『白と黒の贈り物』14
外に出た瞬間、
ジリジリと照りつける日差しと、蝉の大合唱が出迎えてくれた。まさに、夏っ!って感じで、空もまっ青!
すでに何人かのクラスメイトが集まりはじめてて、
リュックを背負ったみんなが、
「帽子忘れた!」「どこ置いたっけ!」って
わちゃわちゃしてる。
入り口近くでは、ヒカリが帽子をそっと押さえながら、静かに空を見上げていた。
それを見かけた私は、ぱたぱたっと駆け寄って、
隣にちょこんと並ぶようにしゃがみこみ、
リュックをトンっと足元に置いた――
……と思ったら、うっかりファスナーが全開で、
「あわわっ!」ってあたふたしながら、あわててキュッと締め直す。
それから、ちょっとよろけながらリュックを背負い直して、最後に、ぴょんっ!って小さくジャンプで整える!
ふふっ、これも旅の醍醐味ってことで〜っ!
「よ〜しっ、今度こそ……本当に準備オッケーっ!」
(……えへへ、なんか、遠足みたいでワクワクする〜っ!)
ヒカリは、リボン付きの帽子をしっかり結び直して、
なんだか少し緊張してるみたい。
「今日のメインは……カレー作り、か〜っ」
「あれ? ヒカリって……料理、得意だったっけ?」
ヒカリは一瞬だけ目を伏せて、それからふっと笑った。
「……ううん、実はちょっと苦手。でも、がんばってみるね」
「じゃあさ、私と一緒にがんばろっ!!」
私がグッと拳を握ると、ヒカリもおんなじように小さく頷いて―― 「んっ、がんばる」と一言。
ふたりの間に、ぽかぽかした笑顔がふわっと広がった。
なんだろう。
ヒカリ、ちょっぴり照れてるのに、
なんだかすごく、うれしそうだった。
料理はあんまり得意じゃないって言ってたけど――
それでも、こうして、みんなと一緒に作るのが
きっと楽しいんだろうなって思った。
ふたりの間に流れる空気も、
ほんのりあったかくて、くすぐったかった。
「よーしっ、みんな出発〜っ!」
先生の声が響いた瞬間、
生徒たちがわらわらと動き出す。
それぞれリュックを背負い直して、
帽子をキュッとかぶって、
わいわいしながら最後の準備を整えていく。
私も、虫よけスプレーを全身にシュッシュして、
リュックをトンっと背負い直す。
その勢いで、私たちはわくわくしながら
山の体験施設へと歩き出した――!
***
旅館を出て、しばらく森の中を歩いたころ――
空はもう、真っ青どころかまぶしすぎて、
森の蝉たちは朝よりもいっそう元気に鳴いていた。
暑さもぐんぐん増してきたけど、それ以上に――
これからのことを考えると、ちょっぴりテンションも
上がっちゃうっ♪
途中の山道は、ちょっと登っただけでも足がじんじんしたけど、森の中はひんやりしてて、葉っぱがこすれる音とか、木漏れ日とか――
なんだか、絵本の中に迷い込んだみたいだった。
「着いたぁ〜〜〜っ!」
先生の「はい、到着〜」の声と同時に見えてきたのは、
ログハウスみたいな、木でできたあったかい雰囲気の
小屋!
「うわっ、ここ……なにこれ、めっちゃ良い匂いするっ!」
天井からぶらさがった風鈴が、ちりん、と揺れて――
中に入ると、木の香りと、ほのかにハーブみたいな香りがふわって広がってた。
***
「ではでは〜、早速みなさんっ!
ここでは自由に自然体験ができますよ〜♪
押し花やクラフト、木の実を使ったアクセサリーなんかも、思い思いに楽しんでくださいね〜」
先生のそのひと言で――
「やるやる〜っ!」「え、葉っぱとか使うの?たのしそ〜!」って、クラス中が一気に盛り上がった!
私も、天音ちゃんや同じ部屋のクラスメイトの子たちと一緒に、木の小屋の中へわらわら〜っと入っていって、
それぞれに材料を手に取りながら、どれにしよっかな〜って顔を見合わせた。
「わっ、この葉っぱ、ハート型だ〜!」
「え、見てこの木の実、色がグラデーションになってる!」
「この羽根、ストラップにしたら絶対かわいい〜〜っ!」
「これ、妹が好きそう……持って帰ってあげよっかな」
「見てこれ、なんか俺、家族で来たときのキャンプ思い出した」
「僕もなんか……こういうの、ずっと忘れてたかも」
そんな声があちこちから聞こえてきて、
小屋の中はちょっぴり“森の宝探し”状態に。
女子の「かわいい〜!」と、男子の「すげぇ〜!」が入り混じって、あったかくてにぎやかな空気がふわっと広がっていく。
そんな賑わいの中で――
ヒカリは、ひとり静かに、真剣なまなざしでひまわりの押し花を選んでいた。
私は、小さな木の実や、風で落ちた羽根を組み合わせて、ストラップ作りに挑戦っ!
