第十一話 七女・花蓮の過去①
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
「・・・・ってことがあったんですけどー…
花蓮のピンチに颯爽と駆けつけた奈緒くん……めちゃくちゃカッコよかったんですよー!!」
「ちょっ……大原さん…!!
恥ずかしいから、あんま皆に言わないで………!」
少し時は経ち、今は放課後。
長かった初登校も終わり……爽也と番、花蓮の友達のJK二人組がうちへ遊びに来ることになったのだ。
華さんが焼いてくれたホットケーキを食べながら、みんなで談笑をしていたのだが……
JK二人組の背の高い方である大原さんが、笑いながら姉妹のみんなに俺の勇姿(?)を言いふらしていた。
恥ずかしいし、花蓮の名誉のためにもあまり言いふらさないでほしいが……
話している大原さんも聞いているみんなもめっちゃ瞳をキラキラさせてるし、多分無理そうだ。
「ええーっ!! すごぉいっ!!!
奈緒くん、さすがねぇっ!!!! 格好いいわぁ……!!!」
「へぇ!! やるじゃん奈緒ぉ!!
カン違いとはいえども、家族を守るために立ち向かうなんて凄いなぁ!! よっ!さすが長男っ!!」
「ふふっ!!
それでこそ、ボクが見込んだ男だ……!!! 真の美を求めるならば、心も清く美しくないとなっ…!!」
「・・・・あ、あはは……… ありがとうございます………。」
姉妹のみんながあたたかい言葉をかけてくれたが、正直恥ずかしい。
これが本当の不良だったら格好がつくのだが……ただの誤解だったし、不良に立ち向かうときも足が生まれたての子鹿みたいにガクガクと震えてたから、まったく格好がつかない。
「謙遜すんなや! 今日の奈緒はホントカッコよかったで!!
・・・ま、コイツ相手にガチでビビってたんは正直おもろかったけどな笑」
「爽也ーーーっ……!! 恥ずかしいから、あんまそう言うなよー!!!」
「奈緒君、怖がらせちゃって……本当にごめんね…?」
番は一切悪くないのにもかかわらず、イジられてた俺に向かって誠心誠意の謝罪をしてきた。
・・・・本当に、こいつはどこまでいいやつなんだ………!!
「でも、なおくんは……とってもカッコよかったよ………?
・・・・・・・・・・・あ…お姉さん……ホットケーキのおかわりください…。」
「そうだよー。 奈緒くんはかっこよかった!!!
たぶん花蓮ちょろいから、きっと奈緒くんに惚れちゃったんじゃないのー!?」
爽也に続いて大原さんまでも、俺のイジりに参戦してきたようだ……。
あの花蓮が、そんなことで俺に惚れるわけがない。 むしろ『あんたがボサッとしてたせいで恥かいちゃったじゃないのっ! ホント、あんたは使えないわねっ!!!』とか言われそうなものだ。
「・・・てか、等の花蓮はどこいったんだ?
華姉ぇがホットケーキ焼いたってんなら、いつもは真っ先に食いにくるんだけど……」
「花蓮ちゃんなら、おなかが痛いって言って1人でお部屋にこもってるわよぉ。
・・・・・・そうだ!!! 奈緒くん、花蓮ちゃんに会いに行ってあげてぇ!
きっと、花蓮ちゃん喜ぶわよぉ…♡」
霞さんの疑問に答えた華さんが、俺に向かってウィンクをしながらそう答えた。
・・・本当に花蓮が喜ぶかはわからないが……俺も、花蓮が心配だ。
俺は華さんのお願いを聞き入れ、花蓮がいるであろう部屋へと向かうことにした。
◆◆
「・・おーい。 花蓮ー? いるかー…?」
しんと静まり返っている薄暗い二階に、俺の声とノックの音がこだまする。
ホットケーキ片手に、花蓮がいるであろう部屋のドアの前で呼びかけるも……返事が返ってこない。
(鍵は………かかっていないみたいだな。)
試しにドアノブをひねって押してみると、扉はいとも簡単に俺の体重に押し負けて…ぎぃと音を立てて開いた。
「・・・・・入るぞー………? ・・・・・・あ。」
「・・・なによ。」
俺がおそるおそる部屋の中へと進むと……
膝を抱えてうずくまっている、涙で腫れた瞳をした花蓮と目が合った。
「・・・それ、華ねぇのホットケーキ? 持ってきてくれたの?」
「お、おう。 ここ置いとくから、好きなときに食べてな。
お腹の調子は平気か?」
「別に……元からそんな悪くはないわよ。
・・・心配してくれて、ありがと。」
「そ、そうか。 そりゃ良かったな………。」
・・・・・なんというか、変に花蓮が優しい。
いつもなら『勝手に女の子の部屋に入ってきてんじゃないわよ!! この変態!!!!』とか言われそうなのに、今日はいつになく素直でしおらしい。
花蓮の整った顔立ちと目元の涙が、窓から覗く夕日に照らされてなんとも独特な雰囲気を醸し出している。
「・・・今日は、花蓮のこと助けてくれて………ありがとね。」
「・・・!? お、おう。 まあ、家族を守るのは……当然のことだ。」
ホットケーキを花蓮のそばにおいて部屋から出ようとした瞬間…… 背中から、弱々しい声色で花蓮がお礼を言ってきた。
あまりに素直な花蓮らしくない言動に、内心ひどく驚いている俺をよそに……
花蓮が、ぽつりぽつりと言葉を絞り出すようにつぶやき始めた。
「・・・・花蓮、ずっとあんたにちゃんと謝りたかったの。
ほら、花蓮………昨日あんたと初めて会ったとき、とんでもないこと言っちゃったでしょ……?
