第二十一話 羽山家の体育祭②
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
橋広高校の体育祭が始まってから、およそ1時間。
様々な思惑が入り乱れる今大会は、いろいろな意味で大波乱を巻き起こしていた……。
「・・位置についてぇ……よーい……どんっ、ですわっ!!!!!」
つい先程、号令係の高尾先輩のエレガントな掛け声と発砲音とともに、第一種目である『50m徒競走』の第一レースがスタートした。
俺は、今回の競技は一年四組代表として参加するのだが…… 俺のレーンの他のメンツがやばすぎる。
「あらぁ……!!! 奈緒くんっ……!!! 奇遇ねぇ〜♡
勝っても負けても、うらみっこ無しよぉ〜!!」
「……ひ、ひぃ……!?!?
ご、ごめんなさいっ……あ、あたしなんかが一年二組の代表でごめんなさいぃぃっ!!!
ううう………消えたいぃ……」
・・・よりにもよって、俺の両どなりで走るのが華さんとひめるなのだ。
何がとは言わないが、暫定一位と二位の人に挟まれてしまったし…… 早速味方2人と競い合う事になってしまった。
華さんは『羽山シスターズ』チームの代表として出場しているのはともかく、ひめるも『生徒会&体育祭実行委員会』チームの代表として出場しているのだ。
俺はどちらのチームにも出場しているので…… もし2人に勝利しても、あまり意味がないのだ。
「位置についてぇ……よーい……どんっ、ですわっ!!!!!」
そうこうしているうちに、俺達のレーンもスタートの合図を知らせる掛け声と発砲音が鳴り響いた。
・・・まあ、考えていても仕方がない。 とりあえず、相手が誰であろうと勝てば良いのだ。
俺はそんな安直な考えを持ちながら、ゴールテープに向かって全速力で走り出したのだが……
「はぁっ……はぁっ……!!!」
「はっ……はひゅっ……ふ……ふぅ……っ!!!」
(……っ〜〜〜〜〜〜!!!!!!////////////////
め、目のやり場がぁぁぁっ……!!!!)
華さんとひめる……2人のものすごく立派なモノが、俺の視覚におもいっきり襲いかかった。
今回の体育祭は男女合同のため、ハンデとして男子は女子の数歩後ろでスタートしないといけないのだが……
前方で縦横無尽にゆっさゆっさと揺れているそれがモロに目に入ってしまうせいで、徒競走どころではない。
「な、なぁ……アレ……」
「なんというか……す、すごいわね……」
そのあまりの衝撃的な光景に、観客席の人たちも固唾をのんで2人を見守っている。
勝負の行方などそっちのけで、今もなお揺れ続けているやわらかな女性の象徴を一点集中して見守っているのだ。
「ゴーーールっ!!!!!!
一位、羽山っ!!!! 二位、竹山!!! 三位、藤岡っ!!!!!
・・・・・四位と五位は、同着で羽山姉と小森だっ!!!!!!」
途方もなく長い時間が終わり、なんとか一着でゴールした俺が後ろを見ると……
華さんとひめるはほぼ同着でゴールし、二人ともうずくまってぜえぜえと苦しそうにしている。
「だ、大丈夫ですか……? 二人とも……」
「はぁっ……はぁっ……
奈緒くぅん……速いねぇー……」
「はひゅっ……はひゅっ…………げほっ…………お゛ぇぇ……
クラスの、みなさまっ……すびば……すびばぜ……!!!」
・・・なんというか、いろいろな意味で先が思いやられる。
俺は何方向もの不安を抱えながら、2人を連れて各々のテントまで運んであげたのだった。
◆◆
続いて、俺が出場する競技は『障害物競走』。
ルールとしては、まず数十メートルほど走った後にハードルを飛び越え……ぶら下がっているあんぱんを口でキャッチする。
そのあと、コースに置かれているカードをめくって、そこに書かれていたものを観客席から借りてゴールまで進むという……いわば、ハードル走とパン食い競争と借り物競走が合体したキメラ競技だ。
それで、もっとも重要な、俺が対戦する同じレーンの人たちなのだが……
「ふっ……!! 奈緒クンよ。 悪いが、今回はボクが勝たせてもらうっ!!!!」
「おー!! なおくん……!! 負けないよー……!!!」
『羽山シスターズ』チームと『一年四組』チームで、またもや味方と被ってしまった。
輝良さんと小川さんなら、さっきみたいな色々と危ない展開にはならなそうだが…… やはり、味方同士で争ってしまうのは痛い。
「位置についてぇ……よーい……どんっ、ですわっ!!!!!」
・・・まあ、いくら考えたところで仕方ない。
俺はそうやって割り切り、高尾先輩のスタートの合図に集中して颯爽と駆け出したのだが……
「くっ……!! 2人とも、めっちゃ速いっ……!!!」
俺の前でいきおいよく駆け出していく、輝良さんと小川さん。
いくらハンデがあるとは言えど……二人とも、俺がまったく追いつけないほど速かった。
「ふっ……当然さ!!! 毎日、新聞配達で鍛えているからねっ……!!!」
「きょうはわたし、『がち』だよー……!! 絶対、負けないもん……!!!」
毎朝ランニングをしている輝良さんはそうだが、意外にも小川さんが俊足だ。
油断していると……いや油断してなくても、普通に負けてしまいそうだ。
(これは、いよいよ本格的にまずいかもしれないっ……!!!)