(これ、さとしへのお土産にしよっかな……
あの子、こういうの意外と喜ぶんだよね♪)
ふと隣を見ると――
天音ちゃんが「よっしゃ、ネックレスつくるで〜!」
って、細かいビーズと小枝を組み合わせていて、
クラスメイトの子も「私、ヘアゴムにする〜っ」って、押し花と紐をせっせとくくりつけてる。
亜沙美「ねえ見てこれ!葉っぱのうらに模様がある〜!これ押し花にしたらかわいくない!?」
愛衣「ふふっ……この木の実、森の風が『どうぞ〜』って渡してくれたみたいで……なんだか、あったかいです〜♪」
みんなの笑顔が小屋いっぱいに広がって、ちょっとした森のクラフトパーティーになってた♪
生徒たちが押し花やストラップで盛り上がっているそのすみっこで――ひとり、黙々と木の板を削っている男子がいた。
「……隆之くん? なにしてんの〜?」
「ま、ちょっと」
そう言って手を止めた彼の前にあったのは、
枝や葉っぱ、小石に麻紐、そして何やら金属っぽいパーツまで混ざった……まるで工作現場。
そこからほんの20分後――
「……なっ、なんだあれはっ!?!?」
先生の叫び声とともに、見物の輪が広がっていく。
完成していたのは――
超精密・可動式ミニチュアログハウスセット(照明ギミックつき)!!
木の枝を使った本格的な梁構造に、
手作りの瓦風屋根。
ドアは開閉式、煙突からはドライアイスで本当に煙がもくもく、さらには小石で作ったテラスには、手のひらサイズの焚き火オブジェがチラチラ光ってるLED…!
という本気すぎる完成度。
「ちょっ……これ、電気通してる!?」
「ねえ!この煙どうなってるの!?」
「これ、体験の範囲超えてるよっ!!」
先生も思わず駆け寄って、手をぶるぶる振りながら
「ちょ!? 材料どこから持ってきたの!? 君、クラフト体験でジオラマ作る子、初めて見たよ!?!?」
と半笑いで大混乱。
隆之はといえば、みんなの熱視線の中、
ちょっと首をかしげて――
「んー……まだ本体だけですけど?
あと庭と外灯と……できれば露天風呂つけたかったんだけどな……時間足りなかったですね」
……ほんとに、どこ目指してるの……!?
先生が目をまんまるにしたまま、
しばらく言葉を失ってたけど――
ようやく口を開いたと思ったら、
「……あのね越智隆之くん。工芸部、入らない?
今すぐ!」
まさかのスカウト勧誘、即日発生!!
「え、今? ここで?」
「うん!今すぐ!いや、むしろ君のために
部を作ってもいいくらい!」
隆之はちょっと照れながら、
「すみません、俺……科学部なんで」って、
しっかりお断り。
「おお〜、なんかその返しもクール〜〜っ!!」
天音ちゃんが目をキラキラさせてて、
私は「隆之、すっごすぎ……!これ、絶対売れるやつだよ〜っ!」って感動気味。
亜沙美「てか!煙って何!?マジ天才じゃんっ」
愛衣「ふふっ……とっても心がこもっていて、あったかいですね〜♪」
ヒカリ「……思いが詰まってて、すてきな作品ね」
その作品を囲んで、私たちは思わず顔を見合わせた。
すごいね、って。あったかいね、って。
心の奥で、同じ気持ちがふわりと重なった気がした。
気づけば、隆之の机のまわりには人だかりができてて、まるで即席のミニ作品展みたいでっ!
笑って、驚いて、みんなでわいわい――
森の小屋の中は、まるでちっちゃな文化祭みたいな空気に包まれてて、とてもドラマチックな展開になっていた。
……でも、その盛り上がりの中でふと気づく。
夏の陽ざしが、さっきよりちょっぴり傾いていて――
空気に、次の時間の気配が混じってくる。
そろそろ、次の活動に向かう時間、かな。
***
「そろそろ、カレー作りに移動しまーす!」
先生の声で、木の小屋をあとにした私たち。再び外に出ると、空がひとまわり広くなった気がして、なんだか“夏休みの本番”が始まるような、そんな予感がした。
チハル班、メンバーは6人! 私、ヒカリ、天音ちゃん、愛衣ちゃん、亜沙美、そして隆之!
