第十七話 体育倉庫と静さん①
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
『体育祭実行委員会』発足から数日後。
先生たちから雑用を命じられていた俺は、静さんとひよりさんと花蓮の四人で体育倉庫の中にいた。
「まったく、先生もひどいんだからっ……
実行委員になったとたん、花蓮たちにたくさん雑用を押しつけて……」
「えーーー!? みんなでお仕事すんの楽しーじゃんっ!!
テンションあげてこーよ!!!」
「あはは……そうだねっ……!! 大変だけど、楽しんでいこうね……!!」
盛り上げ上手のひよりさんと、しっかりものの静さん……そして、力仕事担当の俺とツンデレの花蓮。
一見バラバラに見えても結構バランスがとれている俺達は、よく先生から仕事を押し付けられる標的にされているのだ。
現に今も、5月の頭とは思えないほどの蒸し暑さの中で体育倉庫の中にこもりきりになり……
一週間後に迫った体育祭で使用する、道具の確認作業をしていたのだ。
「あー……暑い……。
さっさと終わらせて帰りましょうよ……。」
「そうねっ……こんなトコにいると、干からびちゃいそうよ……
花蓮、ちょっと水筒取ってくるわね……」
狭苦しい体育倉庫の、サウナのような蒸し暑さ。
そんな地獄のような環境に耐えかねて、花蓮が外に出ようと鉄の扉の取手に手をかけたが……
なにやら、花蓮の様子がおかしい。
「あれ……あれっ……!?!?
な、なんでよぉ……っ!?!?」
ひどく焦ったように、重そうな鉄の扉を精一杯右に動かそうとしているが……
その努力もむなしく……鉄の扉はぴくりとも動かずに、外の世界と俺達を完全に遮断させていた。
「みんなっ……どうしようっ……!!!
花蓮たち……閉じ込められちゃったっ……!!!」
「「「・・・ええーーーーーーーーっ!?!?!?」」」
花蓮が、心底焦ったような表情をこちらに向けてそう告げた。
どうやら俺達は、この灼熱の空間の中に閉じ込められてしまったようだ……
◆◆
「奈緒くんっ……どうかな…… 扉、開けられそう……?」
「無理みたいですね……
鍵は閉まってないと思うんですが、扉のところがなにかに引っかかってますね……。」
あれから何十回も、扉を開けることを試みていたが……
この中で一番力がある俺をもってしても、重厚感のある体育倉庫の扉はぴくりとも動く気配がない。
静さんによると、ここの扉は前々から立て付けが悪く、たまに閉まらないことがあるのだそうだが……
『閉まっていた扉が開かなくなる』という逆パターンは初めての体験らしい。
「うぅ……そうだよね……
あああっ……困ったなぁ…………!!!!」
体育倉庫に閉じ込められてしまい、静さんが今にも泣きそうな顔で落ち着きなくそう呟いた。
携帯電話で助けを呼びに行けたらいいのだが、分厚い鉄筋コンクリートで造られた体育倉庫には電波は届かないようで…… 無常にも、みんなの携帯電話には『圏外』の二文字が映し出されていた。
むせ返るほどの暑さの中で、食料も水も連絡手段もないまま密室に閉じ込められている。
その事実は、この中の全員を絶望のどん底に叩き落としていた。
「うぇー…… さいあくー……
あーし、あついのニガテなのにー…… 喉かわいたよー……」
「そうですね…… ひよりさn…………!?!?!?!?/////////
ひ、ひひひひひよりさんっ!?!? なんで脱いでるんですか!?!?!?!?////////」
ふと横を見ると……ひよりさんがワイシャツを脱いで下着姿になって、自分の顔を両手でぱたぱたとあおいでいた。
ただでさえ熱を帯びていた顔をもっと熱くしながらいきおいよく目をそらすが、脳裏にひよりさんの黄色のフリフリの下着と大きめの胸が焼き付いてしまった……!!
「ひ、ひよりんっ!?!? 何考えてんのよっ!!!
奈緒もいるのにそんなっ……学校で下着姿になるなんてぇっ!!!」
「えーーー………? 家族なんだし、別によくなーーーい?
それに、服なんて着てたらあつくて死んじゃうよーーーー………!!」
「ぜっ……ぜんぜんよくないわよぉっ!!!!
ほらっ!!! あんたも見てんじゃないわよっ!!!!」
花蓮が、心底焦ったようにひよりさんに注意をしたあと……
俺の背中に回り込んで後ろから両手をのばし、俺の目の辺りを手を覆って目隠しをしてきた。
(っ……!!! これはこれで、花蓮のふにっとした柔らかい感触がっ……!!!)
花蓮によって視界は奪われたが、俺の背中の上あたりにふにっと伝わってくる花蓮の控えめな感触がありありと伝わってくるっ……!!
「もーーーっ!!! ひよりんはもう少し、羞恥心を覚えなさいよぉーーっ!!!
静姉ぇも、なんか言ってやってっ!!!」
「あ、あはは……
奈緒くんが困っちゃうから、あんまり薄着になるのは……あうぅ……」
俺が、視界を防がれた中でその感触ドギマギしていると……
花蓮に促された静さんが、かなり焦ったような声色でそう答えていた。
静さんもさっきから、ずっとそわそわと落ち着きがなかったりとんとんとつま先で地面を叩いたりしており……
この深刻な状況に、かなり焦っているのがありありと伝わってきた。
(まずいぞ……!!! このままいくと、俺の精神がもたないっ……!!!
なにかっ……なにか解決方法を考えなくてはっ……!!!)
このままでは、いずれ空腹や脱水症状によって命を落とす危険もあるし……なによりいろいろな意味できつい。
俺はいまだ花蓮に目隠しをされながら、暗闇の中で今置かれている状況を打破するための方法を模索していた。
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