お魚をくわえたドラ猫を追いかける悪役令嬢の話
俺は最も美しい動物、猫ちゃんだ。
ただ、歩くだけで、
「キャアアアアーーー可愛い!」
「ボス猫ね。ふてぶてしいお顔」
「マルガレーテ様!可愛ですね」
「・・・・別に、令嬢がそんなにはしゃぐものではございませんわ」
「でも、マルガレーテ様も見ていますわ」
何か話していやがる。
「ミャン!ミャアアン」(おい、玉玉見るなよ!)
「「「キャアアアーーーー」」」
「何て言っているのかしら!」
「『お姉ちゃんたちこんにちわ』に決まっているわ」
全く、大きな猫は騒がしくていけない。
縄張りをパトロールしていたら、大きな猫の子供が泣いていやがる。
「エーン!エーン!お母様どこーー?」
しょうがねえ。縄張りを守るのも俺の仕事だ。
「ミャン?」(どーした?)
「あ、猫ちゃん!」
あ~、なでろ。なでろ。お、こいつなで方うまいな。
お尻の方もやってもらおう。
おお、効く~!
とやっていたら、母親がやってきた。
「まあ、マーシー!探していたのよ!」
「お母様!ウワ~~ン」
「猫ちゃんに慰められたの」
「まあ、猫ちゃん有難う。お礼に・・・」
母親が籠から何かを取り出した。
お、お魚だ!やりー!
何か知らないが、お魚をもらった。
「ウミャー!」(ありがとさん)
「猫ちゃんまたねー」
と別れて、他でゆっくり食べるか。
とお魚をくわえて歩いていたら、大きな猫が騒ぎ出した。
「おい、見ろよ!泥棒猫だ」
「どっかで盗んだのね」
「追いかけろ!」
おろ。何か、大きな猫が集まって来た。
お魚欲しいのか?
やらねえよ。
シュン!
オイラは走り出した。大きな猫はうすのろだ。
しかし、力は強い。
「「「「待て!」」」
「泥棒猫!」
・・・・・・・・
「まあ、何ですって?泥棒猫?どこかで浮気が発覚したのかしら!痴話げんかね。見に行かなきゃ!」
「お、何か吟遊詩のネタになりそうだ」
「何だ。何だ。大勢集まっているぞ!」
「とにかく行こう!」
「何だ。大勢集まっているぞ!何か事件かもしれない。騎士団出動だ!」
「「「はい!」」」
ヒィ、大きな猫が大勢集まっている!
オイラは逃げた。この体だ。ジャンプしても塀の上に届かない。抜け穴もお魚くわえた状態では難しい。
石の道を走った。
・・・・・・・・・・・・
「マルガレーテ様、外が騒がしいですわ」
''待て~、泥棒猫!''
''その青色の縞模様のデッカい猫だ。魚をくわえているぞ!''
この騒動は広がり学園の中まで怒号が届いた。
マルガレーテはビクンと反応し。
「午後の授業は休みますわ!」
「マルガレーテ様!」
マルガレーテは魔法を使い。
「身体強化魔法!」
ヴュン!と風を斬り。走り出した。
・・・・・・・
ついに猫は城壁まで追い詰められた。
人々は半包囲網をとり。猫を追い詰めた。
「悪い猫だね」
「お仕置きしよう」
「そうしよう!」
はあ、はあ、はあ、どういった事だ?
お魚がそんなに欲しいのか?
だが、お魚はやらない。一度くわえたら、猫はお魚を放さねえ。
いや、半分やって勘弁してもらおうか?
と思ったが。
ボン!ドタ!
ヒィ、大きな猫が飛んでいる。後ろからだ。何だ。段々近づいて来る。
それは、身体強化魔法のマルガレーテが人をどかしているのだ。
彼女は、人の塊を左右に分けて、最前列に出ようとしていた。
「ちょっと、どいてくださいませ!」
「おい、姉ちゃん!割り込むなよ!」
「これは列ではございませんわ!」
「・・・もしかして、グリュエール公爵令嬢?!」
「ええ、そうよ。騎士様ね。だったら、群衆を整理しなさい!」
ボン!