そして今回、なんとなんと…!
私が――カレー作りの班長を任されちゃいましたぁ!
(わわっ、ちゃんとまとめられるかなっ!?)
ちょっぴりドキドキしたけど、でも――
ここは元気に、みんなを引っぱっていかなきゃ!
わいわいと声を掛け合いながら、
私たちはカレー作りに取りかかった!
旅館の人たちの協力で届けられた食材たちは、
まだ土の匂いがほんのり残った新鮮な野菜と、
しっかりクーラーボックスで冷やされたお肉。
「よっしゃ、まずは野菜、洗ってこよ〜!」
亜沙美が元気よく声をあげて、
みんなでじゃぶじゃぶ水道へ直行!
にんじんも、じゃがいもも、玉ねぎも、
ひとつひとつ手にとって、ごしごし優しく洗っていく。
「ふへぇ〜っ、水、ひんやりして気持ちいい〜!」
天音ちゃんがうれしそうに、
水しぶきをぴしゃぴしゃ弾ませながら、
「ちょっとだけ水遊び気分やな〜♪」って笑った。
その隣では、愛衣ちゃんが、
レタスやトマトをそっと手にしながら――
「今日もピカピカになろうね〜……♪」
って、ふわっと野菜たちに話しかけている。
(ふふっ、みんなそれぞれ楽しそうっ)
冷たい水がきらきら光って、
夏の日差しの中に、ふわっと心地いい風が吹いたみたいだった。
よーし、材料もピカピカになったし――
班ごとに役割分担スタートっ!
「よーし、わたしはジャガイモ係だーっ!」
「亜沙美、ニンジンお願いっ!」
「天音ちゃん、ごはん担当お願い〜っ!」
「隆之、火おこし頼んだよっ!」
「ヒカリは……玉ねぎ係ねっ!」
「愛衣ちゃんは……サラダ係でっ♪」
「はいは〜い♪
今日はレタスさんと仲良くなりま〜すっ」
愛衣ちゃんは、涼しげな木陰のテーブルに向かって、
にこにこしながら野菜たちに声をかけてた。
「うんうん、今日もツヤツヤでおいしそうだね〜……
がんばろうね〜」
その頃、火おこしエリアでは、隆之が理論的に炭を組み立てていた。 「空気の流れを作れば自然に火がつくから。ここに新聞紙を少し……」
パチッ……と音がして、あっという間に火がついた! 「うわ、すごっ!? 隆之、なんか……科学感ある!」 「……科学感?」
一方、ごはん担当の天音ちゃんは羽釜を見つめていた。
「よし、火加減は任せてや! うち、炊飯器より羽釜派やねん」
「さすが天音ちゃんっ!」
さて問題は――ヒカリ! 彼女の前には、玉ねぎと包丁。 でもその手は、ガチガチに緊張して動かない。
「ヒカリっ、大丈夫……?」
「……まず、どこから切るの……?」
「えーと、それ……まな板、裏返しになってるよ〜〜っ!」
ツルツルの裏面で切ろうとして、
玉ねぎがころころ逃げていく。
ヒカリは慌てて玉ねぎを押さえながら、
ぺた、ぺた……って、
まるで赤ちゃんをあやすみたいに、玉ねぎをそっと撫ではじめた。
そして、小さな声で――
「……だいじょうぶ、だいじょうぶ……」
って、玉ねぎに話しかけてる!?
(えぇぇぇっ、な、なにこの癒し空間っ!!)