今日も迷惑かけて……そして、『居場所がない』なんてヒドいこと言って……本当にごめんなさい。」
思わず花蓮の方を振り返った俺に、花蓮が立ち上がって腰を曲げて精一杯の謝罪をした。
「・・・気にしてねぇよ。」
「・・・・うそよ。 だって、花蓮の言葉を聞いたあんた……ほんとにつらそうな顔してたもん。
もし花蓮がそんな言葉言われたら………悲しくて悲しくて、きっと死んじゃいそうになるわよ…。」
花蓮の声が、震えている。
きっと、ものすごく勇気を出して俺に謝罪をしてくれたのだろう。
「・・・花蓮があんたにヒドいこと言ったあとね……華ねぇが泣きながら、花蓮のことたたいたの。
いつもはすっごく優しい華ねぇが、涙をこぼしながら『謝りなさい』って…あんなに怒って……
あんただけじゃなく華ねぇまで失望させちゃうなんて、本当に……最低よね。」
・・・・そうか。 華さんは、俺なんかのために涙を流して怒ってくれたのか。
俺は心がじーんと暖かくなりつつ………花蓮にどう声をかけて良いのか悩みあぐねんでいると…
花蓮がさらに、声を震わせて話し始めた。
「・・・・・花蓮ね、昔から素直じゃない……かわいくない子だったの。
花蓮のパパとママはね。 花蓮がちっちゃな頃は…とっても仲良しな家族だったんだけど……
いつからかわからないけれど、ママがパパのことを避けるようになったの。」
花蓮の過去のカミングアウトに、俺はただ黙って花蓮の方を見て、話の続きに集中する。
きっと、すさまじい覚悟と決意をもって俺に話をしてくれているのだろう。
「パパも、ママに避けられてすっごく悲しそうで…… 花蓮、見てられなかったの。
ママもパパも、大好きだったから…… また前みたいに、仲良しなパパとママでいてほしかったからっ…!!」
花蓮がときおり声を上ずらせながら、顔をぐしゃぐしゃに歪ませて俺に向けて必死に話してくれている。
そのあまりに辛そうな表情に……みているこっちも胸が潰れそうになる。
「・・・でも…花蓮はっ……!!! 大好きなパパに……たくさんひどいことを言っちゃってっ……
臭いとかっ……きたないとかっ……『ここにあんたの居場所はない』とかっ……!!!!
自分でも……なんであんなこと言っちゃったのかわからないのっ……!!! でも、本音を言おうとすると………なんでか、あまのじゃくなことばっかり口から溢れ出てきてっ…………!!!!」
「だから………パパは花蓮たちを見捨てて………新しい女の人のところへ行った。
・・・当然よね。 だってこんな冷たい親子より、華ねぇみたいな優しい女の人のほうがいいに決まってるものっ……!!」
花蓮が、ぽろぽろと涙をこぼしながら……冷たくそうつぶやいた。
・・・・・どんな理由があったって、不倫をして良い理由なんてない。
俺が心のなかで怒りに燃えていると、啖呵を切ったように花蓮の口から感情が溢れ始めた。
「けっきょくっ………『再婚の邪魔だから』って、ママにも捨てられちゃってっ……!!!!
華ねぇがあたらしいママになってくれなかったら…今ごろ、昨日までのあんたみたいに……
ひとりぼっちで、居場所なんてなかったわっ……!!
だからっ………!! こんなかわいくない…クズな女の子なんてっ……!!!!
愛される資格なんてっ……………ないのよっ…………!!!!!!」
「・・・・・・っ…………!!!!!」
花蓮の口から放たれる、あまりにも身勝手で残酷な仕打ち。
・・・・・俺は、いても立ってもいられず………
花蓮を、そっと抱きしめた。
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