第十三話 七女・花蓮の過去②
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「……っ…………!!!!!」
先ほど花蓮の口から放たれた、あまりにも身勝手で残酷な仕打ち。
・・・・・俺は、いても立ってもいられず………花蓮を、そっと抱きしめた。
後で花蓮に死ぬほど怒られ、蔑まれるだろうが……そんなことどうでもいい。
今はただ、目の前で取り繕いもせずに泣きじゃくっている『1人の女の子』を、ただ抱きしめてあげたかった。
「……花蓮は、絶対に『クズな女の子』なんかじゃない。
ただ……ちょっとだけ素直になれないだけの可愛い女の子なんだ。」
「ぐすっ……な、なによっ……『可愛い女の子』だなんてぇ……っ!!
あんたのくせに……あんたのくせにぃ……っ!!」
俺の胸の中で抱かれている花蓮が、さらにぽろぽろと大粒のなみだをこぼす。
しかし・・・それは、とてもとても……温かい涙だった。
「だからもう、過去を悔やんで自分を責め続けるのはやめろ。
俺はなにがあっても、花蓮のことを絶対に見捨てたりなんてしない。
俺が……俺たちが、『花蓮の居場所』になってやる。」
「……ぐすっ……ひっく……!!
うわああああああああああんっ!!!! ああああああ………」
その言葉を聞いた花蓮が、言葉にならないような声を漏らしながら……
ただただ感情が赴くままに、俺の胸の中で泣きじゃくり続けていた。
◆◆
「おー!! 奈緒くんおかえりー!!
花蓮、大丈夫そーだったー……!?」
「おかえりー…… なおくん…(もぐもぐ)」
「ただいまー。 花蓮なら、もうすぐ来ると思うけど……
……お前ら、何やってんの……?」
数分後……ようやく泣き止んで落ち着いた花蓮に『もう少ししてから戻るから先行ってて』と言われ、俺は1人でみんながいるリビングへと戻ったのだが…… 爽也たちの様子を見て俺は訝しんだ。
「なにって……あんたんとこの輝良姉さんに化粧の仕方を学んどるんや。
今どき、オトコも化粧する時代だからなぁ。 学んでおいてソンないでぇ。」
「えーーー!!! あたし、超可愛ーーーーい!!!
輝良さんマジ天才ーっ!! 神!! 美容の女神ーっ!!!」
爽也と大原さんが、輝良さんにメイクの技術を教わっていた。
もともと美人な大原さんはめちゃくちゃ美しくなっていたが……爽也は、顔がさらに白っぽくなって胡散臭さが輪をかけて高まっていた。
「ふっ……!!
二人とも美しい顔をしているからね。 それを活かさない手はないさっ!!
本当は、あの子達にもボクのメイクを施したいんだけど………」
「ゆいちゃん、よく食べるわねぇ……♡
ホットケーキのおかわりはまだまだあるから、たくさん食べてねぇ〜っ♡」
「おーい! ゆいー!
あたしのつまみのちーたらとギョニソも食えー!!!」
「……しあわせー……!!(もぐもぐ)」
「いっけー!!! 番にーちゃん!!! 『パイルダー・オン』っ!!!!」
「わわっ……!?
日向ちゃん、そんなに暴れまわったら危ないよ…!!!」
輝良さんの視線の先には……
華さんと霞さんから餌付けされている小川さんと、日向に体をよじ登られて無理やり肩車させられている番がいた。
(お前ら……ここ数時間で馴染みすぎだろ……)
俺がなんともいえない気持ちでその光景を眺めていると……
背後から、何者かの人影とドアが開く音が聞こえてきた。
◆◆
「あらぁ! 花蓮ちゃん!
お腹の調子はもう大丈夫なのぉ……?」
「お! 花蓮おかえりー!!
心配してたんだよー…! 元気になったーーー?」
「うん。 もう大丈夫よ。
……みんな、心配してくれて……ありがとねっ!」
俺の背後のドアから少したどたどしく出てきた、涙で腫れ上がった瞳をした花蓮。
華さんたちが花蓮に向かってあたたかい言葉をかけてあげており、花蓮がそれに応えるように……
ぎこちなくも柔らかい笑顔で、みんなに向かってお礼を言った。
花蓮のいつになく珍しい素直な態度に、全員が目を丸くして驚いていると……
花蓮が俺の方へと振り返り、少し照れたようにそっぽを向きながら答えた。
「それと……。
今日はいろいろと助かったわ。 ありがとうね……『奈緒』」
花蓮がそう告げた瞬間、みんなだけでなく俺までも目を丸くして驚いた。
今までは『あんた』とか『コイツ』とか雑に呼ばれていたけど…… 初めて、俺のことを名前で読んでくれた。
「えーーーっ!?!?
あんたら、もう下の名前で呼び合う中になったのーーーっ!?!?」
「べ、別にっ!! 深い意味はないわよっ!!!
ただ、そろそろ名前で呼んであげないと可愛そうだなーって思っただけでっ……」
「わたし……二人が仲良くしてくれて、うれしい。」
「ひっぐ……ぐすっ……えぐっ………!!!
うううぅ………わたしっ………感激よぉぉぉ………!!」
「おい、華姉ぇ!!!
嬉しいのはわかるけど、あんま人前でガチ泣きすんじゃねーよっ!!」
みんな、驚きつつも……それを遥かに上回るほど感動している。
無論……俺も、花蓮から初めて名前で呼んでもらえて、凄く嬉しい!!!
「花蓮……こちらこそ、色々とありがとな。
初めて俺のこと名前で呼んでくれて……俺、嬉しいよ!!」
「あーーーもうっ!! 深い意味はないって言ってるでしょー!?
あんたも!! 別にそんなんじゃないから、勘違いしないでよねっ……!!!」
「へいへい。 分かってますよー。」
花蓮が、俺を指さしながら真っ赤になって否定している。
・・・まったく、素直じゃない奴め。
「ああもうっ!!! 慣れないことしたら、おなかすいちゃったわよっ……!!!
華ねぇ、ホットケーキのおかわりちょうだい!!」
「……ごめん、かれん…………。
わたしが、ぜんぶ食べちゃったー……。」
「なんで!? あんたどんだけ食べんのよーっ!!!
ああもぉーーーーっ!!! 今日はほんと、さいあくな一日よーーーっ!!!!」
花蓮が照れ隠しのために、強引に話題をぶった切ってホットケーキを食べようとしたが……もうすでにその手は使えないようだ。
なんともいえない温かい雰囲気の中で、小川さんの胃袋の中に消えていったホットケーキを恨めしく思いつつ……
花蓮は、恥ずかしさをかき消すように大声で叫んでいた。
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