私は、思わず胸の奥がほわっとあったかくなって、
がんばるヒカリを全力で応援したくなった。
そんな私の隣で、天音ちゃんもくすっと笑って――
「うち、なんか……プレゼント包んでるんか思たわ〜(笑)」
って、ふわっと優しくツッコんだ。
「むっ。……でも、ちゃんと最後までやってみたい」
その言葉に、みんなの空気がふわっと変わった。
「じゃあ、私が隣で見てるから!」
「うんうん、わたしは鍋見てるね〜♪」
「トマト切るの手伝うよっ!」
みんなが、そっと手を差し伸べた。 ヒカリは、ぎこちないけど一生懸命で―― その姿が、なんだかすっごく眩しく見えた。
「わぁっ!? ヒカリ、玉ねぎ上手に切れてるよ!」
「……あっ、ほんとだ」
私が声を上げると、天音ちゃんも亜沙美も、
「いい感じいい感じ〜!」
「うんうん、その調子っ!」
って、あったかくフォローしてくれた。
ヒカリは、ちょっとだけ眉をきゅっと寄せながら、
ぎこちない手つきで――でも一生懸命、
玉ねぎに包丁を入れていく。
コトン、コトン、コトン……
小さな音が、静かに積み重なっていった。
でも、そのうち――
「……んっ」
ヒカリの目が、じわっと潤んできた。
玉ねぎの刺激が強かったみたいで、
頬をつたう涙を、ヒカリは指の背でそっとぬぐった。
それでも、手は止めない。
ぎこちなくても、涙をぬぐいながら、
ヒカリはまっすぐ、玉ねぎと向き合っていた。
(……ヒカリ、がんばってる……!)
私は思わず、胸の奥がぽかぽかして、
ふわっと笑みがこぼれた。
(よ〜し、私もがんばろっ!)
そう思って、私は手にしていた
ジャガイモに向き直った。
みんなもそれぞれ、自分の担当をがんばってる。
なんだか、班全体がふわっとひとつになったみたいで、嬉しかった。
鍋の中は、まだ空っぽ。
でも、火の準備もこれからって感じで――
これから始まる“おいしい時間”に、ちょっと胸が高鳴ってる。
愛衣ちゃんは、順調にサラダを仕上げながら、 「おいしくな〜れ〜♪」 って言葉の魔法を唱えていた。
「愛衣ちゃん、それ完全に魔法やな(笑)」
亜沙美は、にんじんをトントンとリズムよく切りながら、途中でちょっと包丁を使って、
形をくいっと整えた。
「見て〜っ!ハート型っぽくしてみた〜♪」
って、にこにこ笑いながら私に見せてくれる。
ちゃんと形も崩さず、無駄にもなってなくて――
愛情たっぷりって感じがして、思わずほわっとしちゃった。
(こういう工夫って、料理をもっと楽しくしてくれるんだなぁ〜っ)
(……あ。思い出した。
去年の春、入学したてのころ――)
(わたし、亜沙美に“にんじんハートの切り方”を教えたんだっけ)
(「ハートは“気持ち”で切るんだよ〜っ!」って……うわぁ〜、今思い出すとちょっと恥ずかしい〜〜っ!)
でも、こうして笑いながらハートに整えてる亜沙美を見てると、胸の奥が、ぽっとあったかくなった。
(うんっ、ちゃんと届いてたんだ……)
思わず、ほわっと笑みがこぼれた。
そのあとも、亜沙美は真剣な顔で、にんじんをひとつひとつ丁寧に仕上げていく。
私はとなりで、切り終わったハートを受け取って、お皿にそっと並べていった。
亜沙美が切ってくれたハート型にんじんを並べ終えた私は、空っぽの鍋を見つめながら、
(よ〜し、いよいよ出番っ♪)って、心の中で
ぐっと気合いを入れた。
「チハル、準備ばっちりやな〜。次は炒める番やで〜」
天音ちゃんが、にこっと笑って声をかけてくれる。
「うんっ、ここからは私の出番っ! お肉も野菜も、ぜ〜んぶおいしく炒めちゃうからねっ♪」
みんなで野菜を切り終えたら、
今度は大鍋の前に集まって、作戦会議!
「まず、お肉から炒めるんだよね!」
「野菜はあとから投入ね〜っ!」
私がフライパンにお肉を広げて、
ジューッていい音がした瞬間――
「うわぁ、いい匂いっ!」ってみんなが
わらわら集まってきた。
お肉が色づいてきたら、
「よ〜し、野菜たち、いらっしゃ〜いっ♪」
私がそう言うと、みんなが次々に具材を
運んできてくれた!
「玉ねぎ、投入するね」
ヒカリがそっと鍋の中へ。ふわっと香りが広がっていく。
「にんじん部隊、いっきま〜す♪」
亜沙美ちゃんが、ハート型のにんじんをぱらぱらっと。
「ラストは、じゃがいもや〜!まかせとき〜っ」
天音ちゃんが笑いながら、ざざっと入れてくれて――
私はその流れに合わせて、大きな木べらでぐるぐるっ!
炒めながら、いい感じに火が通っていくのを確認する。
「交代しよか〜、任せて!」
天音ちゃんが声をかけてくれて、私はにっこりバトンタッチ!
