表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お魚をくわえたドラ猫を追いかける悪役令嬢の話

作者: 山田 勝

 俺は最も美しい動物、猫ちゃんだ。

 ただ、歩くだけで、


「キャアアアアーーー可愛い!」

「ボス猫ね。ふてぶてしいお顔」

「マルガレーテ様!可愛ですね」


「・・・・別に、令嬢がそんなにはしゃぐものではございませんわ」

「でも、マルガレーテ様も見ていますわ」


 何か話していやがる。


「ミャン!ミャアアン」(おい、玉玉見るなよ!)


「「「キャアアアーーーー」」」

「何て言っているのかしら!」

「『お姉ちゃんたちこんにちわ』に決まっているわ」



 全く、大きな猫は騒がしくていけない。


 縄張りをパトロールしていたら、大きな猫の子供が泣いていやがる。



「エーン!エーン!お母様どこーー?」


 しょうがねえ。縄張りを守るのも俺の仕事だ。


「ミャン?」(どーした?)

「あ、猫ちゃん!」


 あ~、なでろ。なでろ。お、こいつなで方うまいな。

 お尻の方もやってもらおう。

 おお、効く~!


 とやっていたら、母親がやってきた。


「まあ、マーシー!探していたのよ!」

「お母様!ウワ~~ン」


「猫ちゃんに慰められたの」

「まあ、猫ちゃん有難う。お礼に・・・」


 母親が籠から何かを取り出した。

 お、お魚だ!やりー!


 何か知らないが、お魚をもらった。


「ウミャー!」(ありがとさん)


「猫ちゃんまたねー」


 と別れて、他でゆっくり食べるか。

 とお魚をくわえて歩いていたら、大きな猫が騒ぎ出した。


「おい、見ろよ!泥棒猫だ」

「どっかで盗んだのね」

「追いかけろ!」


 おろ。何か、大きな猫が集まって来た。

 お魚欲しいのか?

 やらねえよ。


 シュン!


 オイラは走り出した。大きな猫はうすのろだ。

 しかし、力は強い。


「「「「待て!」」」

「泥棒猫!」



 ・・・・・・・・



「まあ、何ですって?泥棒猫?どこかで浮気が発覚したのかしら!痴話げんかね。見に行かなきゃ!」


「お、何か吟遊詩のネタになりそうだ」


「何だ。何だ。大勢集まっているぞ!」

「とにかく行こう!」



「何だ。大勢集まっているぞ!何か事件かもしれない。騎士団出動だ!」

「「「はい!」」」



 ヒィ、大きな猫が大勢集まっている!


 オイラは逃げた。この体だ。ジャンプしても塀の上に届かない。抜け穴もお魚くわえた状態では難しい。


 石の道を走った。



 ・・・・・・・・・・・・



「マルガレーテ様、外が騒がしいですわ」


 ''待て~、泥棒猫!''

 ''その青色の縞模様のデッカい猫だ。魚をくわえているぞ!''


 この騒動は広がり学園の中まで怒号が届いた。

 マルガレーテはビクンと反応し。


「午後の授業は休みますわ!」

「マルガレーテ様!」


 マルガレーテは魔法を使い。


「身体強化魔法!」


 ヴュン!と風を斬り。走り出した。



 ・・・・・・・



 ついに猫は城壁まで追い詰められた。

 人々は半包囲網をとり。猫を追い詰めた。


「悪い猫だね」

「お仕置きしよう」

「そうしよう!」



 はあ、はあ、はあ、どういった事だ?

 お魚がそんなに欲しいのか?

 だが、お魚はやらない。一度くわえたら、猫はお魚を放さねえ。


 いや、半分やって勘弁してもらおうか?

 と思ったが。


 ボン!ドタ!


 ヒィ、大きな猫が飛んでいる。後ろからだ。何だ。段々近づいて来る。


 それは、身体強化魔法のマルガレーテが人をどかしているのだ。

 彼女は、人の塊を左右に分けて、最前列に出ようとしていた。


「ちょっと、どいてくださいませ!」

「おい、姉ちゃん!割り込むなよ!」

「これは列ではございませんわ!」


「・・・もしかして、グリュエール公爵令嬢?!」

「ええ、そうよ。騎士様ね。だったら、群衆を整理しなさい!」


 ボン!


