第十六話 発足! 体育祭実行委員会!
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
なんてことない日常の中の、月曜日の朝。
朝は早めに花蓮たちと登校し、静さんを生徒会室まで送り届けた後にHRが始まるまでみんなと駄弁る。
それが、ここ数日で確立した俺達のルーティーンだったのだが……今日は少し違った。
「おはよう!!! 羽山に羽山!!! ちょっと話があるのだがいいか!!!?」
「おはようございますーーー……。 ちょーっと、お願いしたいことがあるんですけどーーー……」
俺と花蓮の前に、上杉先生と下田先生が話しかけてきた。
まだHRには早いはずだが……いったい、どうしたのだろうか。
「前に委員会決めたとき……あなたたち、体育委員でしたよねぇーー……?
どうせだったら、ついでに『体育祭実行委員』も兼任してほしいんですけどぉーー……。」
下田先生がにへらと笑いながら、両手を合わせてお願いするようなポーズでそう頼んできた。
先週、俺と花蓮は一緒に体育委員にさせられたのだが…… 『体育祭実行委員』とは何なのだろうか。
俺と花蓮は少し不審がりながらも、下田先生の説明にしっかりと耳を傾けた。
◆◆
「・・・てなわけで、人手が足りないので臨時に生徒会に入って『体育祭実行委員』としてサポートをしてほしいんですよぉ。
ご理解いただけましたかぁーーー……?」
・・・なるほど。
二人の話によると、俺達が頼まれた『体育祭実行委員』というのは『急きょ設立された、体育祭専門の委員会』らしい。
本来なら、体育祭は生徒会で企画・運営をするらしいのだが……
今年は生徒会のメンバーが少ないため、有志で協力してくれる一般生徒の人を探しているんだとか。
そこで、ひよりさん+ギャル二人組が『是非手伝いたい!!!!』ってことになり、同じ羽山家かつ体育委員の俺達にお声がかかったということだ。
そういうことであれば、俺は是非協力したいのだが……
「……うーん……… 静ねぇとひよりん達に協力するのは良いんだけど……
生徒会の人たち、みんなキャラが濃いからあんま関わりたくないのよねー……。」
ずっとだんまりを決め込んでいた花蓮が、ここに来て少し難色を示した。
花蓮も十分キャラが濃いと思うのだが、そんな花蓮が言うほど個性的な人が大勢いるらしいのは少し身構えてしまう。
「大丈夫だ!!!
今年の体育祭関係の担当は私がするし、生徒会の奴や顧問の教員も変人だがみないい人ばかりだぞ!!!!!」
「どこに、大丈夫な要素があるんですかねぇーーー……?」
・・・下田先生の言う通り、ただでさえキャラが濃い人達に上杉先生まで加わったらやばい予感しかしない。
『体育祭実行委員会』に協力するか決めあぐねているまま、俺たちの朝がだんだんと過ぎていってしまった。
◆◆
お昼休み。
『体育祭実行委員会』について加入することも断ることも出来ないまま、俺達は生徒会室の前に来ていた。
「ねえ……ホントに、この中入んなきゃダメ……?」
「流石に駄目だろ……。 先生からも『とりあえす顔合わせだけは来い』って言われてるし……」
花蓮が柄にもなく弱々しくなって、俺の背中に隠れている。
正直俺もあまり気乗りはしないが、せめて顔合わせくらいはしておいたほうがいいだろう。
俺達は意を決して、生徒会室の扉を叩いて中へと入っていった。
「あーー!! 奈緒っちにかれちゃ!!! 来てくれたんだねー!!!!」
「奈緒くんに花蓮ちゃんっ……!! 来てくれて、ありがとうございますっ……!!」
俺達が中へ入るやいなや、見知った声の人たちが明るく出迎えてくれた。
ひよりさんやギャル2人組……生徒会長である静さんなど、仲が良い人が一緒なのはとても心強いのだが……
「くっくっく……!!
魔界に迷い込んだ者よ、この禁断の扉を開けてしまったか……!!
我がアジトへようこそ!我が闇の力で君を歓迎するのだ!」
「庶民のみなさん、ようこそですわー!!
わたくしが直々に歓迎してさしあげますわよー!!」
「ひぃっ……!?
あうう……人が多いぃ……帰りたい…………」
・・・・・なんか、明らかにやばいやつがいる。 しかも3人。
この人たちが、花蓮の言っていた『キャラが濃い人』なのだろうか……?