「じゃあ次は、わたし……」
ヒカリが静かに受け取って、丁寧に木べらを動かしてくれる。
そんなふうに、みんなで順番に炒めていく感じが、
なんだかすごく楽しくて――
(ふふっ、なんか、これだけで楽しいっ!
これぞ、青春ごはん……だねっ♪)
野菜たちが、ちょっと透明になってきたら、
水をたっぷり注いで、ぐつぐつタイム突入!
愛衣ちゃんは、その間、
サラダの最後の仕上げに取りかかっていた。
ちいさな手で、ふわふわっとレタスを重ねたり、
色とりどりのトマトを、そっとやさしく並べたり。
仕上げに、きらきらしたドレッシングを
くるくるとまわしかけて――
「……うふふっ、やさしい味になりますように〜♪」
愛衣ちゃんがほわっと微笑みながら、
サラダをふんわり盛りつけていく。
その仕草があんまりにも丁寧で、
見とれていた私は――
(……なにこれ、天使かも……っ!)
気づけば、胸の奥がじんわりあたたかくなってて、
思わず、心の中で叫んじゃってた。
(……でもでも、今はお料理タイムだもんねっ!)
火加減を調節しながら、
みんなで交代で鍋を見守って――
ルウを割り入れるころには、
もう辺り中、カレーのいい匂いでいっぱい!
(よ〜し、あとちょっとだ〜っ!)
焦げないように、ぐるぐる混ぜ続けて――
「完成〜〜〜〜っ!!」
スパイスの香りが、山の風にふわぁって溶けていく。
私たちは、炊きたてのごはんをお皿によそって、
できたてのカレーをたっぷり――とろ〜り!
「はい、これ持ってって〜!」
「よし、あっちのテーブル空いてるよ〜っ!」
声を掛け合いながら、木のテーブルへお皿を並べていく。
目の前には、青空と木々に囲まれた緑の広場。
風がやさしく吹き抜けて、鳥の声が遠くに響いてる。
木のテーブルの上にずらりと並べられた、
みんなで一生懸命作った手作りカレーは、
それだけで胸がぽかぽかするくらい、特別に思えた。
湯気の向こうに、みんなの笑顔や、がんばった時間が
ふわっと浮かんで見えるみたいで――
(絶対、今まででいちばん、おいしいカレーになるっ!)
みんなで木のテーブルの椅子に腰掛けて、
並べられたカレーとサラダを見つめながら、両手を合わせた。
「「「「いただきま〜すっ!!」」」」
木漏れ日の中で交わされた、元気なひと言。
それだけで、なんだか胸がぽかぽかする――そんな気がした。
(絶対、今まででいちばん、おいしいカレーになるっ!)
そして――その一口目。
「んっっっまーーーーいっ!!!!」
私、犬だったら絶対しっぽ振って喜んでるやつだぁっ!
スプーンを持ったまま、感動で体がふるふる〜ってしそうになる!
天音ちゃんが、羽釜で炊いてくれたごはんも
ふっくらしてて、もっちもち!
愛衣ちゃんが作ってくれたサラダも、
シャキシャキで、やさしい味が広がった。
「お肉、ほろっほろで最高〜〜っ!」
「うち、玉ねぎの甘みで泣きそうや〜っ!」
「ジャガイモがホクホク〜!優しい味っ!」
「炊きたてごはん、もっちもちでカレーにぴったり〜!」
「サラダ、ドレッシング手作り!?すごっ!」
ヒカリはというと、ひとくちゆっくり口に運んで、
目を細めて、ふわっと微笑んだ。
「……おいしい。きっと気持ちがこもってるから、
かな。あたたかくて、ほっとする味」
その言葉が、私の胸の奥にじんわりしみてきて……
(ヒカリに、そう言ってもらえてよかった……っ)
亜沙美も「ハート型にんじん、ちゃんと見えるっ!かわいすぎる〜〜っ!」って、テンションMAX♪
そして――
「この甘さ、玉ねぎの糖化による旨味成分の変化だな。肉とのバランスも良好。水分量も適正だ」
隆之の“論理的すぎる”食レポに、みんな思わず
ぷっと吹き出しちゃう。
笑って、笑って、また笑って。
木漏れ日の下、風に揺れる緑に囲まれて――
私たちの“山の上のカレーパーティー”は、
笑顔と「おいしい!」でいっぱいになった。
ひと皿のカレーに、ぎゅっと詰まってたのは――
みんなで作って、みんなで味わった、
ひと夏の、忘れられない思い出。
おなかも、こころも、ぽっかぽか――
そんな、しあわせの味だった。




