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『犬神物語』 〜転生少女と不思議な絆〜  作者: 犬神 匠
第八話 渡島編 後編
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『白と黒の贈り物』25

玲奈先輩の別荘へ、無事到着した。

わたしたち一行は、館内をひと通り案内されたあと、

広い吹き抜けリビングに集合していました。


「それでは皆さん――お待ちかねの、部屋割り発表ですわ♪」


『今回は、事前に参加人数が多い場合は相部屋となり、くじ引き制で決めます』と説明されていたので、みんな気合いじゅうぶん!


玲奈先輩が、ふんわりと微笑みながら立ち上がると、

「きたーっ!」「マジ緊張する〜」と、ざわめきが広がります。


「とはいえ、今回は人数も多いですし、相部屋もありますので……くじ引きで決めさせていただきますわ」


「き、きたっ……! ほんとにくじ引きなんですね〜〜!!」「ドキドキする〜〜っ!!」


玲奈先輩は、微笑んだまま少しだけ声を落として、やさしく続けました。


「もちろん、特別なご事情のある方には、事前に申し出ていただいておりますの。

体調のことや人間関係の不安など、安心して過ごしていただけるように、しっかり配慮しておりますわ」


一通りの説明を終えると、玲奈先輩はふわりと微笑んで、ほんの少しだけ声のトーンを和らげました。

そして――わたしたちに向けて、そっと語りかけるように続けたのです。


「ふふっ。くじ引きは偶然――でも、みなさんに“楽しい偶然”が訪れるように、少しだけ風向きを整えておきましたの」


──そう微笑んだあと、ほんの少し声をやわらげて、続ける。


「もちろん、最初は戸惑うこともあるかもしれませんけれど……。

でもほんのすこし、相手を知ろうとするだけで、世界って驚くほど変わって見えるものですのよ」


その言葉に、生徒たちの間にふっと安心の空気が広がって――いよいよ、くじ引きが始まりましたっ!


テンション上がる子もいれば、ざわざわ落ち着かない声も。

そんな中――玲奈先輩がさらりと取り出したのは、

なんと金色のリボンで飾られた、手作りのくじ箱っ!?


「ちなみに、お部屋ごとに名前が書かれたカードが入っていますの。

各部屋、3名または2名ずつの編成になりますわ」


「いざ……運命のくじ引きターイム!!」


真っ先に立ち上がったのは、亜沙美先輩。 「さぁ〜〜来いっ!運命の相部屋! 誰と一緒になるんだろ〜〜っ♪」


わたしもドキドキしながら順番を待って、いよいよ――

カードを引いてみると……


《犬神千陽・小川美咲・天野ヒカリ》


「……やったぁっ!!」

思わずその場で飛び跳ねそうになったけど――ぐっとこらえて、笑顔で控えめにガッツポーズ。

(ちー先輩と、ヒカリ先輩と同じお部屋……! わたし、運を使い果たしたかもですっ!!)


「ふふっ、よろしくね、美咲ちゃん!」

ちー先輩が笑顔でそう言ってくれて、わたしの胸がきゅんってなりましたっ。


「……一緒で、うれしい」

ヒカリ先輩も、少しだけ頬を赤く染めながら小さな声でぽつり。


(ひゃぁぁっ……な、なにこの破壊力っ! 尊さの嵐なんですけどぉぉぉ〜〜っ!?)


その後、他のみんなもぞろぞろとくじを引き――


《愛衣・天音・亜沙美》


「ふふっ、よろしくお願いしますね〜」 「おぉ〜、賑やかそうなメンバーやな。よろしゅう〜♪」 「おっけ〜、了解っ☆ あたしの部屋も絶対楽しくなるやつじゃん!しかも隣の部屋が、チハルたちか〜!やば、ワクワクしてきた〜っ♪」


《越智隆之・長谷川信也》


「……え、俺と越智?」「……ふむ、よろしく」 「ま、こういうのも悪くないか。よろしくな」


(あれっ?なんだか空気がピリピリしてます!?)


《白石先生》は、男子フロアの一番奥にある個室。

「男子の諸君、何かあったらすぐに来るように」と、穏やかに声をかけてくれました。


《杉本先生》は、女子フロアの隅の落ち着いたお部屋。

「うふふ、困ったときは、いつでもどうぞ〜」と、優しく微笑みながら荷物を運び込んでいて、なんだかそれだけで安心しちゃいますっ!


《玲奈先輩》はもちろん、おひとり様の特別室。


くじ引きの結果は、ざっくりこんな感じっ!