俺が心のなかで、敗北の予感に震えていたその瞬間……
「はっはっはーー!!! どうだ奈緒クンっ!!!!
これが、羽山家次女であるボクのじつりょ……ぐえっ!?!?」
俺に話しかけようとよそ見をしていた輝良さんが、盛大にハードルにつまずいてすっこけた。
きれいに顔面から地面に激突していたが……大丈夫なのだろうか……?
「ぐすっ……ひぐっ……うえぇぇぇんっ………ひぐ……っ!!!」
案の定、輝良さんは美しい顔を真っ赤にさせて泣きじゃくっていた。
・・・なんというか、こういう状況の輝良さんは……ちょっとかわいい。
まあ、ケガについては大丈夫そうだし……華さんたちが駆け寄って救助してくれている。 なにはともあれレースに集中しなくては。
俺と小川さんはパン食い競争ゾーンに突入し、パンを咥えようと悪戦苦闘していたのだが……
「ふんっ………!! えいっ……!! やぁ……!!!」
俺の隣で、小川さんが一生懸命ぴょんぴょんと跳ねながら、小さいおくちでぱくぱくとあんぱんを掴もうとしている。
正直いつまでも見ていたいほどかわいらしい光景だが…… レースの最中なのと、小川さんのちいさな体に不釣り合いな大きなおっぱいがぷるんぷるん揺れているせいでそれどころではない。
「……!!!! やっととれたーーー!!!
えへへー…… いただきまーーーーーす…………!!!」
「ちょっ……ちょっとゆいぃっ!!!!
なんで流暢にあんぱん食べ始めてんのよぉ!!! 口じゃなくて足を動かしなさい足をぉ!!!!」
なぜかコースのど真ん中であんぱんを食べ始めている小川さんに、観客席にいた花蓮がぶちぎれている。
まあ、なんにせよ……これでライバルはいなくなり、俺が先頭になった。
俺は少しの安堵感から、軽やかな足取りで借り物競走ゾーンに突入したのだが……
「ええと、俺が借りてくるものはー…………っと……!?!?!?!?!?!?!?」
地面に伏せて置いてあるカードをめくった俺に、今日いちばんの衝撃が襲いかかる。
そこには、上杉先生っぽい大きく粗雑な字で『ブラジャー』と書かれていた。
(あんっっっの脳筋ノンデリ女教師ぃぃぃ!!!!! 男子生徒になんちゅーもん持ってこさせようとしてんだぁぁぁぁぁ!!!!!)
俺の顔が瞬時に真っ赤に染まり、怒りと焦りと照れからわなわなと震える。
反射的にちらっと華さんたちがいるテントへ目配せすると…… 心配そうな顔をした霞さんと日向がすたすたと駆け寄ってきた。
「にーちゃん!!! どーしたの!?!?」
「おいおいどうした奈緒ぉ!? ちょっとお題見してみろー!!」
2人が、俺が持っていたカードを覗き込んでお題を確認している。
羞恥心が比較的薄めな2人でも、さすがにこのお題は無理だろう……
「あちゃー…… 奈緒おまえ、ハズレ引いちまったなー……
今あたしが付けてるやつでいいかー……?」
「ひなたの!! ひなたのやつでもいーよ!!!!!」
・・・まさかの、OKだった。
「いやいやいや!!!!! 流石に……さすがにそれはマズいですって!!!!!
俺ちょっと審判に抗議してきますっ!!!!!!」
流石に女性の脱ぎたてほやほやの下着は受け取れないので、丁重にお断りしたのだが……
2人とも、目がガチだ。 おそらく、勝つためなら何でもやる気だろう……
(ほ、本当にっ……
この体育祭……頭おかしすぎんだろぉーーーーっ!?!?)
俺は極度に混乱する頭の中で、パニックになりながらそう叫ぶことしかできなかった。
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