何だ。髪の毛がロールしている大きな猫のメスがジャンプして俺の前に立った。
腕を広げて・・俺を庇っているのか?
「皆様、このボス猫ちゃんは、学園を住処にし、12人の令嬢のご贔屓さんがおります。お食事をもらっていますわ。
更に猫ちゃんの行動半径の3キロ、その中にお魚屋さんはありませんわ。
この猫ちゃんが盗ったというのなら、証拠を出して下さいませ!」
その時、ボス猫に魚をあげた親子がやってきた。
「うわ~ん。その猫ちゃんは優しい猫ちゃんだよ!」
「そうよ。私がお魚を差し上げましたわ!」
な、何だ。大きな猫が散っていく。魔法か?
「何だ・・・」
「違ったね」
「チィ、これじゃ吟遊詩のネタになりやしない」
事実はいつだって退屈だ。
それから、数ヶ月後
☆☆☆
あの大きな猫が俺のママになった。
なんやら、今日は深刻そうだ。
なでてもらおう。そうすると大きな猫は落ち着くのだ。
「ミャン!ミャミャー!」(学園、さぼっちまえよ!)
「フフフフ、マルちゃんは慰めてくれるのね・・・そうね。本物の泥棒猫が現れたのよ。殿下はお魚、一度くわえられたお魚はいらないわ」
私はこの件で仲良くなった令嬢たち12人と共に王子と対決する。
正直に言うと不利だ。
何故なら、ない事の証明は難しいからだ。
学園の講堂に全学生が集められ、私はつるし上げにあったわ。
私の後ろにはマルちゃんのファン12人がいる。
「マルガレーテ、マリアをいじめたな!」
「ですから、しておりませんわ」
「証拠を出せ!」
「証拠を出すのはそちらではないですか?」
「マルガレーテ様、あたし、謝って頂けたらそれでいいですからぁ!」
「それに、マルガレーテは数ヶ月前、民を投げ飛ばしたと報告を受けている」
「キャア、愛すべき民を怖い~」
「マルガレーテ様は無罪の猫ちゃんを助けるためにしたのですわ!」
「え~、そんなことのために?大事な民を?」
カチンときたが、これで思い付いた。
ボン!
野蛮と封印されている身体強化魔法を使う。
「あ~ら、いくら民とはいえ。罪なき者を理由も分からずに責めるのはいけない事ですわ」
「ちょっと、ちょっと、殿下!」
「おい、マリアに触れるな。うわっ!」
殿下を突き飛ばし、マリアの首根っこを片手で掴み。軽く放り投げた。
「キャア!」
ドタン!
「・・これが証拠でございます。マリア様をいじめるとしたら、この魔法を使って、もっと、ヒドい事ができましたわ。
叱責したとか、私物を隠すとか、そんなまどろっこしいことをしませんわ!」
「そうだ。マルガレーテ様の言う通りだな」
「そうね。嫉妬と言っても婚約者のいる殿方に近づくマリア様がいけないわ」
「証拠って、告発する側がするんだよな」
段々と声が大きくなったわ。
いつだって、事実を告発する者がいる。
「「「マルガレーテ様!」」」
「フフフ、一緒にマルちゃんを愛でに行きましょう」
「「「はい!」」」
私はその後、謹慎になったが、王家から婚約解消の申し出と、慰謝料を頂いたわ。
殿下は男爵令嬢の家に引き取られたらしい。
男爵家はもうマリア様のお兄様が継いでいる。部屋住みで領地の財産管理が仕事になるそうよ。
私は・・・
「ねえ。マルちゃん。この方はマルちゃんを大事にしてくれるかしら」
マルちゃんと釣書を見ている。
「ミャアア」(何だ?)
少なくとも猫ちゃんが好きな殿方と婚約を結ぼうと検討中だわ。
最後までお読み頂き有難うございました。