【相部屋】

・《犬神千陽/小川美咲/天野ヒカリ》

・《愛衣/天音/亜沙美》

・《越智隆之/長谷川信也》

・《白石先生(男フロア奥・個室)》

・《杉本先生(女フロア隅・個室)》

・《高橋玲奈(特別室)》


残りの合宿参加メンバーも、仲良し組やちょっと微妙な顔の組み合わせで、「えぇ〜ちょっとこの子か〜」「まあ、いいか」なんて声もチラホラ。


そこで、玲奈先輩がにこやかに説明を添えました。


「念のため、補足しておきますわね。

女子のお部屋は2階、テラス側の眺めの良いエリアに。

男子のお部屋は1階奥の中廊下側、落ち着いた空間に配置してございます。

もちろん、フロアごとに鍵付きですから、ご安心を♪

なお、お隣同士のお部屋でなるべく配置させていただいておりますので、気になる方はすぐに声も掛け合えるようになっておりますのよ」


その言葉に、男子組が「おお〜」「助かる〜」と少しほっとした表情。

女子組からも「よかった〜」「セキュリティ万全!」なんて声が上がっていました。


でも――それもきっと、これから始まる“夏のきらめき”の始まりっ!!


(このメンバー、この組み合わせで過ごす数日間――

ぜったい、忘れられない合宿になるっ!)


* * *


「……ここ、ですっ!!」


廊下をドキドキしながら歩いていくと、わたしたちの部屋番号が見えてきましたっ。


ちー先輩とヒカリ先輩と、三人で泊まることになったこのお部屋――ドアの前に立っただけで、もう、胸がバクバクしてきて……っ!


「えへへ、失礼しま〜すっ……!」


がちゃっ――


「「「うわぁ〜〜〜っ!!」」」


三人で声を合わせちゃうくらい、お部屋の中は想像以上に広くて、おしゃれで、ふっかふかベッドが三つも並んでて……!

おしゃれな和モダンってやつですっ!!


「なにこれっ、別荘っていうより……ホテル!? いや、もっとすごいかもっ!!」


「お布団じゃないのか〜って思ってたら、ふっかふかベッドだよっ!」

ちー先輩がそのままベッドにダイブして、ふわ〜って笑ってて……もう、可愛すぎます〜っ!!


ベッドの奥には大きな窓!

カーテンの向こうには、ばっちり海が見えるみたいで……木のフレームのベランダも、すっごいオシャレっ!!


ヒカリ先輩が静かに歩いていって、カーテンをすっと開けると――


「……このベランダ、海が見える……」


「ベランダ行ってみよっか〜っ!」

ちー先輩が駆け出して、ばーんって窓を開けると、風がふわっと吹き抜けて――


「うわぁ〜〜っ、気持ちいい〜〜っ! 海も、ばっちり見えるよ〜〜っ!」


わたしも思わず、後ろからダッシュでくっついて、目の前いっぱいに広がる海を見て、きゅんってなったのですっ!


「あとで入るっていう、大浴場の露天風呂も……この海が見えるってことですよねっ!?」

もう、今からワクワクが止まりませんっ!


ヒカリ先輩はそっと窓辺に立っていて、風を感じながら――


「……風が、夏の匂い……」

って、そっと呟いたその声が、なぜか胸にじんわり響いてきましたっ。


「ふわぁ〜〜っ、テンション爆上がりです~っ!!!」


……あれっ?

なんか、わたし……いま、すっごくすっごく、しあわせの瞬間に巡り合ったのかもしれないっ!!


きらきらした景色と、おふとんのやわらかさと、

ちー先輩たちの笑い声と――

その全部が、胸にぎゅーって詰まって……

思わず、ひとりごとがこぼれちゃって――


「このお部屋、すっごぬ最高ですねっ!!」


……あっ、噛んじゃいました。顔が熱い。


そしたら、ちー先輩がくすくす笑いながら――


「ふふっ、美咲ちゃん、かわいい〜〜っ! 噛んじゃうくらい嬉しいってことだもんねっ!」

「このお部屋、ほんとテンション上がるもんっ! わたしも、テンション限界突破中〜〜っ!!」

「……ていうか、もしわたしが犬だったら、たぶんクルクル回って、しっぽぶんぶん振ってると思う〜〜っ!」


「そ、それっ……!

わたしもっ、もし犬だったら、はしゃぎすぎて自分のしっぽ追いかけてそうです〜〜っ!!」


そんなわたしたちを見て――


「……ふふっ」

ヒカリ先輩が、ふいに微笑んで、


「あなたたちを見てると……まるで、陽だまりの中で跳ね回る子犬たちみたいね」


……えへへっ。

なんだか照れちゃうけど、ちょっとだけ誇らしい気持ちになりましたっ!


その少しあと――


ドアをこんこんとノックする音。

「失礼します。お食事をお届けに参りました」


スタッフさんが仕出し弁当を運んできた瞬間、わたし、思わず声が弾けましたっ。


「わぁぁ〜〜っ!! すごいですっ!!」


そういえば――旅館を出るとき。


『お昼は、旅館の方にお願いして、仕出し弁当を別荘まで届けてもらっておりますのよ』  


玲奈先輩がさらりと教えてくれたのを思い出しました。


お弁当!? 旅館の!?

あの時のそのひとことで、わたしのテンションぶちあがりでしたっ……!


「わぁ〜っ……めっちゃ豪華だぁ、これ……っ!」

ちー先輩が歓声をあげて、お箸を準備っ!


