第十九話 体育祭前夜
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「明日はいよいよ……橋広高の体育祭だーっ!!!!!」
「おーーっ!!!!」
4LDKの一軒家に、俺と姉妹のみんなの熱い想いを乗せた声がこだまする。
明日から開催される体育祭を直前にして、羽山家の全員がおもいっきり感情を高ぶらせていた!
「うおーー!! 燃えてきたわぁーっ!!!」
「ふっ……!! ボクの美しさを、全校生徒に知らしめることが出来るのが楽しみだっ!!!」
「みんな、絶対勝つよ。 優勝狙ってこ。」
「…………!!(こくこく!!)」
姉妹のみんなの異様な盛り上がりように、俺は若干気圧されながらもその場のノリに合わせる。
橋広高校の生徒である俺や花蓮たちはともかく……OGの華さんたちや、まだ中学生の綾香たちまでもみんな等しくやる気に満ちている。
それもそのはず・・・わが『橋広高校』の体育祭は、他の高校とは違う特殊な体育祭のシステムなのだ。
『地域に根づいた教育』を掲げているわが校は、体育祭や文化祭などのイベントも、近隣地域に根付いている。
橋広高校の体育祭は、各学年、各部活動、有志の出場チーム(一般人参加可能)の3つの部門があり…
その団体に所属している人たちが競技に参加して、個人で集めたポイントの合計が多い順に1位、2位、3位と優劣がつく。
生徒、保護者、地域の方みんなが競い合い、各部門での最強のチームを決めるのだ。
そういうわけで、俺達も『羽山シスターズ』としてエントリーをしているわけだが……
みんながここまで本気で体育祭に挑んでいるのには、大きな訳があった。
「っしゃあ!!! 絶対優勝して、みんなで旨い酒と焼肉じゃんじゃん食うぞー!!!!!」
「拙者はモニターを新調したいですなー!! 今のボロいやつにはもううんざりですぞ……」
「あーしは推し活したーい!!! こんど『ミスターみどりんご』が新しいTシャツ出すのー!!!」
「うちはヘッドホンを新調したいな。 めちゃ音質いいやつ。」
・・・そう、この体育祭には『賞金』が出る。
その額、3つの部門でそれぞれ10万円。 総合優勝ともなるとプラスで10万円ももらえるのだ。
最大20万獲得のチャンスに、みんながみんな熱い想いを抱えている。
それだけの大金となると、11人で山分けしても2万近くある。 個人のひそかな野望を叶えるには十分すぎる額だ。
「ふっ……!!! ボクはもちろん、自分磨きのために使わせてもらうよ!!!」
「わ、私は…… 新しい文庫本が欲しいです……!!」
「わたしは新しいお洋服が欲しいわぁ〜!! なかなか、自分のために使えるお金がなくって……」
「か、花蓮は……その…… みんなで美味しいご飯食べにいきたい。」
「……………!!(こくこくっ!!!)」
その『20万』という大金を前にして、みんなが今叶えたい小さな野望を想像して夢見心地になっている。
やはり……こういうのは、想像している段階がいちばん楽しいのだ。
「あ、あんたは……20万もらったら、何したいわけぇ……!?」
「俺もみんなと一緒に飯食いに行きたいな。 なかなか11人で外食って行けないだろ? お金かかるし。」
照れ隠しのために少しキレ気味に聞いてきた花蓮の問いに、俺がそう答える。
みんなともっと仲良くなりたいし、やはり……運動したあとは美味しいご飯だろう。
「日向は、20万が手に入ったら何がしたいんだ?
さっきから、ずーっと黙ってるけど……」
「ほぇっ……!?!?」
その話の流れで、今までずっと黙っていた日向にそう尋ねた。
こういう話題にはいちばんに乗ってきそうなものなのだが……今は体調が悪いのだろうか?
「ひ、ひなたは…… みんなと一緒においしーご飯も食べに行きたいし……
入院しているばーちゃんにも、おいしーもの食べさせてあげたい……」
「『ばーちゃん』? 日向のお婆さん、入院しているのか……?」
俺の疑問に、日向は少し照れたようにまごまごとしながらそう答えた。
すると、恥ずかしそうにまごついている日向のかわりに……華さんが俺に説明してくれた。
「日向ちゃんはね、ずーっと昔からおばあ様と二人暮らしだったんだけど……
しばらく前から重い病気にかかっちゃって、ずっと大きな病院に入院してらっしゃるのよぉ。
そういうわけで……日向ちゃんは今、私たちと暮らしているの!」
「なるほど!!
日向は、お婆さん想いのいい子なんだな!!!」
「えへへ……!!! うん!!!!」
俺はその説明を聞き、じーんと心が暖かくなった。
家族のために頑張って、優勝して賞金を勝ち取りたい!!という気持ちが、ありありと伝わってきた!!
「よし!! 俺達に任せとけ!!!
体育祭……絶対勝つぞーっ!!!!」
「「「おーーーっ!!!!」」」
俺達のためにも、日向のためにも……絶対に優勝賞金を手にしなければ!!
そんな熱い想いを掲げながら、羽山家のみんなと一緒に精一杯戦い抜くことを誓ったのだった。
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