 何だ。髪の毛がロールしている大きな猫のメスがジャンプして俺の前に立った。

 腕を広げて・・俺を庇っているのか?


「皆様、このボス猫ちゃんは、学園を住処にし、12人の令嬢のご贔屓さんがおります。お食事をもらっていますわ。

 更に猫ちゃんの行動半径の3キロ、その中にお魚屋さんはありませんわ。

 この猫ちゃんが盗ったというのなら、証拠を出して下さいませ!」


 その時、ボス猫に魚をあげた親子がやってきた。


「うわ~ん。その猫ちゃんは優しい猫ちゃんだよ!」

「そうよ。私がお魚を差し上げましたわ!」



 な、何だ。大きな猫が散っていく。魔法か?


「何だ・・・」

「違ったね」

「チィ、これじゃ吟遊詩のネタになりやしない」



 事実はいつだって退屈だ。


 それから、数ヶ月後



 ☆☆☆



 あの大きな猫が俺のママになった。

 なんやら、今日は深刻そうだ。

 なでてもらおう。そうすると大きな猫は落ち着くのだ。


「ミャン!ミャミャー!」(学園、さぼっちまえよ!)


「フフフフ、マルちゃんは慰めてくれるのね・・・そうね。本物の泥棒猫が現れたのよ。殿下はお魚、一度くわえられたお魚はいらないわ」




 私はこの件で仲良くなった令嬢たち12人と共に王子と対決する。

 正直に言うと不利だ。

 何故なら、ない事の証明は難しいからだ。





 学園の講堂に全学生が集められ、私はつるし上げにあったわ。

 私の後ろにはマルちゃんのファン12人がいる。



「マルガレーテ、マリアをいじめたな!」

「ですから、しておりませんわ」

「証拠を出せ!」

「証拠を出すのはそちらではないですか?」

「マルガレーテ様、あたし、謝って頂けたらそれでいいですからぁ!」


「それに、マルガレーテは数ヶ月前、民を投げ飛ばしたと報告を受けている」

「キャア、愛すべき民を怖い~」



「マルガレーテ様は無罪の猫ちゃんを助けるためにしたのですわ!」


「え~、そんなことのために?大事な民を?」


 カチンときたが、これで思い付いた。


 ボン!


 野蛮と封印されている身体強化魔法を使う。


「あ~ら、いくら民とはいえ。罪なき者を理由も分からずに責めるのはいけない事ですわ」


「ちょっと、ちょっと、殿下!」

「おい、マリアに触れるな。うわっ!」


 殿下を突き飛ばし、マリアの首根っこを片手で掴み。軽く放り投げた。


「キャア!」


 ドタン!



「・・これが証拠でございます。マリア様をいじめるとしたら、この魔法を使って、もっと、ヒドい事ができましたわ。

 叱責したとか、私物を隠すとか、そんなまどろっこしいことをしませんわ!」



「そうだ。マルガレーテ様の言う通りだな」

「そうね。嫉妬と言っても婚約者のいる殿方に近づくマリア様がいけないわ」

「証拠って、告発する側がするんだよな」



 段々と声が大きくなったわ。


 いつだって、事実を告発する者がいる。


「「「マルガレーテ様!」」」

「フフフ、一緒にマルちゃんを愛でに行きましょう」

「「「はい!」」」




 私はその後、謹慎になったが、王家から婚約解消の申し出と、慰謝料を頂いたわ。

 殿下は男爵令嬢の家に引き取られたらしい。

 男爵家はもうマリア様のお兄様が継いでいる。部屋住みで領地の財産管理が仕事になるそうよ。


 私は・・・


「ねえ。マルちゃん。この方はマルちゃんを大事にしてくれるかしら」


 マルちゃんと釣書を見ている。


「ミャアア」(何だ?)


 少なくとも猫ちゃんが好きな殿方と婚約を結ぼうと検討中だわ。




最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