第一話 10人の美人姉妹①
小鳥たちの鳴き声が、耳元から入り込んでは俺の頭をかき回すように脳内に響き渡る。
本来なら春から通うはずだった私立高校の制服を着て、本来なら絶対に通るはずのなかった道を、本来なら絶対に関わるはずのない人物とともに並んで歩いている。
あまりにもありえない光景過ぎて、今だに夢でも見ているみたいだ。
「無事に、手続きが終わって良かったわねぇ… 奈緒くん!」
「……はい。」
「みんないい子たちだから、奈緒くんともきっと仲良くなれるわよぉ…!」
「……はは、そうだといいっすけど。」
俺の隣りにいる、美人でおっとりした、母性あふれる巨乳のお姉さん。
彼女が、今日から書類上で俺の母親となる人物だ。
健全な男子生徒なら、そんな女性とひとつ屋根の下で暮らすなんて夢のようなものかもしれない。
でも……少なくとも俺には、そんな現実は苦痛でしかなかった。
◆◆
昔っから、顔も勉強も運動もすべてが中途半端だった俺。
幼い頃から、母親に塾や習い事を何軒もハシゴさせられ、遊ぶことを犠牲にして努力しまくった。
けど……どんなに努力しても、どんなに我慢しても、一向に芽は出なかった。
母親はいつしかそんな俺を見捨て、出来が良い兄と弟ばかり贔屓するようになり…
俺は、家の中ではいつも爪弾き者だった。
放任主義の父親と、過干渉な母親。 そして、なんでも出来る兄と弟。
そんな家族達が、俺は大っ嫌いだった。
先週、母親が兄の大学入学祝いと弟の入学祝いとして、家族で旅行に行こうと言い出したのだが…
もちろん、母親の言う『家族』に俺は含まれていない。
そこそこ良い私立高校に受かった俺を当たり前のように置いて熱海に旅行に行った家族たちは……もう二度と、帰ってこなかった。
なんでも、帰りの道で大型トラックの事故に巻き込まれて…全員、即死だったらしい。
別に悲しくなんてない。 居なくなって清々する。
心ではそう思っていながらも、血のつながった人間がこの世に1人も居なくなった事には……少々堪える。
俺…小鳥遊奈緒は、齢15歳で天涯孤独の身となってしまったのだ。
◆◆
その後、家族たちの通夜や告別式……誰が俺を引き取るかの親戚同士の熱い押しつけあいなど、いろいろな面倒なことがあったのだが…
親戚の中で1人だけ、俺を是非養子として迎えたいという人がいたのだ。
その人が、前述した『美人でおっとりした巨乳のお姉さん』の……羽山華さんだ。
華さんいわく「こんな小さな子を独りぼっちにしておくなんてとてもできない」「うちは家族が多いから、いまさら1人増えても大丈夫」ってんで、通夜や告別式の取り仕切りや養子の手続きなどを手伝ってもらって…晴れて、俺も『羽山家』の一員になることになったのだ。
「とうちゃーく!! ようこそ我が家へー!!!
って、今日からもう奈緒くんの家だものね!!! みんな個性が強いけどいい子たちだから、奈緒くんならきっと大丈夫よ!!!!」
「……はい。」
「ささっ!!! どうぞ、はいってはいってー!!!!」
どうやら、考え事をしている間に…華さんの家に到着したようだ。
どうせ…この人やその家族たちも、俺のことなんてすぐ失望して見向きもしなくなるに違いない。
もう、すべてがどうでもいい。 家族なんて、もうたくさんだ。
そんな自暴自棄の気持ちをドアノブに込め、精一杯手前に引いた。
「「「……奈緒ちゃーんっ!!!! これから、よろしくねーーっ!!!!」」」
「…………へ?」
ドアが開いた途端、突如響き渡る若い女の子たちの声とクラッカーの破裂音。
僕の視界の先には…いち、にい、さん………9人の女性たち。
身長は高かったり低かったりで統一性がなく、家族と言うには全員全く似ていないが………
みんなすごく、容姿端麗だ。(1人だけ鼻メガネにサンタ帽を被っている奴を除いて)
家の中には丁寧に折り紙で作ったカラフルな鎖と風船が家の壁に飾られており、汚い字で「よ」「う」「こ」
「そ」「!」と書かれた大きな白い紙が天井からぶら下がっている。
(……………………な……………なんだこれはーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?)
どうやら俺は、とんでもないところに来てしまったのかもしれない。
僕は心のなかで絶叫しつつ、ただ目を白黒とさせて目の前で起こっている光景を見つめていた。
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