「……煮物も冷めてない」

ヒカリ先輩は、そっとふたを開けて、やさしく微笑んでいました。


「わたし、渡島の旅館のごはんって、初めてなんですっ……!」

その瞬間、ちょっとだけ胸がジンってして……

きれいなおかずがぎゅっと詰まったお弁当は、まるで“島のやさしさ”がつまってるお宝みたいっ!!


「いただきま〜すっ!!」


――それから、しばらく。


「えへへっ……もうひとつ、いきますっ!!」


お弁当をぺろっと食べ終えた私は、リュックの中をごそごそ。

そうです。秘密兵器・パンパンリュックの出番ですっ!!


「えへへ……フェリーで買った非常食、まだ残ってて……」


「やっぱり、まだ食べるんだね〜っ」

ちー先輩が、ほんわか笑いながら、驚くというよりも

うんうんって納得したようにうなずいてました。


「はいっ!だって、おいしいパンは別腹ですもんっ!!」

わたしは、誇らしげにコロッケパンを手に取って――

ひと口ぱくっ!


「ん〜〜〜っ! やっぱり最高っ!!」


すると、ヒカリ先輩がそっと微笑みながら、


「……ふふっ、美咲ちゃんらしいわね」


まるで“遠くから春の陽だまりを見ているような”やさしいまなざしで、わたしを見守ってくれていましたっ。


「ねえっ、おふたりとも、パンいりますかっ!?

甘いのも、しょっぱいのもありますっ!!」

と、袋ごと差し出してみたら――


「いや〜っ、さすがにお腹いっぱいだよ〜〜っ!」

ちー先輩が笑ってお腹をポンポン。


「ありがとう。でも私は、見てるだけで満たされそう」

ヒカリ先輩は、くすっと笑いながら静かにそう言って、湯のみの麦茶を一口。


「……よし、じゃあ、代表してっ!」

わたしはジャムパンに手を伸ばして――ぱくっ!


「ん〜〜っ! やっぱり美味しい〜っ!!」


お腹も心も、すっかり満たされて――

それなのに、わたしのテンションと空腹は、まだまだ落ち着く気配なしっ!


「ごちそうさまでした〜〜っ!!」

ぺこりと頭を下げて、弁当箱をまとめたら――


次に目に飛び込んできたのは、部屋の奥に並ぶ、ふっかふかのベッド!!


「ちー先輩っ! このベッド、ふかふかすぎますっ!!」


わたしは叫びながらダイブして、ふかふかベッドにうずもれちゃいましたっ!


ぽふっ!って音がするくらい反発もなくて、身体がすぅ〜って沈んでいくんですっ。

これはもう……夢の寝床ですっ!


「ふふっ、わたしも〜っ!!」


ちー先輩も、ばふーん!って隣に飛び込んできて、

ふたりで並んで、うつぶせになってベッドに沈んで……うっとり。


「もう、ここから動きたくないよぉ〜〜っ」

「このままベッドに吸われて、わたし、マシュマロになる気がします〜っ……」


はしゃぎすぎてたテンションと、お腹いっぱ〜いに食べたごはんの反動が――ふとした瞬間に、どっと押し寄せてきて……っ!


わたしたちはそのまま、顔を横に向けて並んでごろん。


「……あ、なんか……急に眠くなってきたかも……」

ちー先輩が、あくびまじりにぽつり。


「わたしもです……。まだ部活まで時間ありますし……

ちょっとだけ……お昼寝タイム……」


「えへへ……なんか、もうちょっと、くっついてもいい……?」


一瞬で、心臓が――ばくんっ!て、跳ねましたっ。


「う、うんっ!! もちろんっ! はいっ、こうですかっ!? もっと、ぎゅ〜って!!」


わたし、テンションを隠せないまま、

もう反射的にちー先輩にくっついてましたっ!!!


「……うん、ぴったり〜っ」


ちー先輩がそう言って、そっとわたしの背中を包んでくれたとき――わたし、心の中で**きゃぁぁ〜っ!!**///って叫んでましたっ!!


もう、近いっ!やばいっ!幸せすぎて、顔が……にやけちゃうっ……!!

それに――


(ちー先輩の、吐息が……すぐ耳元に……ひゃぁあ……っ!!)


鼓膜が溶けそうなほど、あったかくて、やさしくて……

わたしの全神経が“ちー先輩”だけを感じてて――

心臓が……もう……だめです……っ!!


(ちー先輩、あったかい……すき……ずるい……好きっ……!!)


ふたりでぎゅ〜ってくっついたまま、ぬくもりとふかふかに全身がとろけていく――

もう、これ……しあわせの極みっ……!!


「ふわぁぁ……ちー先輩……やっぱりあったかいです……」

「美咲ちゃんも〜……くっついてると、ねむねむが止まらない〜……」


もう、ぬくもりが胸の奥までじんわり染みこんできて、

心の奥まで、ぽかぽかしてきて――


ふたりの呼吸が、ぴったりと重なって……

まるで、同じ夢の入り口を見つけたみたいに。


「……おやすみ、です……」

「……うん。おやすみ〜〜……」


そっと閉じたまぶたの向こうで、わたしの世界がふかふかのやさしさにとろけていく――


……しあわせな午後の、まどろみの中へ。


……


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