第二十話 羽山家の体育祭①
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
時刻は、午前六時半。
早朝の澄んだ空気と、五月とは思えないぎらぎらとした眩しい日差しの中……
俺達は、橋広高校のグラウンドでテント設営を行っていた。
「おーい!! 鈴音ぇー!! そっち引っ張っててくれー!!」
「……!!(こくこくっ!!!)」
「あれ…、この杭ってどうやって打ち込むんだっけ。」
「ふっ……任せろ!!! ボクの美しいテント設営を見せてあげようっ!!!」
みんなで協力して、ファミリー用の大きなキャンプ用のテントを張っているのだが…… 今日のみんなは、ものすごくやる気に満ちていた。
校門が解放される6時前からずーっと場所取りのために並び、ゴール前の最前列のスペースを確保。
華さんがこの日のために奮発して買ったビデオカメラもしっかり充電してあるし、育ち盛りの俺達のためのお弁当もたくさん作ってきた。
『みんながひとつになるように』ということで、みんなで購入した『羽山シスターズ』と書かれた鉢巻を巻き、みんなの直筆メッセージが書かれたタオルもしっかりと首にかけている(※どちらもひよりさんと日向発案)
今の俺達はきっと……気持ちだけなら、誰にも負けていないだろう。
「よーっし、みんなぁ〜!!!
体育祭……ぜったい勝つわよぉーー!!!!」
「「「おおおーーーっ!!!!」」」
すべての準備が終わった俺達は……一番重要である『心をひとつにする儀式』を行った。
11人みんなで輪になり、みんなの手を重ねて掛け声とともに大きく掲げる『アレ』だ。
華さんの掛け声と俺達のやる気に満ちた大声が、無人の早朝のグラウンドにこだました。
◆◆
ぽん、ぽんと軽快な音を立てて、透き通る青い空に白い花火が打ち上がる。
ついに待望の体育祭が始まろうとしており、開会式を行うために入場門で級友たちと待機していたのだが……
「おいおい、なんだあの美人集団!!! なんかのロケかなんかか!?!?」
「おわっ……!!! 本当だ、すげえ!!!
『羽山シスターズ』ってプラカード掲げてるし、きっと一般の参加チームなんじゃね!?」
観客席のあちらこちらで、華さんたちの事と思われる話題で持ちきりになっていた。
確かにみんなものすごく美人だし、そんな人達が体育祭に参加するとなれば話題に上がるのも当然なのだが……
「おいおい!! あの人達、お前んとこの姉ちゃんだろ!?」
「いいなぁー!!! あんな美人に囲まれて生活できるなんて羨ましいぜ!!!」
「しかも、みんな胸でかいしめっちゃエロい……!! 羽山ぁー!! 家での話もっと聞かせろよー!!」
「あ、あはは……」
クラスの男子たちの注目が、少々鬱陶しい……
この一ヶ月で一切関わりがなかった生徒たちからも、家族のことについて執拗に質問攻めをされている。
まあ、相手が誰であれ……大切な家族の容姿を批評するような言動をとられるのは、あまりいい気分ではない。
そんな感じで、俺が心底返答に困っていると……
「そのへんにしときや。 あんま人の家族に対する不躾なハナシをするもんやないで。」
「・・・・!!!!」
近くにいた番と爽也が、俺に助け舟を出してくれた。
「ひ、ひぃっ!?!?」
「わ、悪ぃ…… ついテンションが上がっちまって…… 羽山、ごめんな。」
「お、おう……」
番の超強い無口の圧力と爽也の胡散臭い笑顔に、男子がマジでびびっている。
心優しい番はともかく、胡散臭さの塊である爽也までも助けてくれるなんて…… 俺は、いい友人を持った。
・・・・まあ、爽也に関しては未だに裏があるのではと勘ぐってしまうが。
「悪ぃ……助かった。」
「ええねんええねん! ワイも、大事な兄弟のことをそないなふうには言われたないもんなぁー。」
「うん……!! ぼくの怖い顔が役に立って良かったよー……」
そういって、二人が照れくさそうに微笑んだ
自分のコンプレックスを使ってまで助けてくれるとか、お前達……なんて良いやつなんだ。
俺が2人に感動していると、ふたたび空に向かって花火が打ち上げられ……
開会式が開始される旨のアナウンスが、生徒と観客でにぎわうグラウンド全体に響き渡った。
いよいよ……体育祭の始まりだ!!!
「……お、もうすぐ開会式が始まるでぇ。
始まる前に、みんなで円陣組もか!!!」
「おー!!! いいねいいねー!! 組も組もーー!!!」
「……よーし…!! 頑張るぞー……!!
ほら、かれんもこっちおいで……!」
「ふ、ふんっ!!
たかが行事ごときにそんなにはしゃいじゃって、みんな子供なんだからっ!!!」
委員長である爽也の呼びかけに対し、花蓮たちとJK二人組を含めたクラスメイト達がぞくぞくと集まってくる。
彼らもまた、華さん達に負けないほどの強いやる気を持っているようだ!!
「おーし、じゃあ行くでー……?
一年四組!!! 優勝目指して、気張ってくでー!!!!!」
「「「おーーーーーっ!!!!」」」
爽也の声掛けに対し、クラスのみんなも気合の入った大声でそれに応えている。
この人たちもまた、共に優勝を競い合う仲間なのだ!
姉妹のみんな……そして一年四組のみんなと一緒に、一生懸命勝利を掴もう!!!
俺はそんな熱い思いを胸に秘め、爽也の掛け声に対して自分が今できる限りの大声を発した。
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