「よし!!! 全員揃ったな!!!
それでは……各自軽い自己紹介をしたあとで、詳しい仕事内容について説明しよう!!!!」
そういって、上杉先生が高らかに叫び……
濃すぎるメンツによる、濃すぎる委員会が始まってしまった。
◆◆
「……一年四組の『羽川奈緒』です。 よろしくお願いします……。」
俺がみんなに向けて、少し緊張しながらも笑顔で自己紹介をする。
これで、残すところはあの濃い三人組だけになったのだが…… どんな奴だか、だいたい見当がつく。
「くっくっく…!!
我はこのアジトの長である闇の魔王……『畠中 二葉』であるぞ……!!
闇の魔法や黒魔術を記した古代の書物の知恵を、我が眷属たちに授けているのだ……!!
我が闇の叡智を教わりたくば、いつでもこのアジトか魔王城に足を運ぶのだな!!!」
「……えーーー………。
直訳すると、彼女は『生徒会執行部の顧問の畠中です。 国語の先生をしています。
なにか質問があったら遠慮なくここか職員室に来てね』と言っています。
こんなんでも一応先生なので、あんまりバカにしすぎないであげてくださいねぇーーーー………。」
そうやって、畠中先生が自己紹介をして……下田先生がそれを翻訳してくれた。
三人組のなかで一番背が小さく、一番やばそうなオーラを醸し出していたが……まさか顧問の先生だったとは。
黒い眼帯に、ドンキで売ってそうな大きな角のカチューシャと謎の異世界チックな服を着ており、身長も低く……体つきだけなら、中学二年生の女の子に見間違えてしまうほどのちんちくりんだ。
・・・・というかそもそも……上杉先生しかり、教師がこんな変な格好をしていて良いのだろうか。
「おーっほっほ!!! お待たせしましたわー!!!
わたくしの名前は『高尾 紗羅』!! 誰もが認めるお嬢様で、生徒会副会長を務めていますの!!
静さんとは、同じ三年二組で大親友ですのよー!!! 庶民の皆様も、どうか仲良くしてくださいませー!!!」
高尾先輩がそう言い終わるやいなや、俺達に向かって元気よく頭を下げた。
『美しい』よりも『可愛い』寄りの整った顔に、毛量がかなり多い金髪のハーフサイドテール。
高飛車お嬢様っぽい感じはあるが、どこか生徒会副会長らしい生真面目さも感じられる。 あと胸も大きい。
静さんとは正反対の性格そうだが、意外といいコンビなのかもしれない。
「あっ……あの…………えと……
あ、あたし……『小森 ひめる』っていいます……。
し、身長は160.3cm 、体重は57kgで…… 書紀やってます……。
一年生なので、き、気軽にこき使ってください……ふ、ふぇへへ……。」
最後に、ひめると名乗った女子生徒が……おどおどきょろきょろしながら自己紹介を終えた。
腰まであるぼさぼさの長い髪に、曇ったメガネとぐるぐる渦巻いた瞳が特徴的な……控えめで気弱そうな女子だ。
・・・まあ、胸の部分だけはまったく控えめではなさそうだが。
「いよっし!!!!
全員分の自己紹介も終わったし、晴れて『体育祭実行委員会』が発足できるなっ!!!!」
「ちょ……ちょっと!!
花蓮たちは、べつに協力するって決めたわけじゃ……!!!」
俺がそんなくだらないことを考えていると、上杉先生がいきなり大声を出してそう言い放った。
花蓮と俺は協力するとは一言も言ってないのだが、なぜか強引に進められている。
「……? もう互いに自己紹介をしたのだから、立派な仲間ではないか!!!!
さあ!!! 『体育祭実行委員会』のみんな!!! 一緒に、体育祭を盛り上げるぞ!!!!」
「お二人とも、ごめんなさいねぇーーー………。
このヒト、脳みそが筋肉でできているかつ単細胞なんで、人のハナシ聞けないんですよぉーー………。
ま、せっかくなんで仲良くしましょーーー……。」
そういって、下田先生が気だるそうに右腕を突き上げてやる気のない声を上げた。
・・・本当に、このメンツで体育祭が成功するのだろうか。
俺は静に頭を抱え、前途多難な未来を想像して深くため息をついた。
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