!!」
そういって、ひよりさんが俺の肩に右手をからめてぐいっと引き寄せ、2人にアピールするように笑顔でピースサインをしてみせた。
(・・・・うう………近いっ……!!! それに、胸が当たって………っ!!!!)
内心でものすごくドキドキしているなか、俺はなんとか平然を装って2人に挨拶する。
「昨日から羽川家の一員になった『小鳥遊 奈緒』です。 よろしくお願いします!!」
「奈緒っちよろよろー!! ウチらとも仲良くしてねー!!!」
「こんなかわいい女の子たちと家族になれるなんて、羨ましいやつめー!! うりうりー!!」
愛理さんにばしばしと背中をたたかれ、佳奈さんにはひじで脇腹をつっつかれている。
なんというか……… 距離感がゼロだ。
俺がそんな彼女たちにドギマギしていると……
いつのまにか、俺達の前には大きな校舎ががっしりと佇んでいた。
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